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2-6:イツキついに大地に立つ

むふふふふ、ついに、ついにお庭へと出る事が出来るのです!

3歳の誕生日を過ぎても、中々お許しを貰えずに窓辺からお庭を見ていたあの辛い日々。

そして今、ようやくお庭に出るお許しが貰えたのです。


季節も漸く初夏に差しかかり、気温が日に日に温かくなり始めているから、外に出ても風邪などひかないだろうとの判断らしいです。でも、私って窓辺で日向ぼっこしてるだけでも元気になるんですよね。

不思議とお日様の下でヌクヌクしてるだけでも、なんとなくお部屋の空気が澄んでいく気もします?

やはり私が癒し系美幼女だからでしょうか?


それはともかく、つい先程新たなる人生の偉大なる第一歩を踏み出したのです!


目の前に開かれる扉を抜け、いざ行かん光り輝くあの扉の先に!


「ぬふふふふ~~ふぎゃ!」


「きゃ~~~イツキちゃん!大丈夫?!」


扉の外との段差が思いの外大きかったのです!

大きく踏み出した右足は、予想に反して何も踏みしめることなく、そのまま私の体はどってんころりん、幸いにして顔面からいくことはなかったのですけど、体を捻って逆に仰向けに転倒、お尻から落っこちたから勢いは減ってたけど後頭部をごっつんこです。


「ふ、ふぇぇ~~~」


「ほら、痛いの痛いの飛んでいけ~~」


お母様に抱き上げられ、私はがっしりお母様に抱きつきます。経験則から知っているのです、お母様に撫でられると痛みは軽減されるのです。


「ぅぅぅ」


「イツキちゃん、お外はまだ危ない危ないだからお家の中に戻りましょうね?」


「!!!」


私をそのまま抱き上げて、家の中へと入ろうとするお母様から、慌てたように降りました。

このままお家に入ってしまっては何の意味も無いのです!待ち望んだお外なのですよ!


「や!お庭みるの!あまいあまい探すの!」


そうです。まずはお庭で甘味対策をするのです、最悪でもかつての子供達と連絡をとって送らせるのです!

子供達は、偉大なる、敬愛する、私の命令には絶対服従するはずなのです!


「ちょっと、イツキちゃん!」


何やら言ってるお母さんは放置です!とにかくお庭に出て・・・・あれれ?


「おかあちゃま?お庭がないのよ?」


そうなのです、家の扉を出たら即未舗装の道です。花壇などの植物はおろか樹木すらもありません。

ただの荒野の様な所に家がポツン、ポツンと建っています。そして、その向こうに広がるのは海ですね。


これはきっと家の裏にお庭が有るのでしょう。

場合によっては畑とかもあるかな?そんな事を考えながら、トテトテと家の裏へと回って・・・あれれ?

家の裏には地面しかありませんよ?せめてお花くらい埋めませんか?季節的にも初夏に向かうんですよ?

これは何事が起きているのでしょう?


「おかあちゃま、お花が無いのよ?花壇が無いのよ?」


頭の中は疑問符でいっぱいです。普通こんなに寒々とした村なんかないのです。

村の中で目に映る緑がまったくありません。出来たばかりの村かと思えば、建っている家は明らかに年季を感じさせるのです。


「あのね、海の傍だとあんまりお花さんは育たないの」


「うむ、それに手近にある食べられる草なんかは皆で食っちまうからな」


「ふぇ?育てないの?みんな食べちゃったらないないですよ?」


私の言葉に大人達はバツの悪そうな顔で視線を逸らせます。

解っていても食べてしまったのでしょうか?


「森もないないなのです?」


「いや、森はあるぞ?島の中央に森と畑が有る。村の水なんかは森にある泉から汲んでるしな」


なんと!森が有るならまだまだ希望はあるのです。そうですよね、畑がなくてはお芋も麦もできないのですから。


「畑と森に行きたいのです!」


木がなければ私の野望も始まらないのです!今の私では一から木の実は作れないのです!


「植物の種も欲しいのです!」


握りこぶしを掲げて私はお母さん達にそう主張します!わたしの未来の為には重要なのです!

優先順位は最速なのです!


「イツキ、貴方では歩いて1時間以上掛かりますから今度お父様に頼みましょうね」


うにゅ、お父様は今日は漁に出ていていないのです。

でも、私の気持ちは焦っているのです!


「う~~、今日は駄目?」


「そうね、今日は何の準備もしてないからね、さぁ今日はお家の周りをお散歩するだけにしましょう」


お母さんがそう言いながら手を差し伸べます。

むぅぅ、涙目上目使いでお母様に・・・あれ?いつの間にかお手ての中に何か持ってます?


「およよ?あれ、種ですか?」


なんでしょう知らない種をいつのまにか握りしめてますね。


「おかあちゃま、この種さんをお庭に埋めてもよいですか?」


これはきっと幸せを呼ぶ種なのです。

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