恋バナ
入学してから何週間か経った。
学校生活も少しずつ慣れ始めて来たのが原因かクラスは最初と比べ会話数が増えてきたことが分かる。
しかしながら俺はというと友達がまだ少なく、社交的ではないのが損したのかクラスにもあまり馴染めずにいた。
そして今日もなにひとつ変わらない一日が始まる。
「あ、おはよう蓮」
「おはよう十五夜」
この一見どこにでもいそうな男の名前は長月 十五夜、高校になって一番最初にできた友達がこの十五夜だった。
友達になったきっかけは高校生活が始まって最初に出された宿題を出さなかったのが俺と十五夜の2人だけでその日の放課後、先生にさっそく説教をくらい、一時間ほど生徒指導室に立たされたからだ。
その中で俺と十五夜が愚痴を言ってるのが見つかってさらに怒られることになったのだが、まぁそこはもういいだろう。その日以来俺は十五夜とずっと絡んでる。
ガラガラガラ……
先生が入ってきてみんな席につく そしてチャイムがなるのを待つわけだが 。
たったったったっ ガラガラガラ…
先生のあとにいつもある女子が息を切らせながら慌てて教室に入る。
「葉月、お前はいつもギリギリで入ってくるのどうにかならんのか」
先生は呆れた顔で彼女にそう言う。
「あ、先生おはようございます。はい、頑張りたいと思っています」
「思うんじゃなくて、やれ」
威勢だけはいい彼女に先生は呆れた感じにそう言うとクラスは笑いに包まれた。
キーンコーンカーンコーン
朝のチャイムがなり朝礼が始まる、またいつもと変わらない学校が始まった。
***
午前の授業をのりきり昼休みとなった。
早速俺と十五夜は昼食をとるためいつものベストポジションである屋上へと向かう。
「今日の弁当ショボいわー」
野菜がぎっしり入った弁当を見ながら十五夜はそう言った。
それに対して俺はたしかにこの弁当では午後からの授業は乗り越えられないだろうと思いながらただ苦笑いを返す。
「ところで蓮はさー、クラスの中で一番可愛い女子は誰だと思う?」
ブハァァッッ ゲホッゲホッ
いきなりの十五夜の質問に俺はびっくりして飲んでいたお茶を口から吐き出してしまった。
「な、なんだよ急に俺別に女子とか興味ねーし」
「ふーん、でもこういうのがタイプとかならあるだろ?言ってみろよ俺がそれにあう女子教えてやるからさ」
十五夜って意外とこういう話好きなんだな、てか教えるってそれほど女子の情報把握していることなのか?それじゃあ今俺の前にいる男は女子が大好きな変態野郎ではないのか? と疑問を持ちながらも十五夜の質問に答えようとしばし考える。
「うーん、髪型は短いのがいいかなーあとは面白くて元気な人」
あまり人に自分のタイプをいう機会がなかったから知らなっかたけど結構恥ずかしいなこれ。
「おぉーそれなら葉月 凛なんてどうだ?あの人ほどショートヘアが似合う人はいないし面白くて元気だし顔もなかなかだ」
くっ……俺が気になっていた女子をこうもすぐ当てるとは、しかしあの条件なら誰が検索してもきっと結果は同じだろう。
「あぁ、俺もその子は結構気になってたんだよな」
「さっき興味ないとか言ってたくせに……」
やめてください、そんなジト目で見ないでください。顔から火が出そうでやばいから見ないでください。
「う、うるさいあれはその冗談というか、なんというか、そうだ別に葉月のことが好きだから気になってるとかじゃないからな」
「はいはい」
ニコニコしながら十五夜は「もういいよ」みたいな目で俺を見てくる、穴があったら入りたい気分だ。なんなら埋まってしまってもいい。
俺は入学式以来ずっと葉月 凛のことが気になっていて授業中や休み時間など自然と目で追うようになっていた。
それは好きという感情から来ている行動なのか俺にはわからなかったが十五夜にずばり当てられて動揺してしまったということは好意を抱いている証拠なのだろう。
「まぁなんかあったら俺にいつでも相談しろよ」
「え?う、うんありがとう」
これ以上はなにも聞かないんだな普通の人ならしつこいほど聞いてくるのに、ここらへんの気遣いが他のやつらと違っていい奴だと思う。
「そういや、俺今日家帰ったらLINEでこのクラス全員呼んでグループ作るからさ蓮も入れよ」
「まだ入学して一ヶ月もしてないのに十五夜はもうクラス全員のID知ってんのかよ」
俺なんてまだ十五夜のしか持ってないのに、なんか知らんが危機感を感じてきたぞ。
「あぁ女子のは全部聞いた、あとは何人かの男子だけだな」
なんで女子のは全部知ってるんだ?やはりこいつは変態なのか? ということは葉月のIDも知っているのか? こんな疑問を頭に浮かべたが俺が返したのは安定の苦笑いだ。
まだ長月 十五夜という男の本当の姿がわからない……
あっという間に時間が過ぎ放課後になった。
終礼の挨拶が終わると俺は「帰宅部対抗誰が一番早く校門を抜けるかレース」に勝つべくいそいで帰った。とは言ってもそんなゲームはない、ただ俺が自分で作って楽しんでるだけだ。
しかし各クラス終礼の時間は異なるため一位通過なんてごくまれだろう、というかまだしたことがない。
今日もダメだったか……
そうつぶやきながら俺は家に帰った。
家に帰りつき自分の部屋へと行きベットに倒れこみながら携帯を見ると
LINE「グループへの招待がきております」
と書かれたメッセージが届いた。
とりあえずグループへの参加を許可する。
「今日も疲れたな」
そうつぶやくと少しの間睡眠をとるべく目を閉じるのだった。