お世話になった人たち一組目登場
今回はタイトル通りです
「・・・ん?ここは」
目に直接進入する明るい光に目を細めた。この部屋の作り、特殊な魔術加工、そしてありふれた魔術加工された武装器―――魔具。間違いない、俺が借りているギルドの部屋だ。
真っ黒と白がかった緑色の二重構造のカーテンを開き窓を開けた。西の窓から太陽は見えない。黄昏に染まっていない。つまり―――
「朝か・・・」
窓を閉めて、物思いにふける。
どうやら、十時間以上(強制的に)寝ていたらしい。普通の冒険者から見れば、ここで生きてることがすごいのだが。
冬華の唱えた魔法『スタンブレイク』は体内に特殊な電気を流し込み中で勢いよく弾けさせる至近距離用の上級魔法だ。
だから流し込まれたとたんに電流が体中を駆け巡り、直後脳天を貫かれたような痛みを感じるのである。
体の内部構造を主に攻撃するので、今はあまり動きたくないし、魔法だぜヒャッハーもしたくないし、握力も半分以下まで下がっている。
なぜそんな恐ろしい必殺の威力を持った攻撃をされたのが謎だが。
「まあ、気にしても無駄か」
きゅるるるる―――
腹が鳴った。それを聞くと急に胃の辺りに虚無感を感じる。隙間たっぷりの空っぽ。腹が減った。
そりゃそうだ。昨日はあのまま(強制的に)寝たから、昼食から何も口にしてないな、と思い出し立ち上がった。
今日は何を食うか?それとも台所借りて何か作るか?
ここはそれなりにいい部屋だ。床や壁、天井にひびは入ってないし、隙間もない。
樫で出来た扉を勢いよく開けた。
擬音語で表すならドンッである。
「よう、目が覚めふごっ!」
硬いドアに何かがぶつかった。ちなみにこのドアは外開きなのである。
ドアに激突された翔は無残に吹っ飛ばされ、ピクピクと瀕死のバッタのように脚をピクピクさせていた。
「・・・何やってんだ、お前?」
「お前がやったんだろうが、ボケェ!」
手を使わずに身体をうまく操って起き上がり、真っ赤になった鼻を押さえながら大声を出した。
ボケとは心外である。撤回してもらいたいところである。それよりもこの時間じゃ、近所迷惑にならないだろうか。
まあ結局のところ、俺が不意打ちの実行犯ようになっているので文句も何も言えないんだが。
涙が滲んだ目で翔は俺を一睨みして、いつもの表情に戻す。
「腹は減ったかい?」
「ああ、かなり。俺の胃の中のブラックホールがこの世界の絶品グルメを呼んでいる」
「そうかそこまで空腹だとすると・・・。町外れの山盛りランチの店しかないな」
「今はLUNCHじゃなくてMORNINGだけどな・・・」
「営業時間は十一時だけど、俺たちならランチセットくらい出してくれるっしょ」
「うわー、酷いまでの自分勝手だわー」
町外れの店はこの異世界に来て、一番多く寄っている場所だろう。なにせ、クエストから帰ったときはいつも寄っているからだ。
安い、速い、そして美味い。三拍子そろっていて、しかも主人は裏に関わる情報提供者。無論金がかかるが。
そもそもこの店はエルフのマリアさんとレナに紹介された店で、もしも二人と知り合っていなかったらこの経済面に優れた財布に優しい主婦の味方のようなここの常連にはなっていなかっただろう。町外れで裏通りで薄暗く夜には何かが出そうなところで経営できているのだろうか。不思議である。
というかそれよりも気になることがある。
「昨日の依頼・・・結局どうした?」
「保留だね。期限はまだあったからさ。今日、日向がOKなら行くけどってことになった」
「今は正直、動きたくねぇけど。朝食を食えば調子も変わるだろ。食ったらいくか」
「了解」
☆
「ごめん」
俺がギルドの部屋から出てギルマスとの話を終えて外に出てみると、冬華と遭遇しいきなり頭を下げてきた。
殺人級の威力を持った魔法を使ったことに、罪悪感を感じているのか・・・。
というか俺じゃなきゃこういう風に謝れなかっただろうからな。
「いいって」
さすがの俺でも無事じゃすまないって理解してたし。死ぬ覚悟で魔法食らったしね。
・・・精霊さんから聞いたけど、ものすごく体内壊したらしいね。五臓六腑の内、半分近く再生させたって言ってたぞ。というかよく生きてたな、俺。マジ、ゾッとするわ。
「・・・よかった。もしかしたら許してもらえないかもしれないって思って」
「許して?それはこっちが心配してたぞ。魔法使うってことはよほど怒ってたんだろうし」
「・・・そうだけど、私の培ったモットー『復讐したら相手を許す』を自分で破るわけにはいけないし」
凄いモットーだ。
それよりも一体、この異世界で何を培ってこのモットーを考えたのが気になる。
「俺の友達だからな。謝ったら許すべきだろ」
「・・・そうなんだ。・・・・・・はぁ、いつになっても友達という立場から変わらないんだ」
「ん、なんか言ったか?」
「・・・なんでもない」
何かボソボソと呟いたと思うんだけどな。友達とか、立場とか。
まあ、言ってないって冬華が言ってならおそらく言ってないんだろう。気にするだけ時間を潰すだけだろう。
けれど、冬華が不機嫌そうにしているのは俺の気のせいだろうか。
「さて、もう話はついたかな?」
「問題ない。今話がついたところだ」
「・・・OK」
「じゃあ、行こうか」
ずいぶんと翔の機嫌がいい。あの店の店主にあえるからだろうか。
俺でも理解できなかったのが先頭を進む二人の「・・・駄目だった」というのと「あいつはいろんな意味で不可能攻略キャラだな。これが乙女ゲーだったら苦情が来るぞ」という会話だった。
☆
中央都市『フェリア』の街の中はいくらかの地区に分かれていた。すなわち
王族区。
貴族区。
ギルド区。
民主区。
大まかにこの四つだ。
王族区はフェリアを統治している国王や王妃、そして後継者の孫娘たちが住んでいる地区である。
基本的に進入だけで重罪に値する。許可がなければ理由があっても罪であることには変わらない。無許可では入れるのは、ここで働く執事メイドそして国王が直々に選んだ護衛専門のSランク冒険者だけだ。
ここで働く冒険者は死ぬまで金に困ることは無い。命の危険があることには変わりないが。
『双盾の鉄壁要塞』や『冷徹なる双刃剣鬼』、『紅蓮の魔法帝』など名の知れすぎた冒険者ばかりがこの職についているようだ。
貴族地区は伝統ある由緒正しき貴族達の住んでいる地区だ。
そもそも貴族というのは何かというのだが、至って簡単。強力な魔法使いを何代にも渡って輩出しているかどうかだ。
元は平民で、強力な魔法使いを輩出したことにより貴族に上がった家族のことを成金貴族と呼んだりする。しかし、成金貴族とは口さがない貴族が言うだけで、実際はそういう風に言うではないのだが。
最近は利潤を失った没落貴族が増えているのが現実だ。王族すら下手に手の出せない、賢者アルビオンの末裔であるエルライン家を除けば、貴族というだけで食っていける時代は終わっていくだろう。
ギルド区はその名の通り、『フェリア』のギルドとそのために必要な土地を表している。
剣士、戦士、魔法使い、魔術士、呪術士、精霊使い、錬金術師。あらゆるタイプの冒険者がいるので泊まるための宿舎は大量に必要なのである。
ちなみに剣や槍、斧などの武器や、皮や金属で出来た鎧や篭手、ヘルムなどの防具品を作る工場や取り扱い販売する店はギルド区に入っている。
民主区は王族でも貴族でも冒険者でもない人―――ようするに、町人や商人などが住む地区である。
国の名産から国外のもの、食料や飲料、宿から娼館まで何でもそろっている。そう自負できる町並みだ。ゆえに常に人ごみになっていて、騒がしい。
俺たちはその民主区のはずれ―――民主区は国のはずれなので、正確には国のはずれ―――に来ていた。
冒険者がここに来るのは決しておかしくない。ギルドでも朝昼晩とご飯は欠かさず出るが有料である。しかも高い。だから自分で足を運んででも、こういうところまで遠出をする冒険者もいる。
目指しているのはレンガ造りで二階立ての建物。そして建物の陰に隠れていて、年中無休で薄暗い。なんかが出そうで迫力があり、見ごたえがあるが横が狭いが奥行きがある、そんな店。
宿場と酒場に挟まれた道を進んでいくと、細い道に出る。道幅は急激に小さくなっており、俺と翔が並んで通れるくらい。体の大きい戦士級の肉体となってくると一列で並ぶことになる狭さだ。
ここまで来るともう今まで聞こえてきた喧騒や怒声、喧嘩を煽る声は聞こえず、シーンとなっている。
ここまで来るともう今まで視界に入ってきたネコミミや鱗の体、圧倒的巨体、尖り耳など多種族の特徴的な体の各部は目に付かない。それよりも人がいない。
そんな辺鄙な所を歩いていると目的の店が見えてきた。
そこは縦に線の入った木製のドアで、そこには止まれの赤い標識のような逆三角の看板が紐で吊るされていた。
脇には左右に一個ずつのランプがある。魔石で光る特殊なランプだ。地球で言う長EVOLTAのように長持ちなので超普及しているものだ。
「・・・ここなの?」
「ああ、残念な外見だがここなんだ」
俺は大きなドアのノブを掴むと、ふとあることに気づいた。
―――中の電気が・・・点いている?
店主の消し忘れだろうか?まあいいか。
押すことで開くドアを恐る恐る開けた。今朝のことが頭に残っていて、強く開けられない。
中に入ると俺は一言。
「邪魔するぜ」
☆
「らっしゃい!・・・おお、久しぶりだなぁ~。二日ぶりの来店か。寂しかったぜ」
「二日ぶりは久しぶりじゃないだろ!ってか普通営業時間より速く来たら怒るよな普通!」
コック服を着た店主のマルコフの声を聞いてテンションの上がる俺。
さっそく疑問になっていたことを聞いてみた。
「なあ、店主。なんで今の時間帯に電気が?」
「そりゃ、あれを見りゃ分かるさ」
とマルコフは一歩横に動いた。奥のほうには人がいるみたいだ。
二人でどちらも女性。そして金髪。
・・・どちらも妙に見覚えがある顔だな。
「って、マリアさんにレナじゃねぇか!」
「・・・ん?ああ、あの時の少年じゃないか。久しぶりだな」
「久しぶりですね。約二週間ぶり―――な、なな!?」
コップから口を離してから立ち上がり、ゆっくりと歩いてきたマリアさんはブラジャーとパンツという下着姿。半裸というべき姿だった。大人の色気を持つマリアさんがしてはいけない格好だろう。
少しくすんだ色の金髪は長く腰の辺りまで伸びている。ツンと突き出た男心を刺激する形のよいメロンのように大きな双胸。キュッとしまったくびれた腰。思わず心奪われる脚線美。
「どうした、兄ちゃん。眼福ってか」
「あ、あ、あああああ」
「もしかして兄ちゃんは免疫がねえのか」
その通りである。
俺だって男だ。そういうことに興味のある年頃だ。成人向けのビデオを見たことはあるから、そういうのはそういうのは知っていても女性というのは大して縁のない存在だった。女性の下着姿を生で見るのなんて完全に初めてだ。いきなり見せられて思わずテンパってしまうのが普通だと思う。
ていうかなんで服着てないんだよ!
そう言いたくても口がもごもごするだけで言葉にならない。テンパっているのにマリアさんの体から目が離せない。釘付けになっている。目を離さなければと思うのだが、そういうお年頃なので目が離せない。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
「・・・?」
すぐ後ろから、何かが鳴動する音が聞こえてきた。
・・・地震ではないな。・・・おそらく。
なんだかものすごく嫌な予感がする。
既視感に襲われながらも振り返ってみると―――
そこには、ご機嫌が極端に右下がりで秒針が刻まれるたびに悪くなっていた中学校からの女友達の姿があった。
「・・・ねぇ、覚悟は出来てる?」
「ヒッ、ヒィィッ!」
出来てません!
というか背中からどす黒いオーラが湯気のように出てるんですけどっ!?しかもなんかその中に悪魔が見えてるんですけどっ!いつの間に悪魔と契約したのっ!?それとも今朝限りですかいっ!
「・・・じっくり身体に教え込んであげる・・・」
マジ怖いですよ、冬華さ~ん!
というか今度は魔力による肉体強化してますよっ!そんなに魔力込められたらゆうに100メートルは軽く吹っ飛ぶっての!威力を弱めてくださぁい!
嫌とは言わせないというような雰囲気を纏ってつかつかと俺の前まで歩いてきて、拳を振りかぶった。
「・・・いつまでジロジロ身体を舐め回すかのように見続けてんのこの変態!一発でいいから殴られなさい!」
「んな犯罪的な目で見てねぇし不可抗力だぁ――――――ッ!!!」
・・・なんでこうなるんだろうな・・・
迫り来る拳を虚ろな目でギュッと握った手を眺め、そんなことが頭をよぎった。
とっさの判断で魔法障壁を張った。冬華の魔力を打ち消すにはちょうどよかったが、そのパネェほど強化された肉体から放たれた砲丸のような拳の衝撃は別だ。
身体をVの字にするような爆進してきた拳は俺の体を穿ち貫くような威力を持っていた。
蹴られたサッカーボールのようにすっ飛んだ俺は店の壁にゴール。さらにネットを突き破り俺は瓦礫の山に埋もれた。
うう、話が進まない・・・。バトル書きたい―――っ!