1-97:83年目の春です
は~~るの~~うら~~ら~~の~~
殺伐とした冬が終わり、仄かに優しさが混じった春の訪れを感じている樹です。
え?殺伐としたってなんだですか?
そこはそれ、別に不満爆発、駄々を捏ねて角付人族さん達に無理を言ったりしてませんよ?
森全体に香しいはずの香りを出させて立ち入り禁止にしよう、引き籠ろうとした事なんかありませんよ?
みなさん何を言っているのでしょう?
・・・・きっと、寒い冬の冬眠中で悪い夢でも見たのですね。
なんですか?周りから何か視線をいっぱい感じますが、気にしませんよ?
わたしは今、幸せを甘受しているのです!
なぜなら!今わたしの後ろ?前?え~~~っと、とにかく横ではまだ土台しか出来ていませんが、神殿が作られることになったのです!
ふふふ、皆さんようやくわたしの偉大さを実感したのです。
お忘れかもしれませんけど、この森なんかわたしが一から作ったのです!
最初は何にもない荒れ地だったのですよ!
それが、たった80年くらいでこれ程豊かな森へと変貌したのです。
うわ~~~改めて思うのですが、わたしってすごくないですか?
最初に来た動物さん達なんか、ガリガリで痩せこけていましたものです。
それが、今やふっくら裕福さんですね。流石に、メタボさんはいませんけど。
そういえば、肉食の方達と草食の方達、どうやって生活しているのでしょう?
わたしの見えない場所で、血で血を洗う生存競争が起きているのでしょうか?
あ、話がズレました。
神殿ですよ、神殿!きっと荘厳でキラキラした素晴らしい神殿が出来るのです!
なんせ、御利益がばっちりどんと来いなのです!
木の実が年中食べ放題なのですよ?しかも、木の実を食べたら怪我や病気も快復なのです!
これで信者が増えないわけがないのです!
やたらと他人様に要求ばっかりして、ぜんぜん御利益感じられないそこらの宗教とは格が違うのです!
”角付だけに!”
うん、ちょっと強調してしまいました。我ながら上手い事いいましたよね?ね?
え?座布団はやれぬですか?なぜ座布団?
ともかくですね、角付じゃない方達は、多少姿が変わるかもですけど、それを補って余りある御利益なのです。
更には、エルフっ子が巫女さんに決定なのです。萌えっ子来たこれなのですよ?
これだけでもう集客数が段違いなのです!
萌えは世界を征服するのですから。
もっとも司祭には、なぜか狼さんのボスさんが名乗り出たのですけど・・・と、とにかく今は保留中なのです。え~~と、萌えとモフモフは確かに最強っぽいのですが・・・・・なぜかでしょうか?ちょっと血腥い宗教になっちゃいそうな気がしませんか?
先日のあの祭壇も、きっと狼さん達の影響だと思いますし。
とにもかくにも土台建築がはじまっているのです。
動物さん達の作ったオブジェのせいで、なぜか土台が歪な形をしている気がするのですが・・・このまま建物を建てるのでしょうか?
あのオブジェをそのまま内包する気なのでしょうか?
え~~っと、その、なんと言いますか・・・腐るよね?
あと、作られる土台を真似して子供達が何か付け足してるんですが、もちろん気が付いてますよね?
何と言いますか、働いている方達を見ていても、俺達ですごい神殿を作るんだ!樹様の為に頑張るぞ!っていう気概?気合?がまったく感じられないのです。
まぁお仕事なのでしょうから、淡々と作業されている姿をみて安心感は感じられるのです。
でもですね、その、何と言いますか・・・普通図面とか見ませんか?
何となく、本当に何となくなんですけど、ま、ここら辺でいいか!みたいな雰囲気を感じているのはわたしだけなのでしょうか?
今回の作業では、森の木の伐採も併せて行っているのですよ?もちろん、間伐の意味合いもあるので、子供達も了承の伐採ではあるのですが、それにしても貴重な木材なのです。
それをいい加減な作業で駄目にされたとしたら?流石に温厚なわたしでも許しませんからね?
別にみすぼらしい神殿だったら許さないぞっていう訳ではないのですからね?
とにもかくにも、神殿の完成が待ち遠しい樹です。




