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Lost memory  作者: ぴかちゅう
第一章
1/15

プロローグ

 暗中俺はある音声を耳にした。

 それは何度も何度も繰り返し流れるが激しいノイズのおかげでとても聞き取れやしない。

 またこの夢か。

 未だ深い眠りについているというのに俺はここ最近頻繁に見るようになったそれを夢だと理解していた。

 だが、音声を聞き取るのはやはり無理がありそうだ。

 明るくなってきたな、今回もダメだったか。

 起床の時刻が迫っているのを何となく感じたその刹那。

 「もう会えな……るかもし……けどまた会……といいね、バ……イ……バ……イ」

 聞こえた。多少ノイズが混じっていたものの確かにそう聞こえた。

 そして思い出した。あの少女を、固く閉ざされていた幼少の記憶を。


 ***



 寒い冬は受験と共に過ぎ去り俺、水無月(みなづき) (れん)はここ皐ケ丘(さつきがおか)高校に合格。晴れて高校生となった。

 そして今日は高校説明会ということで体育館に集まっているわけだが。

 長い……。

 先程からここに来て受け渡されたしおりを校長先生が一文字ずつ丁寧に丁寧に読んでるのだがいつ読み終わるわけ。

 机と椅子が用意されていたから少しは耐えられるもののまだ30ページも残っているので気が遠くなりそうだ。

 いつもの俺なら秒で寝ているところだが隣にはふむふむと相槌をうっている母が座っているため出来る訳もなく、完全に手持ち無沙汰な俺はしおりの内容を見ることにした。

 それにしてもすごい金額が書かれているもんだな。どれくらいすごいかというと。

 一、十、百、千、万、十万デデーン! とか、果たして結果は!?ジャカジャン。10万円!お見事ー!なんて表現できちゃうくらいすごい。

 高校生がこんな大金を手に持つということはまずないだろう。

 故にここは親が何とかするページだ俺が読む必要はあるまい。

 次のページをめくるとそこには校則について書かれていた。

 不用物の持ち込み禁止や髪の長さなどいかにもという校則ばかりだったが中には遅刻を10回以上すれば保護者を呼び出し、注意をするなどといった半分脅しのようなものもあった。遅刻なんて早々するもんじゃないしこれに引っかかることはないだろう。

 毎月行われるテストの点が30点以下だった場合欠点となり保護者呼び出し……これは注意しないとな。

 他のページには3年間の方針や学校内部の説明、部活動などが書かれていてそれを見てるうちにいつのまにか校長先生の長ったらしい話は終わり、解散状態となっていた。

 しかし、この後教科書販売があるため帰る人はおらず。今後の進路について話し合う親子の姿が多く見られる。が、俺の家庭ではそれがないらしい。

 それどころか母は俺の隣から姿を消しているではないか。その行方を知るべく目で探していると、見知らぬおばさんと話をしている母の姿を発見した。

 恐らく友達かなにかで偶然出会ったんだろう、そのおばさんの隣には俺と一緒の高校に通うことになるであろう制服を着た女子が座っている。

 後ろからしか見えないが肩に付くか付かないかくらいの茶色がかったショートヘアーはよく似合っていた、きっと顔も整っているのだろう。

 と、早くも青春オーラを出していた俺は不意に浴びせられた言葉に我に返る。

 「蓮、なにニヤニヤしてるんだ」

 それは母の声だった。

 「べ……別に、それよりも誰と話してたの」

 それを聞き母は少し悪意を感じさせる笑みを浮かべた。

 「あぁ高校の時先輩だった葉月さんだよ、偶然にもあんたは娘さんと同じ高校に通うみたいね、それにしても結構可愛かったよ」

 先輩か。案の定予想は当たっていたようだが、最後のセリフには悪意しか感じない。

 可愛かった……。

 その言葉を嬉しく思いながら俺の高校生活は始まるのであった。





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