エルフって結局
「要するに選民思想だな。」
「それなに?」
「我々は神に選ばれた民である。従って他民族が我々に従属するのは当然である!
ってな思い上がり。」
「うわー。」
「まぁあれだよ、貴族とがが平民差別したりするだろ?あれのスケールアップ版。」
「うん。貴族嫌い。威張るだけで無能だし。」
「私もです。神殿上層部は大好きみたいですが。」
「貴族じゃなくて、貴族からのお布施が好きなんだろ?」
「あはは、確かに。」
「でもさ、いくらエルフが優秀でも、人間は何百倍も居るんだよ?
滅ぼさないにしても支配とか無理なんじゃない?」
「そうでも無いさ。
現に今、平民は貴族の何百倍も要るんだし。」
「あ、そっか。」
「ただ、今の貴族はアレかも知れんが、元祖つーか初代の人たちってのは、英雄だったりしたわけだよな?」
「まぁ、そうですね。少なくとも何か功績はあったんでしょう。」
「そーゆー人たちだから、民衆も大人しく従ったわけだ。
武力で支配したのも居るかも知れんが、大半は支持されてのものだろう。
けどエルフが人間を支配しようとするなら、それは武力で抑え付ける以外に無い。
けどそうする為の戦力は明らかに不足だ。
支配するだけなら今の数でも出来るが、その前に屈服させるだけの武力が足りない。」
「それじゃ、どうにもならないですね。」
「そこなんだよ、分からんのは。
なんかさ、世界を滅ぼしそうな悪役が現れて、それをエルフが撃退しましたー、とか
そーゆーシチュでも起きないと、エルフが頂点に立つのはまず無理。」
「・・・そう言えば、昔、魔王様は世界を滅ぼそうとしているとか言われてたそうです。」
「あー、私も聞いた事ある。でもみんな信じなかったんだって。
そのうち魔王様が行方不明になっちゃったんだけど・・・。」
「それさ、誰が言い出したんだろうな?」
「さぁ?古い話ですし・・・あ。」
「そうか、それを言い出したのはエルフかも、って事ね?」
「俺が調べた話だとさ、異世界から召喚された人間が、魔王と相討ちになったっぽいんだ。」
「異世界から召喚?!そんな事出来るわけ・・・。」
「エルフでも?」
「っ!・・・なるほど。人間じゃ多分、いえ絶対無理だって言えるけど、エルフなら・・・。」
「魔族にも出来そうですね。クレアはどうなんですか?」
「出来ます。」
「出来るんだっ!?」「出来るんですかっ?!」
「証拠はココに居るよ。」
「「!!!!!!」」
「な・・・なるほど・・・普通じゃないわけね・・・。」
「龍が懐く時点で、普通じゃないですもんね・・・。」
「はっはっはっ、照れるな~。」
「褒めてないから。」
「むしろバケモノ扱い?」
「・・・俺の繊細なハートはズタズタだよ・・・。」
「今まで隠しててごめんなさい。
私、150年閉じ込められてて、今の状況とか全然わからなくて、
それで用心して正体隠してたの・・・」
「150年・・・16歳とかよくもまぁ・・・。」
「はぅっ!」
「んでさ、クレアから聞いたり、俺なりに調べてみたんだけどな・・・。」
「じゃあ、魔王様は・・・。」
「うん。もう亡くなってると思うの。」
「・・・そうなんだ・・・。」
「その件なんだがな・・・どうもおかしいんだ。」
「おかしい?」
「勇者は無理やり召喚され、しかも魔王を倒せば元の世界に帰れる、とか騙された。」
「うわー。それで魔王様と・・・。」
「それで相討ち、ってのが聞いた話なんだが、考え直してみると、どうもおかしい。」
「何がですか?」
「聞いた限り、魔王ってのは、相当の人格者だったっぽいよな。
勇者の事は良く分からんのだが、少なくともバカでも無法者でも無かったのは間違いないと思う。
そんな二人が相対して、言葉も交わさずにいきなりガチるとは思えん。
少なくとも、魔王は訊いたはずだ。
何故自分を討とうとするのか、をな。」
「確かにそうですね。」
「魔王様には、勇者に命を狙われる理由が無いもんね。」
「でさ、勇者が理由を答えたとしたら、魔王はどうすると思う?」
「・・・父なら、勇者を帰そうとしたでしょう。」
「え?」
「ちち?」
「あっ!」
「はぁ・・・やっちまったか。・・・そうだよ、クレアは魔王の娘なんだ。」
「「えええええええええええっ!!!」」
「あーうるせえ。」
「だ、だだだだだだだってっ!」
「あ、あああああの魔王様のっ!」
「いいから落ち着け。誰の娘だろうと、クレアはクレア以外の何者でも無えんだから。」
「・・・さすがに驚くわよ。」
「・・・はふぅ・・・。」
「ユーキは、無理やり召喚されたんじゃ無いの?」
「違うよ。クレアはそんな事しない。同意の上で呼ばれたんだ。」
「そうですね、クレアはそんな事しそうも無いですね。」
「ホント、良い娘だもんねー。」
「///も、もう・・・。」
「で、さっきの続きだがな、俺もさ、魔王なら勇者を帰そうとしたと思うんだよ。
両者にとって、それが最善だ。」
「そうですね。それが一番です。」
「でも、送還は私も出来ませんよ?」
「お前に出来なくても、親父さんには出来たのかもよ?
お前だって独学で召喚までやってのけたんだ。親父さんなら出来ても不思議は無い。」
「あ・・・。」
「それで、儀式だかなんだかやってたら、大爆発が起きて、二人ともそれっきりだ。」
「・・・戦ってたんじゃなく、送還儀式の失敗だったんですね・・・。」
「多分、親父さんでも難しいレベルだったんだろう。
だから万一を考えて、お前を安全なトコへ移した。」
「でも、あの父が失敗するなんて・・・。」
「仮にだが、儀式中に妨害なり干渉なりされたんだとしたら?」
「あっ!そっか。」
「勇者は、単身で黒森島に乗り込んだらしい。人間のお供は不要だってんで。
足手まといってより、信用してなかったんだと思う。」
「そうよねー。無理やり呼び込んだ相手なんか信用しないわよね。」
「だが、尾行してるのが居たんだろうな。」
「えー?仮に勇者がユーキと同等だったとしたら、気付くんじゃない?」
「人間ならな。」
「エルフか!」
「サムたちには申し訳ないけど、人間の魔力じゃ、魔族の術式に干渉なんてまず無理です。」
「気にしないで。生まれ付き種族が違うんだから仕方無いわよ。」
「でもさ、エルフはどうして魔王様を?」
「魔王を悪役に仕立てて、自分たちがヒーローになるシナリオ考えてたんじゃないかな?
んで、欲深いピラウの連中巻き込んで色々始めたわけだ。
ただ魔王も魔族も強い。んで、当て馬として勇者を呼んだ。
勇者が魔王に勝てなくても、弱らせるぐらいで十分とか考えてたのかも知れない。
トドメは自分たちで、ってな。
ところが勇者は、思ったより強かった。
魔王を倒しても帰れないと判ったら、彼が自分たちに敵対するのは明白だわな。
彼が生き残った場合は、彼も始末する予定だったと見て間違いない。
なのに魔王と勇者は戦いもせず、あろう事か勇者を送還しようとし始めた。
奴らにとっては大誤算だったわけだが、逆にチャンスにもなった。」
「術式の途中で、あらぬ干渉を受けてしまうと、暴走しちゃうんです。」
「うん、知ってる。
私らぐらいの魔力でも結構危ないんだから、魔王様とかなると・・・。」
「山半分吹っ飛んでたよ。結界が無きゃ、全部吹っ飛んでたろうな。」
「うわぁ・・・。」
「でも、それならどうして今も魔王様が悪く言われて無いんでしょう?」
「それは多分、ミスリル鉱山のせいだ。」
「?」
「魔王を排除してから、
”ミスリルを独占していた悪の魔王は我々が退治した。
今後は我々エルフを崇め、従う国にのみミスリルを与える。”
とか言うつもりだったんじゃねーかな?
ミスリルが欲しけりゃ、従うしかあるまい。」
「なのに、鉱山を手に出来なかった?」
「そ。
魔王が居なくなってミスリルの供給がが途絶えちまったんだから、
魔王を殺したのは我々だ、なんて言い出せるわけが無え。
取って代わって初めて効果あるんだからさ。排除しただけじゃ逆効果だったのさ。」
「バカみたい。でも、鉱山占領出来ると思ってたから実行したんじゃないの?」
「最初はさ、ピラウの仕業だと思ってたから、単に魔獣を排除出来なくて失敗したんだと思ってたんだけど、
エルフなら魔獣くらいどうって事無いよな?」
「そうね、よっぽどので無ければ。」
「となると、実は見付けられ無かったんじゃねーかな?と。」
「鉱山をですか?」
「うん。いかにも鉱山っぽい坑道だけ作って、そこから石塊運び出してりゃ、
誰でもあー、あそこが鉱山だと思うべな。例えそれがただの魔獣の巣だとしても。」
「カモフラージュだったのかぁ。」
「大陸のパワーバランスを左右する代物だ。それぐらいやってるだろな、と。」
「じゃあ、本物の鉱山はどこにあるのか判らないんですね?」
「いや、多分ウチにある。」
「「「えっ!」」」
「ウチって・・・?」
「俺とクレアの隠れ家。」
「え、でも私、見た事無いですよ?」
「親父さんは、黒森島からあそこまで一瞬で跳べる転移陣を使ってた。
鉱山から出たミスリルも、あれで島に運べば、島の産物に見せかけられる。
俺の勘に過ぎないけど、多分あの隠れ家に、鉱山に繋がる通路か転移陣があると思うんだ。」
「あ、確かに坑道みたいなのは無いですが、転移陣ならあるかも・・・。」
「150年も居たのに、全部把握してないの?」
「あぅ・・・その、召喚魔法に熱中してて・・・///」
「それで外に出られたんだから、良いんじゃネ?」
「いえ、クレアにとっては、外に出るよりも嬉しい結果になったみたいですけどね?」
「あそっか。旦那様召喚かぁ・・・羨まし過ぎるわね。」
「///あぅぅぅ///」
「私もイケメン召喚にチャレンジしますっ!」
「やめなさい。」