お出かけ延期?
朝である。
爽やかな目覚めと言うには些か疲労感があるのがアレだが、ほぼ自業自得なので諦める。
クレアは・・・今朝もやっぱり寝てるし。
しゃーねーなー、朝飯でも作っておくか。
「おーい、起きろー、朝だぞー、メシだぞー。」
「んにゅぅ・・・くぅ~・・・」
こいつは全く・・・美少女は主人公を起こしに来るのが義務なんだぞ!
これはお仕置きだなっ!
お尻にモミジ付けちゃるからなっ!
「うりゃっ!」
「ひゃあんっ!」
「おぼげっ!」
そうだよな、馬に焼印押す時も、背後に居ちゃ蹴られるんだったよな・・・不覚・・・
「もう・・・もっと優しく起こしてくださいっ!」
「やーだね♪」
「むー。」
「てか、蹴った事に対する謝罪は無いのか?」
「ありません。」
「ぬぅ・・・ふっ、まぁ良いわ。次は位置を考えてやるわい。」
「むー!またやる気なんですかー?」
「起きないお前が悪い。」
「う。」
「朝飯まで作ってやったのに。」
「うぅ。」
「とーぶん、お前を嫁には出来んな。これじゃ。」
「うぅぅぅぅぅ。」
今日はここを出てみるつもりだけど、武器とかどーすっかなー?
服はまぁ、有り合わせの着てりゃおっけーだし、防具使うつもりも無いんだけど。
剣がなー。
これ!ってのが無いんだよなー。ここの倉庫には。
いやね、魔王の隠れ家だけあって・・・あー特に名前無いらしーんだわここ。で隠れ家って事にした。
相当良い品揃ってるっぽいんだけど、ぶっちゃけ洋剣ばっかなわけで。
片刃刀だと、片手用しか無かったんだよ。そう、サーベル。
両手剣はみんな両刃だしさー。
俺が剣術なんか齧って無きゃ、それでも良かったんだろーけど、なまじ使い慣れたモンがあるとさ、やっぱしっくり来ないんだよねー。
ほら、他人のケータイって使いにくいっしょ?あんな感じ。
あー、やっぱ村正持って来られんかったのは痛かったかも。
俺が居なくなったからって、勝手に売っ払われそうだしなー。
くそぅ。
・・・って、あれ?あっちの部屋にあるのは・・・まさか???
「なんでコレがここにっ!?」
村正だった。間違い無く俺の。
しかも部屋の真ん中に。さっきまで何にも無かったのに。
「ク、クレアー、これ・・・俺と一緒にこっち来たわけじゃねーよな?」
「あ、はい。ユーキさん以外何も・・・それ何です?」
「俺の刀。」
「カタナ?」
「うん。俺の国の特産品武器。パクリは隣国にもあるらしいがな。」
「剣ですか?」
「あー、俺の国じゃ本来、剣てのは両刃のヤツ、刀てのは片刃のを指すんだ。今じゃゴッチャになっちゃってるけどね。」
「それがここに?」
「そーなんだよ。さっきまで無かったのに・・・。」
「すると・・・。」
「俺を追って来たんだろーな、やっぱし。」
「そんなまさか・・・。」
「・・・けどマジでこれ俺のなんだよ。師匠の形見でもあってさ。見間違いとか絶対に無い。」
「・・・だとしたら、ユーキさんが呼んだのでは。」
「俺が?」
「ユーキさんなら何でもアリかと。」
「あのな・・・。けど、その可能性が一番高いか。」
「他にも何か呼んでみれば判るかと。」
「なるほど。試してみる価値はあるな。」
結果。
クレア正解。他にも呼べた・・・。
まぁかなり条件がキビシイっぽくて、相当の思い入れのあるモノしか呼べなかったんだが。
まず、家族の写真。5年前のだけど、全員写ってるのはこれが最後。
俺の腕時計。ゴツいダイバー。父さんの形見でもある。若い頃の愛用品だったらしい。
母さんの婚約指輪。父さん無理しやがって感漂う高級品。石はサファイア。
妹のぬいぐるみ。10歳の、最後の誕生日に俺がプレゼントしたクマさん。
愛美、まだ10歳だったんだよな・・・早過ぎるよ・・・。
気付いたら、クレアにそっと抱きしめられていた。
いつの間にか、ぬいぐるみ抱えて泣いてたらしい。
「みっともないとこ見せてごめんな・・・。」
「いいえ。家族の為に流す涙は、決して恥ずかしいものじゃありません。」
「そうか・・・そうだな・・・。」
「私も、いっぱい泣きましたから。」
「ありがとうな・・・。」
「さーてと、本気でそろそろお外行くか。」
「はい!」
「このドア開けるだけで良いのか?」
「そうです。」
「あっさりし過ぎな気もしないでも無いが、まいっか。」
「でも私だと絶対開けられ無いんですよー?」
「よーし!うりゃっ!」
ただドアノブ回して開けるだけな、気の抜けるような第一歩-----。