エロジジイ
「何故掛かって来ん?」
「届かねーもん。デカブツ殺るには待つのが吉。」
「やはり素人では無いのか。」
「ジジイこそ、何で仕掛けてこねーんだよ?」
「隙が見当たらんのでなぁ。」
「けっ。その図体なら隙も何もあったもんじゃ無えだろ?」
「龍とて不死身では無いのでな。目玉を潰されてはかなわんわい。」
「ちぇっ。やめたやめた。」
「ふん。最初から殺り合う気なぞ無かったくせに。」
「お互い様だろ、そりゃ。」
「まぁあの姫が選んだ男だ。このくらいでなくてはのぅ。」
「お褒めに与り光栄ですよ、龍王サマ。」
「全く、口の減らぬ小僧だわい。」
「ふむ。中々美味いのぅ。おかわりじゃ。」
「ジジイ、まだ食うのかよ?」
「150年ぶりじゃぞ。グダグダ言わずに早うせい。」
「へいへい。」
あれからすぐ、ジジイは人化した。
江○島平八を白髪にしたよーな、暑苦しいジジイである。
”どうじゃ、驚いたか!?”
”わーすげーびっくりしたー”
”くっ・・・最近の若い者は・・・”
”どーでもいーから服着ろジジイ”
てな会話のあと、メシ食わせろとか言われて隠れ家に戻って来たんだが。
食うわ食うわ・・・。
「うーむ。満腹じゃ。」
「20人前は食いやがったな。」
「150年分には足りんがな。」
「飲まず食わずで平気なら、一生食うなよ。」
「まぁそれでも良いんじゃがな。人の姿になれば色々美味いモノがあるんでのう。」
「煩悩の塊だな。」
「ふぉっふぉっふぉっ。枯れてしまっては人生おしまいじゃ。」
「アンタはそろそろ終われ。」
「まぁそう言うな。老人には老人の使い道があろうよ。」
「知識とかか?」
「ふむ。分かっておるようじゃの。」
「まず訊きたいのは、アンタあそこで何してたんだ?」
「ミスリル工房の守衛じゃよ。」
「工房?鉱山じゃ無いのか?」
「ミスリル鉱石などと云う物は存在せぬ。あれは合成物よ。」
「合金なのか?」
「いや。合金では無い。我が鱗に魔族の血を加え、更に魔力で変異させた物。
それがミスリルじゃ。」
「じゃ、言うなればジジイが鉱山なわけか。」
「そうなるかの。ただし、変異させるには莫大な魔力が必要じゃ。
人間はおろか、エルフでもまず無理じゃろうな。」
「魔族の血も要るのか・・・。」
「なぁに。それは少量で構わんのじゃ。ワシの鱗も勝手に生え変わるでの。」
「ふーん。あそこの奥には何があるんだ?」
「ミスリルが大量にあるぞ。ワシの鱗もな。」
「なんで外に出なかったんだ?出ようと思えば出られたんだろ?」
「ワシはあそこの最後の守りじゃ。最初に来るのが味方とは限らんのでな。」
「魔王とは、友達みたいなモンだったのか?」
「そうじゃな。あやつは本当に大した男じゃった・・・。」
「魔王はやっぱ、勇者と戦ったのか?」
「判らぬ。ワシはあそこに張り付いておったのでなぁ。」
「魔王は死んだのかな?やっぱし・・・。」
「確証は無いがのぅ・・・。
生きておれば、愛娘を放って置く男では無いしのぅ・・・。」
「そうか・・・まぁあいつの事は俺が代わりに守るさ。」
「あとさ・・・この世界にコメとか無い?」
「コメ?なんじゃそれは?」
「あー、穀物なんだけどね・・・口じゃ説明しにくいな。」
「こちらでは見かけておらんのじゃな?」
「あー、うん。呼び名とか違うかも知れないけどさ、無いっぽい。」
「ふむ・・・南部に行けばあるかも知れんな。」
「南部?」
「うむ。大陸南部の海沿い地方は、内陸部と気候がかなり違うんじゃ。
この辺りとは比べ物にならん温暖さで、雨も多い。」
「・・・女の子も薄着?露出度高い?」
「無論じゃ!ダークエルフの娘など、そりゃもう・・・。」
「ダークエルフ?エルフと違うのは判るけど、どんな種族?」
「開放的と言うか、明るいと言うか・・・楽しければ良いと云う感じじゃな。」
「いかにも南国的つーか、ラテン?」
「女子も開放的じゃぞぉ?」
「くっ!クレアが居るしなぁ・・・。」
「なんじゃ。だらしないのぉ。もう尻に敷かれておるのか。」
「そーゆーわけじゃ無いと思いたい・・・。
たださぁ・・・泣かれると勝てないんだわ。」
「ふぉっふぉっふぉっ。ならば仕方無いのぉ。
怒らせるのはともかく、泣かせるのはイカンのぉ・・・。」
「だろ?
だからまぁ・・・そっち方面は俺パスなんだわ。」
「ふむ。姫もなかなかやるのぅ。」
「そいやさ・・・クレアの母親って・・・。」
「エリシアは・・・姫を産んですぐじゃったな・・・。」
「・・・そうか。」
「聞いておらなんだのか?」
「あいつ、母親の事は一言も話さないんだ。多分自分も覚えてないんだろうな、と。
だから俺も訊くのは控えてたんだ。」
「上出来じゃ。小僧。」
「褒めても何にも出ねえよ。
あそだ、ジイさん、お茶とか詳しいか?」
「お茶?まぁそれなりには嗜んだがの。」
「じゃ、教えてくれ。基本だけで良いから。」
「まぁ良かろう。その代わり・・・。」
「またメシ作ってやっから。
あと・・・クレアに会いたくないか?」
「それは会ってみたいがのぅ・・・憶えていてくれるかのぅ?」
「別に初対面のジジイでも問題無いだろ。あいつが気付けば御の字って事で。」
「それもそうじゃな・・・。」
「でもな、セクハラすると嫌われっぞ?」
「むむ・・・何秒我慢出来るかの・・・。」
「秒なのかよ・・・。」
「エリシアもええ乳じゃったが・・・。」
「エリシアって、クレアの母ちゃんだよな?」
「そうじゃ。運悪くギュスターヴめに攫われてしまったがの。」
「ギュスターヴってのが魔王?」
「そうじゃ。
ワシとギュストでエリスを獲り合っておったんじゃ。」
「そりゃ、あのイケメンとジイさんじゃ勝負は見えてるわな。」
「無礼な。ワシこれでも若い頃は・・・」
「聞きたくねーよ。
ところで、エリスさんも魔族なのか?」
「いや・・・エリスは天使じゃ。」
「天使ぃ?」
「正確には神の僕じゃがの。」
「神って、大勢いるのか?」
「うむ。地火風水と光、闇の6柱じゃ。」
「あ、そうなの。」
「エリスは光の神の使いとしてギュストの元に現れ、いつの間にか恋仲になってのぅ。」
「・・・神様は怒らなかったのか?」
「光の神は愛の神でもある。祝福されとったぞ。」
「そっか・・・魔王と天使の娘か・・・泣かしたらスゲーヤヴァそう・・・。」
「神罰があるかものぉ。」
「ところでさ、他の魔族って居るのかな?」
「黒森島におらんのか?」
「魔王が居なくなってからは、見かけなくなったらしい。」
「ふむ・・・あやつらは基本単独行動じゃからな。
ギュストが居ないとなれば、バラバラになっておるのじゃろう。」
「全滅してるって可能性は?」
「最弱の魔族でも、最強のエルフと互角じゃ。まぁ有り得んの。」
「じゃあ、どっかでノンビリ暮らしてるとか?」
「或いは、エルフどもと暗闘しとるのかも。
ギュストはカリスマがあったからの。その仇討ちしようとする者もおるかも知れん。」
「エルフが仕掛けた陰謀だって知ってたのか?」
「当然じゃ。人間如きが召喚なぞ出来るものか。
裏で糸を引いてる者が誰かくらい、すぐに見当が付くわい。」
「なんかエルフってさぁ、頭悪いんじゃない?」
「陰謀とか向いておらんのは確かじゃな。そんな物を使わずとも、十分栄えておったからの。」
「人間は陰謀とか大好きだからなー。
それで大陸は人間の物になっちまったわけだ。」
「そうじゃ。それを諦め切れぬ年寄りどもが、まだおるわけでな。」
「老害だなー。」
「それで、おぬしはどうするんじゃ?エルフを滅ぼすつもりか?」
「いんや。めんどくせーし。
喧嘩売られたら、高~~~く買ってやるけどね。」
「おぬしよりも、姫が狙われる可能性が高いがの。」
「クレアは俺が守る・・・あとまぁ首謀者には死んでもらう。」
「そうじゃな・・・そろそろ引導渡すのも良いかも知れん。」
「あーそうだ。ジイさん、勇者の名前とか知ってる?」
「ふーむ・・・確か・・・ゲンとか言うたのぉ。」
「ゲン・・・正確な姓名は?」
「それは判らん。」
「仕方ねーか・・・。
んじゃま、お茶について教えてもらうとするか。」
「うむ。」
お茶、種類多すぎ。
ダーリンジ :俺の知ってる紅茶に一番近い。
ムアッサ :ちょっと渋め。ミルクティー向き。
ジウ :ぶっちゃけ緑茶。
んで甘過ぎのイセロン、と。
他にも色々あったんだが割愛。めんどくせーし。
ただなー、俺ってコーヒー党なんだよなー。
「コーヒー?なんじゃそれは?」
「やっぱ知らねーか・・・。」
「そうじゃ・・・これから南部に行ってみぬか?」
「は?」
「おぬしの言っていた、コメとやらがあるかも知れんし、コーヒーとやらも、な。」
「そーだな。行くだけ行ってみっか。どれぐらい掛かる?」
「おぬし、飛べるか?」
「おう。」
「ならば半日あれば着くじゃろう。」
「じゃ、暗くなってからにしよう。ココ見付かるのは避けたい。」
「うむ。そうじゃな。」
「あー寒い。寒いぞー!」
「なんじゃ。だらしないのぉ。」
「俺は鱗も毛皮も無えの!」
「ほれ、見えて来たぞい。あれがダークエルフの村じゃ。」
「・・・なんかこう、デジャヴ?水田かアレ?」
「まぁ詮索は降りてからじゃ。」
夜明け前にダークエルフ村到着。
田んぼですよ田んぼ。うっひょー。コメ食えるっぽいぞー。苗代とかあるし。
あ、この匂いは・・・。
「味噌かっ!?味噌汁かっ?!」
「落ち着け小僧。」
「誰?朝っぱらから騒々しいわね。」
近くの農家・・・だよな、から、褐色の肌の美人のお姉さん登場。
金髪なのかよ。確かにエルフ耳だな。・・・にしても、おっぱいがご立派過ぎる!
うん。やっぱエルフ氏ネ。ダークエルフ万歳。
「あ、すいません・・・懐かしくてつい・・・。」
「懐かしい?アンタ初めて見る顔だけど?」
「あ、その・・・ココって意味じゃなくて、ご飯と味噌汁の匂いが・・・。」
「へぇ・・・。」
「あの、よろしければ食べさせてもらえないでしょうか?お代は払いますんで・・・。」
「ご飯はともかく、味噌汁と漬物くらいしか無いよ?」
「それが食べたいんですっ!」
「あはは・・・分かったよ。用意してやるから入りな。」
「ありがとうございますっ!」
「ではワシも・・・。」
「ジイさんはダメ。」
「なんじゃとっ!」
「アンタ、噂に聞くトム・フールだろ?」
「い、いやワシは・・・。」
「人間はともかく、アタシらは騙せないよ。セクハラトムは有名なんだよココじゃ。」
「むぅぅ・・・迂闊じゃった・・・。」
「さ、坊やはお入りなさい。」
「はーい。」
「うふふ・・・可愛いいわねー。食べちゃおうかなぁ♪」
「うぐぐぐ・・・この待遇の差は納得いかんぞいっ!」
腹一杯ご飯食えました。味噌汁もたくさんお代わりしました。
昼間は、お姉さんと一緒に村を回りました。
コメも味噌も醤油も、山葵や生姜まで売ってもらえました。
これからも、売ってもらえる事になりました。
お姉さんの名前はミルファイユと言うそうです。
泊まっていけと言われました。
お姉さんに食べられちゃいました。後半は俺が食べてましたけど。
・・・お姉さんは未亡人!でした。
帰り際、絶対にまた来てね!と言われました。
はい!と元気良く返事しました。
うーむ、クレアにバレたらどーしよー・・・いや、正直に言うべきか?うーむ・・・。
ジジイは、村の広場で女性たちにボコられて、一晩中晒し者になってました。