初日
いやー、ここまで忙しくなるとわ・・・。
適当そのもので始めたわけなんだが、店は開店早々満席である。
俺とクレアは、キッチンから出る事も出来ずに調理中。
フロアはニノサムにまかせっきりなんだが、彼女らは中々高性能で、さしたるトラブルも無い。
二人とも(クレアもだが)、その辺の町娘ルックにエプロン着けただけなんだが、
なんか好評なようだ。主に♂にだがな。
エルムさんとガルのおっちゃんも朝から来てくれたが、流石に初回は安いほうの値段にしておいた・・・。
値段がリーズナブルなのが思ったより好評らしい。
エルムさんによれば、王都とかだと、この倍はするとか。
客層は予想通り若者中心。
てか、この町にこんなに居たのか?って感じなんだが。
小さな町なんで、お互いほぼ知り合いらしく、ニノサムと世間話とかしてるっぽい。
まーそんな気安さもあって入り易いのかもな。
俺とクレアだけだったら、ここまで盛況にはならなかったな、多分。
早朝から用意してたケーキとかはもう品切れで、クレアが必死こいて製作中。
俺は俺で、なんか人気になっちまったチャーハンばっか作ってる・・・。
いやさ、朝炊いた飯が昼前に無くなるとか勘弁・・・。
「よーやく休憩だわさ・・・。」
「はふぅ・・・ここまで忙しくなるとは・・・。」
「アタシら、もうお腹ペコペコだよー・・・。」
「はぁ・・・やっと閉店ですかぁ・・・。」
「まさか午前中からメシの客があんなに来るとは思わなかったぞ。」
「ですねー。」
「職人の弟子とかって、休憩取れる時間が決まって無いからね。
空いた時間に食事しちゃうのよ。」
「そーなのかー・・・参ったなー。」
「この時間までお客さん切れないとか大変だわ。」
「つーか、ピークとか読めんのは痛いなー。」
「ヒマ過ぎてもアレだけど、これはちょいとなぁ・・・。」
「もう一人か二人、ウエイトレスさん雇いますか?」
「むぅ・・・
毎日これじゃ確かに辛いが、今日だけかも知れないしなー?」
「あー、多分ずっとこうだと思う。
チャーハン大好評だし、ケーキもお茶も美味しい。何より安い。
お小遣いとかアレな若いコには最高でしょ。」
「友達の女の子たち、明日も来るって言ってましたー。」
「男どもは、クレアのおっぱいばっかり見てたしねー。」
「なにぃ!?
フロアにほとんど出てなかったのにか?」
「だってこの店、キッチン良く見えるでしょ。」
「むう。」
「クレアがケーキ作りにわたわたしてるの見て、
”あの揺れ具合がたまらん”
とか言ってましたしー。」
「///あぅ///」
「くっ!クレアのおっぱいは俺専用なんだぞーっ!」
「んな事知ってるわよ。
てかね、フロアに居るアタシらより、クレアのほうが注目されてるのって・・・。」
「もの凄~~~~い敗北感なんですよねー・・・。」
「そ、そんな事言われても~///」
「はっはっはっ!
お前らとクレアじゃ格が違うからなー。特におっぱいが!」
「「天誅っ!!」」
「おごっ!」
「全く・・・どーしてこうデリカシーが無いのかしら?」
「ホントです・・・。」
「ご、ごめんね二人とも。あとでお仕置きしとくから・・・。」
「まーでも、こいつの気持ちは判るけどね。」
「え?」
「やっぱり、彼女さんは自慢したくなるんですねー・・・。」
「///」
「う、うらやましくなんて無いんだからねっ!」
「く、悔しくもありませんからっ!」
「えへへー。ユーキさんはあげないんだからねー///」
「くぅぅ・・・幸せそうな笑顔が眩し過ぎるっ!」
「で、結局どうするの?」
「んー、取り敢えず3日やってみて、客足落ちないようだったら・・・。」
「ウエイトレスさん雇うんですね?」
「そのつもりなんだけど・・・アテが無い。」
「あ、それでしたら、うちの見習い仲間のコとか居ますけど?」
「神官かぁ・・・みんなニノレベルなのか?」
「?何のレベルですかー?」
「料理。」
「う。」
「・・・神官で料理壊滅的なのって、この娘だけかも。」
「うぅ。」
「だよなー。ふつー自炊するよなー。」
「うぅぅ。」
「あとねー・・・
何故か神官のコって、おっぱい大きいコが多いのよね。」
「それは是非っ!!」
「ユーキさん?食い付き良過ぎですよ?」
「・・・あー、クレア。
その包丁仕舞おうね?危ないし怖いから・・・。」
「でもさ、ニノ。
アンタは成績良いから、あんまり修行とかしなくて良いんだろうけど、
他のコって大丈夫なの?」
「あー、そーですねー。毎日は無理ですねー。」
「ニノって成績良いの?」
「そーよ。なんかムカつくくらい良いんだってさ。
神官見習いのコが言ってた。」
「へー。」
「凄いのねー、ニノ。」
「どー見てもぽややん落ちこぼれにしか見えんのだがなー。」
「うー・・・酷い言われようですー。」
「ぽややんなのは事実なんだけど、実際優秀なのよね。
パーティ組んでたアタシが言うんだから間違いないでしょ?」
「そーだなー。
フロアもそつなくこなしてたしなー。初めてとは思えん働きぶりだった。」
「えへへー。神官ですから、人と話すのは得意なんですよー。」
「どっちかってーと、聞くほうだろ。」
「あ、そう言えばそうですねー。」
「サムも意外に優秀だったしな。」
「意外は余計よっ!」
「正直助かったよ。お前らが居なかったらどーにもならんかったわ。」
「ホント。二人ともありがとう。これからもよろしくね。」
「うん。こちらこそ。」
「よろしくですー。」
「サムも、ウエイトレスやってくれそうな知り合いとか居ない?」
「うーん・・・
知り合いは居るけど、魔導師ってあんまり社交的じゃないのよねー。」
「お前は例外とか?」
「サムも最初はすごく取っ付きにくかったんですよー。
話しかけても、うん、とか、そう、しか言わないしー。」
「寒いヤツだったんだな・・・サムだけに。」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
「すんませんっしたぁっ!」
「イマドキこんなオヤジギャグ言うとか・・・
クレアが男見る目無いとか言われちゃうわね。」
「それは無いですっ!ユーキさん以上の人は居ません!」
「あらら・・・。」
「どーしてそこまで?」
「だって・・・
ユーキさんは・・・私のために・・・
いえ、会った事も無い女の子のために自分の世界捨ててくれたんですよ?」
「あ、そう言えばそんな事聞いたっけ・・・。」
「確かに・・・そこまでされれば・・・。」
「アタシでも惚れちゃうかもなー。」
「うぅ~、クレア羨まし過ぎですっ!」
「えへへ~♪」
「羨まし過ぎて、殺意が湧いて来る笑顔だわ・・・。
ユーキってば、別にイケメンでも無いのに。」
「オヤジ顔で悪かったなっ!」
「ユーキさんがイケメンだったら、クレアと一緒に埋めてますね。」
「そうねー。イケメンじゃ無くて良かったわねユーキ。」
「お前らな・・・。」