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2-14:謎の魔法少女?現る!

月が光を放ち、島の海岸線を照らし出していた。

島は周囲を二つの潮流に挟まれ、それ故に波の流れは早く複雑で、又海底も擂鉢状になっており常に海は厳しい表情を島に暮らす人々に向けている。

その白く泡立つ波が、岸壁に打ち付けられて跳ね返されていく。波など何する者でもない、そう言いたげな島の岸壁、しかし勝敗は長い年月によって海に、そして波に軍配があがり、それ故に岸壁は下から徐々に削られ、堅牢な断崖へと姿を変えている。

ただ、今その月明かりに照らし出された岸壁は、今まで見せていた情景と明らかに違いを見せていた。

抉られ、登攀を拒むかのように上に行くほどに迫り出した壁を、無数の何かがまるで色を塗りつぶすかのような勢いで登って行く。登攀に成功せず壁の途中で海へと叩きつけられる物も多数、またこの時ばかりはと波も岸壁に協力するかのように打ち付け、その登攀を妨害する。しかしそれすら一顧だにせず次第にその何かはじわじわと、じわじわと岸壁の上段へと広がり、その頂上へと到達しようとしていた。


岸壁を侵食する何かの到来を、島に住む人族達は誰一人気が付いていない。

島に生息する限られた動物や昆虫たちは、ある生き物は地面の下に、又は樹の上に、それも出来ない生き物は岩や石、倒木など可能な限り身を隠し音一つ立てることなく身を小さくして隠れ潜んだ。

そして、音一つない静寂が島の中へと広がっていく。


ついにその何かが岸壁の上へと姿を現した。

月明かりに浮かび上がるその姿は、明らかに異形としか言いようがない。

本当に生きているのか、どこが頭でどこが胴体なのか、呼吸をしているようには見えない。

手足どころか姿全てが薄茶色をしており、頭部と思しき部分にある顔は、目も、口も、すべてが皺のようにしか見えず、また稼働するのかすら疑わしい。

手足と思われる場所には、爪なのか、刺なのか、5本鋭利な突起があり、これを引掛け、突き刺し、壁を登ってきたようだ。

先頭にいたその生物が、ついに崖の上へと登り切った時も、表情には何の感情も見る事は出来なかった。


月明かりが照らし出す中、一旦静止していたその生物は後ろから押されるようにして前進を始めた。

するとその時、その生き物達を照らし出す月明かりが遮られる。

そして、まだ幼い子供の声が周囲の静寂を破り響き渡った。


「あ~~、うん、どっかで見覚えあるかなぁ、でも、実際見るとグロいよね~誰よこんなの生み出したのは!ってわたしか!」


その生き物の目の前に、いつの間に現れたのか凡そ12歳前後と思われる少女が、両手でハンマーを振りかぶり今まさに振り下ろさんとしていた。


「せいの、どっか~~ん!」


ブシュッ!


振り下ろされたハンマーによってその何かは叩き潰され、周囲へと体液を撒き散らす。

ただ、その体液からは予想以上に甘く、食欲をそそる香りが立ち昇った。


「うわ!これって林檎?え?もしかしてこれ林檎味だったり?うわ、どうしよう、甘味だ!」


その香りは、その少女を混乱へと叩き込んだ。

少女の背後にいつの間にか生えていた少女に似た人形の様な植物が、わさわさと葉を揺らし少女へと何かを訴えかけている。しかし、それよりも今少女の頭の中には甘い林檎の味が、実際よりも数段誇張されて再現されていた。

ただ単調に這いあがってくる林檎モドキ?を叩き潰していく。その回数が増えれば増えるほどに甘い香りは周辺により濃く広がっていく。

広がれば広がるほどに少女の心を掻き乱し、甘味への強い欲求を掻き立てていった。


「・・・・お、恐ろしい攻撃です!あの不気味さが無ければとっくに負けていたのは私だったかも・・・」


単純作業と化したハンマー叩きを行いながら、顔から滴るのは汗よりも涎というまさに誰に見せる事も出来ない孤独な戦い。魔法少女は自分の正体を決して知られてはならない、その掟の重さを痛感していた。


「でも、雑草さん?魔法少女という割に、魔法なんて全然使ってなくない?なんっていうか物理少女のような気がするんだけど?」


背後にいる存在に対し、意識を向けながらも単純作業は続く。

何100回とハンマーを叩きつけた時、叩きつけた場所の手ごたえに違和感を感じる。そして、その数瞬後に足元でズズズという鈍い振動と共に足元自体が崩れ始めていく。


「うきゃ~~~~!」


崖部分の崩壊に巻き込まれそうになり、慌てて後方へと飛び下がろうとするが、足元に力を込めるもその足元が崩れて行く為思う様に跳躍の為の力が蓄えられない。


「うわ!うわ!やばい!ちょ!危ないって!」


まるで腰が抜けたかの様に転倒し、必死に足を跳ねるように小さく後方へとずり下がって、何とか崖の崩落部分より脱出を果たした少女は、恐々と崖の下へと視線を向けた。


「あぶな!ちょっと予定にないよ?死ぬところだったよ!?やっぱり魔法少女は魔法を覚えないとだよ!」


新たな決意をした自称魔法少女だった。

武器を、ある意味お約束のバールのような物にしようとして、何とか自制しました!(ぇ

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