1-103:いつのまにか99年目の秋ですよ
日々、カップル参拝者にちょっとしたアクシデント?ハプニング?を演出している樹です。
目指せ縁切りの神様なのです!
目を瞑ってカップルがお祈りしている時に、ちょっとあれな匂いをほんのり分泌させたりするのです。
え?うそ?この人こんな時に?ってこっそり相手を幻滅した眼差しで見る姿を眺めていると、すっごく楽しくなるのです。
その他にも、果物の王様と呼ばれる木の実をカップルが来たときに落とすのです。
実際には食べた事がないので、味も、匂いも想像でしかないのですが、木の実を大事に持ち帰るカップルに思わずニタニタ笑いが浮かんできちゃいます。
もちろん若いカップルが来たときにしかそんな対応はしないのですよ?
小さな子供を連れた夫婦が来たときや、老夫婦が一年の幸せを願う時には香しい薫りを送るのです。
ほら、御線香の薫りとか、心が落ち着いて良いですよね?
森も、動物達も、エルフっ子や鬼っ子達も、ここ最近は穏やかに暮らしているようなのです。
その御蔭でわたしも特にこれといった出来事も無く、マッタリとした日々を過ごしてます。
あのお祭りは、なぜか恒例となったようで毎年春と秋に行われています。
そして、目の前では今年のお祭りが今まさに開催されようとしているのです。
春も秋も若干内容が違うような気がしますけど、一緒に楽しめないわたしには関係が無い事なのです。
今年もまたボ~~~っと見ているしかないのでしょう。
いいのです、いいのですよ~!
それよりも、そんな事よりも!なんと!なんと!最近わたしは更に進化したのです。
これはきっと、わたしへの信仰の力なのでしょう。
ついに枝や幹?体?を少し揺らす事が出来るようになったのです!
最初は気のせいかと思っちゃいました。
何気なく、本当に何気なく、後ろを見ようとしたのです。
普段は視界がくるんっと反転するだけだったのですが、その時は視界の反転と合わせて、一番大ぶりの枝がガサガサと揺れ、その時になんか腕を動かしたような、体を捻ったような不思議な感覚が走り抜けたのです。
それからは毎日暇を見ては、その感覚を思い出しながら枝や幹を動かす日々です。
枝を、そしてその先には根っこを動かし、新たな世界をこの目で見るのです!あ、目はまだ無いですけど。
スキップだって出来るようになってみせるのです!
そんな事を思いながら?願いながら?お祭りに集まって来る人達を眺めて、ちょっと枝を揺らして木の実を飛ばして遊んだりしていました。
まぁ、今もって特に不自由なく生活しているのです・・・っが!結局未だに人化はは出来ていないのですよね~、体を動かせるようになったら次こそは人化なのです。
それに加えて、何と言ってもきちんとしたお食事です!お祭りの屋台制覇です!
せっかく生きているのに食事を楽しめないのだって、大きな問題なのに未だ解決されていないのです。
そんなこんなもきっと少しずつ改善していくのです。
エルフっ子達に更に枝に実った木の実を落してあげながら、取り留めも無くそんな事を考えていると、走り回っている子供達へと視線が自然と向かいました。
それにしても、エルフっ子は育ちませんね。
鬼っ子達がとっくに世代交代しているのに、エルフっ子達は未だに子供のままですね。さすが長命種族です?
エルフの姿をしている人は、わたしが把握している人数だと20名もいませんから、ある意味レアなそんざいなのでしょうか?
その分、角付さん達は、一本角、二本角、捻じれた角、長い角、短い角、種類はいっぱいありますね。
でも、長い角って邪魔じゃないのでしょうか?
家に入ろうとして入り口に引掛けたり、寝る時も俯せでは眠れないでしょうし、う~ん、短い角の方が生きやすそうですね。
あ、ふとイメージが沸いちゃいました。
ほら、ローリング垂れ角のお嬢様なんてどうでしょうか?
もちろん釣り目の、悪役令嬢希望です。
きっとドキドキワクワクの学園物語になりますよ?
え?角付同士では虐めは起きないですか?
え?感情がお互い何となく伝わるですか?
・・・・それってどうなんでしょう?恋愛のドキドキが無いじゃないですか!
わたしの事どう思ってるんだろう?
あ、あの人きっとわたしに気が有るわ!
なんていった事が起こりえないのですよね?
う~~、ないわぁ~~それって人生の大半を損してませんか?
とにもかくにも?次第にお祭りに集まる人が増えていきます。
屋台に取り付けられた提灯が、夕暮れとともに明かりを灯し始めます。
それにしても、なぜこれ程に”和”なのでしょうか?
他の地域のお祭りは、未だに洋風のお祭りが多いのですが、ここはず~~っと和ですねぇ。
嫌いじゃないのですが、何って言うか、う~~ん。
お祭りが始まったのか、笛や太鼓の音が響き渡ります。
う~~、やっぱり和ですねぇ。
それでも、お祭りの音楽に合わせて、枝も、幹も、自然にゆらゆらと動いちゃいます。
これぞお祭りマジックなのですか?
そんな時、ズルッっと足元?で何かが動いた気がしました。
およ?
あれ?今足元っていうか根っこが動いた?
わたしは、そっと根っこの一本を動かしてみる。
ズズズズズズ
おおお~~~動く!なんと!念願のスキップが可能に!
次はこっちを・・・おおお~~こっちも動くよ!
正に小躍りしそうな勢いですよ!
喜び勇んじゃいますよ?!
思わず、お祭りの音楽に合わせてモゾモゾと動き始めちゃいます。
ん?なんか周りでみんなも大喜びしてくれてるのでしょうか?
きゃ~~きゃ~~騒いで走り回ってますね。