1-101:83年目の冬です
木枯らしがピュ~ピュ~吹いている冬が来ました。
先日のお祭り騒ぎから、今一つテンションが上がらない樹です。
樹さんの心の中もピュ~ピュ~と木枯らしが吹いているのです。寒いのです。
あの祭りはすっごく盛況だったようで、その後の勢いで更に社は大きくなり、傍らにも幾つかの建物が建てられたのです。
よく解らないのですが、副神殿と呼ぶのでしょうか?あと宿泊所?それと食堂?何と呼べばいいのかよく解らないのですが、その建物の中の一つにエルフっ子達が住み込みで暮らしています。
その為、あれ以降わたしの周りの掃除などを毎日してくれて、ついでになぜか作られた御賽銭箱から御賽銭の回収もしています。ついでに、なんかお守りっぽいものも販売しています。
でも、村の中で通貨のやり取りを見た記憶がないのですが、あのお金の使い道なんかあるのでしょうか?
それにしても、わたしの中で予想以上に先日のお祭りが跡を曳いています。
お祭りのときの、あの周りに溢れる熱狂と、それに入る事も、その空気を共有する事も出来ない自分。
ただ、じっと眺めている事しか出来ない、誰かと会話する事も、ふざけ合う事も無く、みんなの笑顔を眺めるだけ。
それがこんなにもダメージになるとは、わたしも長い間生きてきて、思いもよらなかったです。
前世では、それこそお祭りに行った記憶など欠片もないですし。
何とか自分の気持ちを切り替えようとしたのですが、なにせ動く事が出来ませんし。
歌う事も、ましてや大きな声で泣く事も出来ません。なにせ、樹ですからね。
それ故に、これ程までに引き摺っているのだと、解ってはいるのです。
子供達の見る景色へと視点を変え、以前のようにネットサーフィン?を繰り返しても、何もやる気が起きないのです。で、こんな時はもう、寝るしかないかなっと思うのですが、なぜか目が冴えてしまうのです。そして、ふと油断すると、あの祭りの光景が目の前に浮かんでくるのです。
むぅぅ~~~これは、これは拙いのです。どんどん思考がネガティブになっていっちゃうのですよ?
湖で、水浴びをしている男の人達を覗いていても、今一つ気分が盛り上がらないのです?
今の精神状態が、いかに重症なのかと解る出来事ですよね?
以前は思いっきりドキドキワクワクしていたのに、人は刺激に慣れてしまう物なのですね。
なんと悲しい事なのでしょう。きっと人は、より強い刺激を求めてしまう罪深い生き物なのでしょう。
あ、でもあの人は、んん~~ちょっと好みです。ちょっと記憶フォルダーに保存しておきましょうか。
おや?・・・・あの男の子も・・・ほうほう・・・・ふふふふふふ、これも保存ですね。
え~~っと、何の話でしたっけ?
あ、そうそう、そんな、鬱屈した日々を過ごしているわたしを、子供達が心配しているような気配をここ最近いつも感じます。
ほら、今もエルフっ子が身振り手振りで何かを伝えようとしています。
指先を合わせて遠くを見る仕草ですか?今度は筒を作って覗き込んでます?
大きく両手でバツを作って・・・最後は手を縛られているつもりでしょうか?
ん~~~何を伝えたいのでしょうか?
ともかく、みんながこんなに心配してくれているのです。とっても贅沢な事なのです。
それは解っているのです。十分、十二分に解って入るのです!
でも、でも、・・・・・く~~~~悔しいじゃないですか!
カップルが目の前でいちゃいちゃしてたんですよ!
腕を組んで、お祭りの間中いちゃいちゃしやがるのですよ!
ケッ!っですよケッ!
こちとら前世含めて100年以上、清純一直線の、清い乙女なのですよ!
さかってるんじゃないぞこの~~~なのです!
お祭りは神聖なんですよ!いちゃつく場所でも、合コンの場所でもないのですよ!
ましてや、わたしの目の前で、幸せです、彼と出会えてよかったですぅ?なんて、いけしゃあしゃあと宣のですよ?こっちは未だにロンリー街道まっしぐらなのに!
う~~~~~!う、羨ましいに決まっているじゃないですか!
わたしだって彼氏が欲しいのですよ!
ほら、これも美味しいのよ?あ~~~ん、なんてやってみたいのです!
待った?え、ううん、今来た所よ?っとか、手が何気に触れて、キャッっとか!
とにかく、とにかく!青春したいのです!
ドキドキしたいのです!わたしだって恋に恋する乙女なのです!
なのに、なのに、目の前でこっちに見せつける連中がいっぱいなのです!
く、くやしくて、くやしくて、思いっきり視線が逸らせないのです!
あうぅ、わたしは何時までこのままなのでしょう?
そろそろ擬人化しても良いと思いませんか?
わたしいい子にしてましたよね?
こんなに、みんなを笑顔にしてるのです。善行しまくっているのですよ?
善行ポイント稼ぎまくってると思うのです。
それなのに、それなのに、何か最近この社がデートスポットにすらなってませんか?
やたらとカップルがお参りしていくのです。
くう~~~、カップルは別れるのです!
リア充ども、爆発するのです~~~!
・・・・子供達の心配する気配を感じます。子供達は優しいですね、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ?わたしはカップルなどには負けないのです!
世界を(わたしにとって)住みやすい環境にしてみせるのです!
そうです、目指せ・・・・・・え~~~っと、こんな時は何を目指せばいいのでしょう?
・・・・縁切りの神様ででしょうか?




