1-1:転生
なんとなく思いついた物語です。
コルトの森シリーズがこの話のせいで更新無くなったと言われない様にどっちも頑張ります。
こちらは比較的短く1話2000文字くらいで更新していく予定です。
突然ですが、わたしは転生者です。
前世の記憶が突然蘇ったのは今から1年ほど前、生前は何処にでもいる普通の30代OLでした。
一応ごく普通の大学を卒業し、20数社の会社を回ってなんとか社員20名ほどの中小企業へと就職が出来ました。お給料はあまり多くなく、でも就活の苦しさをもう経験したくないので何とか頑張って仕事を覚え、漸く安定した生活を送れるようになってきていたんです。
そんな中、実にありきたりな事なんですけど会社帰りにスーパーで買い出しをして、横断歩道を青信号(ここ大事です!)で渡っている最中に車のヘッドライトに照らし出されました。
えっ?って思ったら、そのすぐ後にドンっと鈍い音、体に走る激痛、フワッっとした浮遊感のあと一切の意識が無くなったんです。
恐らく車に引かれて、あの時に死んでしまったんだと思います。
そして、一年程前に突然前世の意識が戻ったんですよね。
最初に意識が戻った時は慌てました。手も、足もまったく動かないので病院かと思って周りを見渡せばただただ広い地面と空が有るだけでした。
え?え?ここはどこ?って混乱する私の視線は、空に浮かぶ二つの月を見て思考が止まります。
そして、足元で音がして、視線を下に向ければ角の生えた兎の様な生き物がいます。
ま、まさか・・・転生?それとも転移?とにかくここは異世界であるって直感的に気が付いたのです!
だてに学生時代からライトノベルを読み漁っていた訳ではありません。これは、わたしが勇者?賢者?もしかして内政改革や無双してっと夢が広がります。
そして、漸く自分が何に生まれ変わったのかが気になりました。
先程から記憶が突然蘇っても精神的に動揺する事無く、微動だにしない体。視界の高さから言えば生前とそれほど変わらない身長だと思います。ただ、体はうんともすんとも動かすことができません。ただ、視界はある意味360度?動きますから。
・・・あれれ?何か変だよ?
周りに鏡なんかない為、自分の姿は解りませんけど、私から出ている幾つかの物?は視界に入ります。
生前たくさんのライトノベルやネット小説を読んで来ました。それこそ、モンスターや昆虫になった主人公もいました。でも・・・でも・・・ただの一本の樹に生まれ変わった主人公なんて聞いたことが無いです!
神様!何かわたしそんなに悪い事したでしょうか?!
あの時の気持ちがぶり返してきて思いっきり叫びたいのですけど、心の中では叫んでるんですけど、樹には口が無いので何にも音は出ません。微風に揺られて奏でる葉や枝の音がするだけです。
うん、やめよう、これ以上考えても落ち込むだけです。葉の艶が悪くなってしまいます。
あれから一年、わたしは自分が何なのか、何が出来るのかを追及してきました。ただ漫然と過ぎ去る日を過ごしていた訳ではありません。
まずお決まりのステータス、何とこのステータスが!・・・・・見れませんでした。
色々叫んでみました。もちろん心の中でですが。ただ、音声がいるのか、そもそもそんな物が無いのか、結局見ることが出来なかったので私が何なのか今でも解りません。
と、とにかく辛気臭い話をしていてもしょうがないですし、転生してしまったんですから生きていくしかないですしっと気持ちを切り替えてこの一年を過ごしてきました。
まず簡単にこの一年を説明しますと意識をもった時は春でした。
春、お日様が温かくてそわそわしてると新芽がでて葉っぱがいっぱい生い茂って行きました。
夏、お日様が気持ちよくてそわそわして、初夏には小さなお花が咲きました。
秋、お日様が心地よくてむずむずしてると小さな赤い実がいっぱい生りました。
冬、お日様は優しいのですけど、葉っぱはみんな落ちちゃって、寒々とぶるぶるしてると樹の表面に厚いモコモコした皮ができました。
そして巡り巡って又もや春、お日様と気温も温かくなってきたのでモコモコした皮が剥がれはじめて又新芽が出始めています。
この間、わたしが意識して何かをしたのはモコモコ皮作りくらい?寒いなって思ったら何か体の表面に何かが集まる感じがして、そしたらモコモコした皮が出来始めたんです。
それ以外はただお日様にあたってぬくぬくしてただけ、そして気が付いたんです!これって究極の異世界スローライフなのでは!
夜も、お昼も、眠り放題!雨が降ってもわたしにはシャワーのようにしか感じられないし、空気もきれいなので雨も汚くない!葉っぱに黒い跡なんかつかないです!
うん、若干周辺が荒野のようで、地面剥き出しの為もの寂しい気がするけどそれはおいおい考えましょう。
とにかく異世界まったりスローライフの開始です!
っと意気込んでみたのですが、う~ん、お日様がポカポカです。お昼寝しましょうか。
え?駄目ですか?でも、お昼寝くらいしかやる事がないんですが?