帰還
7日ぶりに、仮の我が家に帰宅。ジイさんも一緒なのがアレだが。
「ただいまー。」
「・・・おかえりなさい。」
うん。仮面の如き笑顔が怖いですクレアさん。
それにその、背景が真っ黒な気がするんですけど?
「えーと・・・。」
「・・・5日で帰ってくるって言ってましたよね?」
「あ、あー、その、ちょっと遠出を・・・。」
「・・・遠出ですか?連絡もせずに?
・・・それに・・・他の女性とエッチしましたね?」
な、なにぃっ!?即バレなのっ?!
「な、なななな、なんのことでせう。」
「私が気付かないとでも?
出かける前より精気が減ってますよ?」
なんとぉっ!? んなモン把握されとるのかぁっ?!
「す、すんませんしたぁっ!」
速攻土下座である。
「それはまぁ良いんです・・・。
獣欲魔神のユーキさんが、何日も我慢出来るわけありませんから。
私がお相手出来ない状況なら、仕方無いと諦めます・・・。」
「・・・。」
「で・す・が。
私の目の前で浮気するのは・・・。」
「は、はひっ!
ハーレムは諦めて、現地妻方式にシフトしますっ!」
「そ~こ~は~・・・
嘘でも”もう浮気はしません”って言うところですっっっ!!!!」
「ぐげっ・・・ぐ、ぐび・・・じ・・・ぎ・ぎぶあp」
「これこれ。その辺にしときなさい。白目剥いておるぞい。」
「え?あ、きゃあぁぁっ!ユーキさん、死んじゃイヤーっ!」
「げふっ、ごふっ・・・死ぬかと思った・・・。」
「うぅぅ・・・ごめんなさぁい・・・
って、お爺さん誰ですか?いつからそこに?」
「最初からおったんじゃがの?」
「えっ?・・・全然気付きませんでした・・・。」
「やれやれ・・・本当に小僧しか見えておらなんだのか・・・。」
「///あぅ。」
「ワシはトムナーハ・・・
いや、お前さんにはトム・フールのほうが覚えがあるかの。」
「トム・フールさん・・・?トム・・・
あ、あぁーっ!」
「思い出してくれたかのぅ?」
「お、思い出しましたっ!
覗き痴漢下着ドロ、何でもアリの色欲劣情龍王サマっ!」
「・・・ジイさん、大層な二つ名頂戴してたんだな。」
「ふぉっふぉっ。照れるのぅ。」
「いや、褒めてねーから。
ところでクレア。
お前、昔このジイさんに悪戯とかされてねーだろーな?」
「あ、私はいつも侍女さんたちに守られてましたから・・・。」
「ジジイ。クレアに手ぇ出したらマジぶっ殺すからな。」
「ユ、ユーキさん・・・///」
「分かっとるわい。そう睨むでないわ。」
「イマイチ信じられねーんだよな。なぁクレア?」
「はい。
だってこの龍王サマ、お城の女性たちには、”発見次第駆除セヨ!”
と伝達されてるほどでしたから・・・。」
「駆除ね・・・ピッタシかも。」
「無礼じゃのぉ・・・浮気者の分際で。」
「ぐふっ!」
「そうでした・・・私怒ってたんでした・・・。」
あー、クレアの絶対零度の視線が痛い・・・。すいませんもうしません・・・
多分。いやきっと。恐らく。
「そ、そうだ・・・クレアに渡すモノがあったんだ・・・。」
「なんですか?」
「こ、これ・・・受け取ってくれるか?」
例の鷲の爪のアクセである。
爪が結構曲がった形なんで、2本使ってハート型にしてみた。
ちなみに材料はジジイの鱗である。
龍鱗。
軽くて丈夫で魔法耐性アリ。しかも最高級の黄金龍のモノである。
30cmx15cmくらいなんだが、コレ1枚で金貨3枚は下らんつー値打ちモノ。
ジジイが居た穴倉に、ゴミみたいに散らばってるんだけどね。
コレって本来スゲー硬くて、加工が大変な代物なんだが、とある裏技(ジジイ本人が教えてくれた)
を使うと、粘土みたいになるのよ。何枚分か混ぜて、デカいモノも作成可能。
色も変えられる。
めちゃ軽いんで、防具に最適。ただ軽過ぎて、武器にはイマイチ。
で、これで爪を2本組み合わせてハートを象ってみた。
上部に輪っか付けて、チェーン通して出来上がり。
何気にチェーン作るのが一番大変でした・・・。
「こ、これって・・・ネックレス?」
「うん・・・爪のアクセ。色はクレアの髪に合わせたつもり。」
「嬉しいっ!///」
思いっきり抱き付かれてキスされました。
おっぱいがキモチイイです。アレがそそり立っちゃいそうです。
・・・立っちゃいました。
「やれやれ。バカップルじゃのぉ。」
「ジジイ、まだ居たのか?」
「ワシの事は気にせんで良いぞ。さ、続けるのじゃ。」
「続けるか阿呆っ!」
「なんじゃつまらん。」
「あそだ。このジジイの事で話があるんだった。」
「話?」
実はこのジジイ、魔法の遣い手なんである。伊達に歳食ってるわけじゃ無いらしい。
なので、クレアと、ついでにサムの先生にしちゃおう、と。
あとね、この家はもうじき出て、あっちのデカい店舗兼自宅に移るわけだが、
ジジイはこのままココに住んでもらおうか、と。
アッチの家はデカいから、ジジイ住まわせるのもどうって事無いんだが、
痴漢や覗きの常習者と同居するのは、幾らなんでもアレだし。
「なるほど・・・それが良いですね。」
「老人を一人住まいさせようとは、冷たいのぅ・・・。」
「アンタの素行が最悪過ぎるんだよ。俺はクレアとイチャラブしたいの!」
「イ、イチャラブって・・・もう///」
「まぁ仕方あるまい。流石に若夫婦と同居するのは気が引けるしのぉ。」
「まだ夫婦じゃ無いがな。」
「むー。夫婦でも良いのにー。」
「じゃが、家賃とかはどうするんじゃ?カネなんて無いぞ?」
「体中カネの成る木みたいなくせしやがって・・・。
まぁ、それは俺らが払うよ。魔法の授業料って名目で。」
「ふむ。じゃが、まだ大家には話しておらんのじゃろ?」
「反対はされないと思うけどな。あちらさんも空き家が埋まるわけだしね。
今から行くつもりなんだ。」
思ったとおり、エルムさんは大喜びでOKしてくれた。家賃は月銀1枚。
俺らが自分たちの分とまとめて払うって事で決着。
ジジイの事、何者か訊かれたんだが、引退した魔導師って事にしといた。
あと、極めてエロい人物である事も伝えておく。
町長直々に、町の人たちに警戒を促してもらうためだ。
そんなの連れて来るんじゃ無え!とか、俺が責められるからな。予防線である。
・・・効果はあんまし期待出来ないかも、だが。
あっちの家は、明日には完成するらしい。1日早いじゃん。
家に戻ると、玄関前に4人立ってる。
サム、ニノ、アリサ、そしてケン。何しに来たんだ?
「うっす。久しぶりー。」
「久しぶり、じゃ無いわよっ!」
「クレア毎日泣きそうな顔して待ってたんだからねっ!」
「もうちょっと大事にしてあげてくださいっ!」
いきなり3人娘から責められる俺。
ケンは口にこそしないが、視線で非難してるし。
いやまぁ、言われても仕方無いんだけど。
「みんな、ありがと。もっと言ってやって。
でもね・・・さっきコレもらっちゃったんだ♪」
「あ。」
「ハシグロのネックレス・・・。」
「綺麗・・・。」
「うっ!ボクのよりデザイン良いかも・・・。
って、コレ、材質は・・・ま、まさか?」
「えっと・・・龍の鱗なんだって。」
「「「「ええええええぇぇぇっ!?」」」」
「うるさいよ、お前ら。」
「りゅ、龍鱗・・・しかも・・・チェーンまでとか・・・。」
「これだけで一財産よね・・・。」
「うん。家買えちゃうよね・・・。」
「最高級防具の素材でネックレスとか・・・勿体無いと言うのか贅沢と言うべきか・・・。」
「勿体無いかぁ?
大切な人に贈るんだから、最高のモノ使って当たり前じゃないか?」
「///ユーキさん///」
「あー・・・負けたわ。」
「うん・・・完敗。」
「い、言われてみたいです~。」
「う・・・確かに・・・使えるなら最高のモノ使うよね・・・。」
「そいや、アリサのって、その髪飾りか?」
「え、う、うん・・・。」
「へー。こりゃまた頑張ったなーケン。こんな細かい細工、俺にゃ無理だ。」
「い、いや、ボク一応細工師だしね・・・。」
「素材は俺のほうが良かったかも知れないけど・・・何か負けた気がする・・・。
思い入れつーか、掛けた手間の差つーか・・・。
良かったな、アリサ。」
「///う、うん・・・ありがと。えへへ///」
「///い、いや、照れるからやめてよ・・・。
それにユーキだって、コレ作ってて帰りが遅れたんだろ?
龍鱗なんて手に入れるだけで大変だったんだろうし。」
「え?あ、ま、まあな・・・。」
言えない。
素材はその辺に一杯落ちてましたとか、コメ食いたくて寄り道したげく、
未亡人とイイコトしてましたとか、絶対に言えない。
「ところで、さっき一緒に居たお爺さん誰?」
「へ?」
居ない。ジジイが居ない・・・いつの間に?ドコ行きやがった?
「きゃぁぁぁっ!なにするのよっ!この痴漢っ!」
あの声は・・・ジュリさんじゃネ?
おかげでジジイの居所判ったけど。
ジュリさんにチョッカイ出すとは・・・勇者だなジジイ。骨は拾ってやるぞ。