開店準備
「ちょっとユーキ君っ!何なのよあのジジイはっ!」
ジュリさんお怒りである。
そりゃなー、天下の往来でスカート捲りとかされちゃなー。
てか、スカート捲りて・・・小学生でもやらんだろ?イマドキ。
「すんませんした。
あのジジイ、あぁ見えてなにげに魔法の大家なんすよ。
それにクレアの古い知り合いでして・・・。
んでまぁ、クレアの先生代わりにと・・・。」
「アレが?
まぁそーゆー事なら・・・
けどね、また何かやったら・・・。」
「あー、そのですね、何かやらかしたら制裁してもらって構わんですから。
あのジジイ頑丈なんで、ちょっとやそっとじゃくたばったりしませんので。」
「あっそ。なら次は遠慮無しでいくわね。」
あれで遠慮してたのか・・・。
ジジイ地面に埋もれるまでストンピングかましてましたよね・・・。
「ちょいまち。って事は・・・魔法習うの?クレアちゃん。」
「はい。」
「サムちゃんたちから聞いたけど、結構強いんでしょ?貴女。」
「はぁその・・・魔力頼みで大雑把なんです。私の魔法。
ちゃんと学べば、もっと上手くなるそうなので。」
「それで、サムちゃんたちも一緒に?」
「いえ。今のところサムだけです。ニノは系統が違いますし。」
「それもそうね。ユーキ君は習うの?」
「いえ、俺は剣一筋ですよ、姐さん。」
「誰が姐さんよ!
なーにが剣一筋よ。嘘ばっかり。
クレアちゃん一筋なクセに。」
「えー、あー、コメントは控えさせていただきます。」
「むぅ・・・。」
「ホント、さっさと結婚しちゃいなさいよ、貴方たち。」
「///け、けっこん?!」
「あー、まー、いずれはそうするつもりですけど・・・。」
「///はぅ・・・ユーキさん///」
「まだちょっと早いかなーとか思うわけでして。」
「なんでよ?アリサたちと大して変わんないでしょ?」
「いやその、俺ら、あいつらと違って、知り合ってまだ短いんですよ。
んでまぁ・・・。」
「なーるほどねー。
しばらく恋人気分でイチャラブエロな時間が過ごしたいわけね。」
「///あぅ・・・エロは余計ですぅ///」
「でもシテるんでしょ?」
「///あぅぅぅ///」
「可愛いいわねークレアちゃんは・・・。
ユーキ君!
クレアちゃん泣かしたりしたらアタシが許さないからね!」
「うぅ・・・ジュリさん、ユーキさんて浮気者なんですー。」
「ちょっ!おまっ!」
「なぁんですってぇぇ?」
石の上で3時間正座させられました。
ずーっと説教されました。
うぅ・・・。
「やっと出来たよ。」
俺を正座地獄から救ってくれたのは、エルムさんだった。
あっちの家の改装が終わったと伝えに来てくれたんで。
マジ立ち上がれなかったんですが。痺れてて。
「うわぁ!」
まー、クレアが感嘆の声を上げたのも無理はあるまい。
ログハウス風の喫茶店である。いや、カフェテラス?俺に判別は出来んがなー。
「4人掛けのテーブルが店内3つ、テラスに3つ。
あと8人掛けのカウンターね。」
「いやエルムさん、満席だと32人ですよ?
そんなに客来るとも思えないんですが?」
「いやー、きっと来るよ。クレアちゃん目当ての客が。」
「どうですかねー?
クレアちゃんがユーキ君の嫁だってのは町中知ってますよ?
いくら美少女でも売約済みじゃねー?」
あー、まだ嫁じゃ無いですから、ジュリさん。
「それもそうか・・・ちょっと気合入れすぎたかな?」
「つーかですね、俺ら二人だけですよ?
そんなに客来たら対応出来ませんてば。」
「それならこうしよう。
可愛いい女の子を店員に雇って、露出高い制服を着てもらって・・・。
あー、制服なら服屋のオヤジに話付けてあるから・・・。」
おんやー?
何か怪しげな話になってきたよーな・・・。
「・・・こうしようとか仰ってますけど、最初からそのつもりだったんじゃ無いんですか?
てか、制服とか用意してるって、手際良過ぎません?」
「そ、そんな事は無いよ。あははははは。」
「・・・そう言えば、ウチの父さんも何度か町長さんトコ行ってたわ・・・。
何か会合があるとか言ってたけど・・・そういう事だったのね。」
「え?おっちゃんもグル?」
「と言うか、かなり多そうね、共犯。」
「いやいや、娘も嫁いっちゃったしねー、オジサンたちの憩いの場でも作ろうかなーって。」
俺らからジト目で見られても動じないエルムさん。つか開き直り?
「店なんて開くのやめるかー。」
「え、そ、それは困るよー、ユーキ君・・・。」
「けどそうねぇ・・・アタシもこう言うお店は欲しかったのは事実なのよねー。
若い子たちには人気出ると思うわよ。
まぁ値段とか高過ぎなければ、だけど。」
「ユーキさん、私もお店やりたいです。
せっかくケーキとか練習しましたし、ユーキさんもお茶の淹れ方とか勉強したのに勿体無いです。」
「うーん・・・でもなー、スケベオヤジに屯られてもなー・・・。」
「そうねー。
なら値段変えちゃうとかどう?
25歳未満は安く、それ以上は高くとか。」
「え?そしたらジュリさん高くなっちゃうんじゃ・・・?」
「ちょっとっ!どーゆー意味ユーキ君っ?!
アタシはまだ21よっ!!」
「「え?」」
「え?って何よっ!?しかもクレアちゃんまでっ?!」
「い、いやその・・・。」
「あ、あはははは・・・。」
「ふ、ふん・・・分かってたわよ・・・
どーせアタシはオバサンくさいわよ・・・
所帯じみてるわよ・・・
うぅ~・・・これもみんな父さんが悪いのよ~・・・。」
「「「あ。」」」
ほぼマジ泣きになりつつ走り去って行くジュリさん・・・。
あ~、何か地雷踏んでしまったよーだ。
しかし21て・・・
いやマジで30近いと思ってたのよね、俺もクレアも。
あとで謝りに行くか?
いやでもなー、かえって傷を深めそうだしなー・・・。
「それで、アタシたちにウエイトレスやれって?」
とりあえず、ニノとサムを雇ってみるか、と。
こいつら、何気に素材は悪くないしな。サムは一部で人気出そうだし。
「給料は払うから。安いけどな。」
「ご飯とかは出るんですよね?」
「出すよー。残り物とか余り物とかだけど。」
「身も蓋も無いわね。でもまぁいっか。」
「ふふふ・・・イケメンのお客さん来るかもしれないですよね・・・?」
「値段とかは決めたの?」
「えーとですね、ケーキとお茶は、単品だと一律銅3枚。セットだと5枚。
お茶のお代わりは2枚です。
あと、軽食は銅5枚で、大盛りは1枚プラス。お茶セットは7枚です。」
「安いわねー。それで儲かるの?」
「食材が安いからな。肉は白黒に獲って来て貰うからタダだし。
あとな、25歳以上の場合、値段変えるし。」
「え?なんでですかー?」
「いやな、オッサン連中がアレな目的で入り浸っても困るしよ。
なんせウエイトレス美人揃いだからなー。
それにオバサン連中にお茶だけで粘られるのもイヤだしな。
んで、オトナな方々には、100倍払って頂く。」
「え?
じゃあ、お茶一杯銀3枚ですかぁっ?!」
「そ。この値段ならおいそれと来ないだろ。」
「町長さんとかも?」
「無論。てかあの人は金3枚にすっかな?」
「あのお爺さんは?」
「出入り禁止に決まってるだろ。」
「制服とかあるの?」
「無いですよー。
町長さんが用意してたんですけど・・・その・・・。」
「あーんなエロエロなの着せられるかっての!」
「それで、ウエイトレスは、このエプロン着用って事にしたの。」
「あ、なるほどね。それならお客さんにも判りやすいわね。」
「あのー、クレア。お願いがあるんだけど・・・。」
「なぁに?ニノ。」
「お給料いらないから、お料理教えて欲しいの~。」
どうします?と目顔で訊いてくるクレア。
「ヒマな時なら良いよ。給料も払う。
俺らが忙しい時に手伝ってもらえる方が、こっちも助かるからな。」
「ありがとー!」
「じゃ、アタシにも教えて。お茶の淹れ方とかも。」
「おっけー。
じゃ、早速明日の開店に向けて仕込みするんだが、手伝ってもらおうか。」
「え?今から作ったりしたら、悪くなりませんか?」
「作り置きしとけるモンは作っておくのさ。
あと、干し肉とか切り分けるのもやっとく。」
「なるほどー。」
「その前にさ、アタシお腹すいた。」
「あ、私も~。」
「じゃあ、何か作りますね。」
「ううん、今日はユーキのご飯食べてみたい。」
「あん?俺の?」
「うん。何か変わった料理作れるんでしょ?食べてみたい。」
「んー・・・じゃ、チャーハンな。」
「チャーハン?なにそれ?」
「まぁ作ってやるから待ってろ。不味くは無いから。」
「うん。美味しかったよ。ユーキさんのチャーハン。私も食べた事なかったけど。」
チャーハン。
俺は中華料理人じゃねーから、中華鍋ガシガシやって油を焼き飛ばすなんてワザは使えねー。
いや、やってみたけど、鍋の中身を頭から被るハメになったしな。
つーわけで、俺が作るのは日本の家庭料理的チャーハンである。
まーピラフだかチャーハンだか良く判らんアレだ。
飯さえ炊いておけば、簡単に作れるからな。具も適当で良いし。
干し肉は山ほどあるんで、肉多め。
で、最後にレタスっぽい野菜を混ぜ込んでレタスチャーハン。
ただのチャーハンだと脂っこいけど、これならOKのハズ。特に女の子にはね。
付け合せには、あっさり風味の鶏ガラスープ。
食後にはとーぜんお茶。
「お、美味しいっ!」
「なにこれ、初めて食べたわ。」
「コメのメシさー。こっちじゃパン主食だけど、南方じゃコメ主食。」
「おコメかぁ・・・粉にしなくても食べられるのねー。」
「つ、作り方教えてくださいっ!」
「アンタはまず茹で卵作れるようになりなさい。」
「あぅ・・・。」