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七色の精霊使い  作者: ぽけぽけさん
地球では高校生だったのに、異世界では異能者であり冒険者です。
4/12

依頼遂行の前日

中央都市『フェリア』

大陸中央部にある、世界で最大級の面積、魔法技術、歴史を持つ世界で最も有名な国のひとつ。

人口は二〇〇〇万弱。地球に存在する俺たちの故郷、日本。大して多くないといわれる日本の人口でも一億を越えている。その差なんと五倍ほど。

国民の大部分が『火を起こす』『そよ風を生み出す』程度の魔法を使え大いに捗っている。といっても魔法を使えないから国外追放や村八分に合うわけではない。違いといえば仕事の効率だけだ。

およそここまで魔法の国として有名になったのは『賢者』の名を持ったアルビレオのおかげだといえる。

魔法の基礎を作り上げるほどの類稀なる才能を持って生まれた彼は教科書、文献、歴史書、数多くの書物に登場する始祖とも呼ばれるほど、人の身にして国宝にも匹敵した。彼を崇める魔法学者、魔法使いもかなりの数がいるらしい。

彼と弟子達によってあらゆる魔法が解き明かされたことはいうまでも無い。

魔法の純粋な戦いでは負けるものの、世界一魔法方面について精通している『エルフ』とも学論に関しては方を並べられるほどだ。


と歴史について語りすぎたな。ちょっとチョーシに乗っていたようだ。

この街の見た感じで言うと、栄えた街だろう。西に海、東に大平原、南からは毎年毎年たくさんの商人達が儲けのために出稼ぎしてくる。不足している部分は無い。治安もよく、戦争の気配は無い。そもそも魔法王国と例えられるここに喧嘩を売ったところで圧倒的な戦力に敗れるだろう。


この世界で生きていく上では必ずは必要な知識。とはいえ、異世界人である俺には知る以外何も特の無いことなのだがな。

必要なものといえば・・・


「・・・桐島冬華と」


今は再会したばかりの冬華と冒険ギルド、通称ギルドに来ていた。

冬華も結局冒険者になることが決定。冒険者登録をしているのだが


「なんで冬華はそんなに文字書けんの?」

「・・・苗字と名前程度は序の口」

「おっ、とうとう俺らの暗号読みが仲間に」

「・・・別にこの世界の文字は暗号に例えるほど難しくはない」


と冬華の発言。ここ来て一ヶ月で言語習得とかどういう頭してんの?俺、初め名前すら書けなくてこの受付の人に疑問符立てられたんだからな。


「登録終わりました。これがギルドカードです。―――えーと、この方々とパーティを組むのでよろしいのですか?」

「・・・はい、そうです」

「金剛石の錬金術師さんと七色の精霊使いとはどういった関係で?」

「おいコラ、翔がさん付けで俺呼びすてってどういうことだ。説明を要求する」

「二人とは昔からの馴染みです」

「そうですかー」

「って人の話聞いてねぇえええええ!」


華麗までにスルー。こちらとしては心が抉られるように痛い。

ちなみに七色の精霊使いは俺、金剛石の錬金術師は翔の二つ名である。


「それで依頼の方はどうしますか?」

「・・・どうする?」

「俺に振んなよ」

「そうだねぇ、俺らといえば討伐が普通だね。報酬が高いし、ただ異能ちからを最大出力でぶっ放すだけだし。それに比べて護衛といえば依頼人殺しちゃいけないようにするとか無理だよ」

「依頼人をある程度怪我させる方がゲームとしては面白いけどな」

「・・・この世界はゲームじゃない」


冷静な突っ込みに普通にうなずく。護衛対象を苛めるとかどんなSだよそいつ、と突っ込みたくなる。

俺たちの依頼における優先度は『魔物などの討伐』が一番優先。なぜなら、それは楽しいから。敵を倒すというスリリングかつエキサイティングは俺たちの中二心をそそる。せっかくの魔法なんだ。楽しまなきゃ損損。

次は特に無いが強いていえば『何かの収集』だろう。特定の植物や鉱物といくつとって来いって言うあのやつ。

というか魔物などの討伐以外は護衛を除いて何でもいい。雑多な俺たちである。


「・・・街の警備っていうのは」

「あー俺には無理だ」

「俺はともかく・・・日向は町に甚大な被害を及ぼすかもな」

「・・・いつもなにやってるの」


呆れた視線を俺に向ける冬華。常日頃、精霊魔法に力を入れただけの威力しかない。俺は超広範囲殲滅魔法しか使えないのだよ、ワトソン君。


「まぁ、とにかくだ。全体的に実力としては高レベルのはずだ。俺たちは」

「このあたりが無難じゃないか。『ケルベロスの討伐』『コカトリスの討伐』」

「・・・どちらも一体でCクラス冒険者パーティをてこずらせるB級魔物だって言うのに・・・。それの集団と?」

「三人では受けてはだめ、という規制は無いぜ。・・・一応三パーティ以上推奨と書かれちゃいるがな」

「・・・私もここまで来るのにオーガとかホワイトウルフとかと戦ってきたから問題は無いだろうけど」

「へぇ、そりゃ・・・・・・大したこと無いな」

「・・・もしもこれで大した事無いんだったら、二人の置かれた環境がおかしいだけ」

「そんなこと無いぞ。グリーンドラゴンとかはファンタジーの醍醐味だから倒したけど」

「・・・早っ!」

「結構うまかったよな」

「確かに。あの霜降り肉のように柔らかく肉汁たっぷりのドラゴンの丸焼きはおいしかった。・・・たった二日で腐ったけれど」

「食ったんか!」


ここ最近では記憶の無い冬華にしては大きな声を上げる。


「まあまあ、二人ともそんなに大声出し合ってないでさ」

「「お前、俺なにも関係ないよ的なすまし顔してんだよ!」」


綺麗までにハモる俺と冬華の声。翔を指差す姿勢までが同じだった。


「とにかく依頼決めようぜ。刻一刻と時間が過ぎていくんだし。時は金なりって言うだろ」

「いっそのことこの二つを受けようか」

「・・・ものすごいハイペース。普通だったら一泊はかかる」

「とにかくこの依頼受けます」

「こちらの二つですね。受託しました、どうぞ頑張ってきてください」


受付の人と握手を交わす。生きて還ってくるようにという契約みたいなものらしい。


「・・・握手。どういうこと?」


隣ではものすごい形相を俺に向け、疑問符を浮かべるという離れ業をしている腐れ縁の姿が。


「・・・女誑し」

「いや、何処がだよ!」

「そういえば・・・日向女の子の友達増えたよね」

「この世界での話だろ。エルフのマリアさんとレナと竜人のルージェさんとハーフヴァンパイアのアルトだけだろ。しかも依頼で出会って助けたりしただけ―――って、ヒィッ!」


ひゅおおおおお!

なんかこの部屋、異様に寒くね?この世界にはエアコンないし、上のほうからじゃなくて俺のすぐ近くから冷気を感じるんだけど、多分、気のせい・・・なんだよな?

ものすごく寒いはずなのに、ぶわっと俺の顔面から汗が噴出し、だらだらと滝のように流れていく。

おそるおそる、古びたブリキ人形のようにギギギと首を後ろに回すと―――


そこには黒髪の修羅が紫電を右手に纏わせていた。

って、魔力込めすぎだろっ!ちょっと洒落にならない威力なんですけどぉっ!?


「日向、今ならまだ、時間あるよね。ちょっと長くてつらいお話しましょ」


いやあああ!左手を離して!襟を掴んで俺をギルドの外に引きずらないでっ!?

しかも立ち上げている殺気の量も半端じゃないんですけど!このままだと俺マジ殺されるだろっ!

苦しい苦しい苦しい!喉が絞まって息できなくて苦しい!

何か、何かいい手はないか、と視線をさまよわせると、ふと翔と視線があう。

信じていない神様にすがるように、俺は翔に「助けてくれ」とアイコンタクトを送った。

―――頼む、気づいてくれ。

俺のSOSに気づいたのか翔は口元を吊り上げ、実に爽やかな笑みを浮かべて、親指をグッと突きたてた。

さすがは俺の親友であり幼馴染みだぜ。やっぱり、なんだかんだ言って一番頼りになるのはお前だよなっ!

ああ、神だ。神が降臨しなさった(俺の脳内フィルター)。


「まあまあ」


そうそう。翔が冬華をいなめてくれて―――


「この鈍感が。地獄を楽しんで来い!」


突き立てていた親指を勢いよく下に落とす。そして俺の脳内フィルターは演算と解析を行い、翔を悪魔色に染めた。

指立てたのって地獄に行け(ゴー・トゥー・ヘル)って意味かよ!?ぬか喜びさせやがって。俺の期待を返せ!

こいつ・・・腐れ縁じゃなくて心の奥底まで腐ってやがる。

ちょっ、まっ、ギルドのみなさん!殺人現場が今から作られます!助けてくださぁぁぁいっ!

「けっ、こんなところでいちゃつきやがって」

「これはどう見ても男の子の方が悪いんじゃないのかな~」

「あ、この前コイツ、二人と街中歩いてるのを見たぞ!」

「二股どころが三股か!?」

「サイッテー!男としてどうかしてるよ」


なぜ故に俺が悪いことになってるんだ!?

ルックスか!ルックスがいいほうが正義でわるいのが悪か!?この世には神も仏も聖者も聖母もいないのか!?


「マジで、マジで後生だぁあああああアバアバアバアバ!」


俺は冬華の紫電の攻撃、魔法名『スタンブレイク』をわき腹に叩き込まれ、スタンガンにも似たような電流を味わい、目の前が真っ暗になった。

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