エルフに関する一考察
エルムさんに断って、銀熊亭に移って3日。
エルムさんは寂しがってくれたんだけど、それもそうか、と、生暖かい笑顔で送り出してくれた。
やっぱしそう来たか。そりゃ、二人っきりになりたくないわけじゃねーけどさ。
さて、泊まり始めて驚いたのは、部屋中盗聴されてた事。
いやさ、普通のヒトならまず気付かないほど高度な術式らしいんだが、
クレアにあっさり見破られたわけで。
どうします?と目顔で訊かれたんで、潰すのもアレだから、封印かけて機能だけ殺しちゃえ、と。
んで、聞かれても構わないよーな場合だけ、封印解除しよう、と。
最初はさ、ラブホなんかの盗撮の類かと思ったんだよね。
でも盗聴は仕掛けられてたけど、盗撮は無かった。
クレアによれば、これだけの盗聴仕掛けられるなら、盗撮だって簡単なはず、らしい。
んで、クレアに術式を辿ってもらった。逆探知みたいなモンと思ってくれ。
結果、盗聴仕掛けたのは、オーナーたるエルフ、ブレットだと判明。
おいおい・・・。
だが、エロいエルフが居たっておかしくはない。まー封印したから無問題だし。
しかし、エロい事が目的なら、盗撮仕掛けるよな、フツー。
つー事はだ、宿泊客を探るのが目的と考えるべきだろう。
クレアに調べてもらったら、他の部屋にもあるとか。
ただし、俺らの部屋のより、質も量も段違いに劣るらしい。
俺ら特別扱いなわけか。多分悪い意味で。
クレアが魔族だと見抜かれてるのは間違いないな。
クレア曰く、エルフなら判別出来ておかしくないそうだし。
単に警戒されてるだけなら、まぁ良い。
だが明白に悪意あるいは敵意があるとすれば厄介だ。
まずはそれを確認するべきだな・・・。
盗聴に気付いて無いフリしつつ、どーでも良い会話に、時折ミスリードを誘うネタを仕込んでみるか。
ただ、一日中どーでも良い会話してられんので、昼間は森に狩りに行く事にする。
ガルのおっちゃんに訊いたら、
別に依頼とか無くても、狩った獲物の有用部分はいつでも買い取るって言われたし。
まー別の理由もあるんだが・・・ぶっちゃけ白黒のお食事。
こいつらの事は隠しておきたい。
盗聴されてる部屋じゃ、遊ばせるのも食わせるのも危険すぎる。
最近運動不足っぽくて、思いっきり遊ばせてやりたいってのもあったしね。
で、白黒に狩りさせといて、俺らは作戦を練りつつ干し肉やら燻製やらを作っておこうと。
あいつら良く食うからなー。育ち盛りなのかな?やっぱし。
1日1kgくらい食うんだよ。あいつら体重3kgくらいなのに。
おかげで、前の狩りでストックしといた肉もだいぶ減っちゃったんだわ。
肉くらい町で買えば済むっちゃ済むんだけど、
宿でメシ食ってるハズの俺らが、肉ばっか買い込むのは不自然過ぎるっしょ?
で、どうせなら、って事で、ニノサムの二人も誘ってみた。
二人なら白黒の事も知ってるし、ブレットについて訊いてみたいしね。
「ケホッケホッ・・・
狩りに行くって言うから付いてきたのに、まさか延々と燻製作るハメになるとは・・・。」
「私なんて、ず~っと乾燥魔法かけてるんですよ~?」
「いやー、白黒が張り切ってるんでな。悪い悪い。」
「ま、お裾分けもらえるなら良いけどね。」
「そりゃもちろん。」
「それで、私たちに何か相談でもあるんですか?」
「あ、わかる?」
「そりゃね。・・・普通ならクレアと二人っきりでしょ?」
「私たちを誘うなんて、エッチな目的とも思えませんしね。」
「なんで?いきなり縛って色々ヤるつもりだったかもよ?」
「良く言うわ。私たちじゃおっぱい不足なんでしょ?」
「大体、そーゆー目で私たちを見てないのは丸判りですしね。」
「ぬぅ。」
「で、相談て?」
「あー、単刀直入に行くが、ブレットってどんなヤツ?」
「胡散臭い。」
「ですね。物腰は柔らかいですし、人当たりも良いですが・・・。」
「なんか不気味?良く分からないんだけど、イマイチ好きになれないのよね。」
「町の人たちもそう思ってるかな?」
「んー?外見と物腰に惑わされてる人は多いかも。ジュリさんとか。」
「ジュリさん、面食いですからね・・・。」
「でも、お前らはその、なんか違和感がある、と。」
「うん。なんか時々・・・妙に薄気味悪い感じがするんだよね。」
「でもなんで、あそこに泊まってるんです?宿は他にもあるのに。」
「あー、バカップルの推薦でねー。」
「あいつら・・・ホントお人好しなんだから。」
「あの二人には、紳士的なエルフとしか映ってないでしょうねぇ。」
「それで、泊まってみたものの、実はな・・・。」
「盗聴魔法?サイテーだわ!」
「今まで誰も気付かなかったんでしょうか?」
「あ、うん。私だから気付けたんだと思うの。普通のヒトには多分無理。」
「クレアって、何者なのよ?魔導師なのに治癒とか出来ちゃうし。」
「ホントです。神官の存在意義を返してください!」
「え、あ、あははは・・・。」
「あー、お前ら。秘密を守れるって誓うか?」
「・・・教えてくれるの?」
「あー、最初にも言おうか迷ってたんだけどな。味方欲しいしさ。
たださ、アリサにゃ悪いが、あいつってポロっと言っちゃいそうだろ?
白黒の事くらいならまだしも、クレアについては絶対バレちゃ困るんでさ。」
「あー・・・否定出来ないわ。」
「裏表が無いのは良い事ですが、時と場合によりますね・・・。」
「誓ってくれるか?」
「誓うわ。」「誓います。」
「サムは薄々気付いてると思いますが、私、魔族です。」
「やっぱり。」
「はぁ・・・どおりで。」
「ニノはもちっと驚くと思ったんだがなぁ?」
「あー、馬鹿にしてるー!
これでも神官の端くれなんですよ?」
「魔族かぁ・・・良いなぁ。」
「え?」
「私もそれぐらい魔力欲しいなー、って。」
「私もです。それだけ魔力があれば・・・。」
「あ、あぅ・・・。」
「なぁ、魔族って嫌われて無いんだよな?」
「極一部の人間は嫌ってる。嫌ってるって言うより妬んでる。」
「ですね。これだけ差が有ると・・・妬むのもわかりますが。」
「はぅっ!二人の目が怖いですっ!」
「お前ら、クレアを泣かすな。」
「あ、ごめん。つい。」
「クレア、羨ましいです。」
「そ、そんな事言われても・・・。」
「魔力の事じゃありませんよ。
すぐに守ってくれる人が傍に居て羨ましいと思っただけです。」
「///あ・・・うん。でもあげないよ?」
「要らないです!自分でゲットしてみせます!私だけのイケメンをっ!」
「あー・・・ニノってこんなキャラだっけ?」
「アリサが片付いちゃったからね・・・私もちょっと悔しいかも。」
「ふーん。」
「まぁ、それは置いといて。ブレットの事どうするの?」
「どうもしない。今はね。」
「盗聴は犯罪よ?」
「証拠が無い。クレアにしか分からないんだぜ?
お前らは信じてくれたけど、他の人は判らないだろ?」
「あー、そっか。」
「まずは、ヤツがなんでそんな事してるのか調べようと思うんだ。」
「え?エッチな目的じゃないの?」
「俺なら、盗聴じゃなく盗撮する。」
「・・・説得力あるわね。ユーキが言うと。」
「お褒めに与り光栄の至り。」
「じゃあ、何の目的なんでしょう?」
「恐らく情報収集。宿屋だし、色んな客が来るだろ。」
「多分それね。でも何の為?」
「ヤツの個人的な目的じゃ無いだろーな。組織的な黒幕が居るんだと思う。」
「それって、まさか・・・。」
「おう。多分エルフの総意。」
「でもなんで?エルフは人間と敵対してるわけじゃ無いわよ?」
「表向きは、だろ?」
「え?」
「事を起こすまで、友好的に接しておくのは常套手段。」
「それはそうかも知れないですけど、もう何百年も・・・。」
「エルフの寿命は?」
「あ・・・。」
「何千年も生きる奴らにとって、2,3百年なんてどうって事無いだろ。」
「じゃ、じゃあエルフは、ずっと前から人間を滅ぼす気で・・・」
「いや、滅ぼす気は無いだろ。服従させるとか支配する程度だと思う。
元々の数が違いすぎる。」
「そ、そんなのって・・・でもどうして?」
「多分だけどな。
自分たちより全てに於いて劣ってる種族が一番繁栄してるのが気に食わないんだろうな。
誇り高いってのは、裏を返せばナルシシズムだ。
連中からすれば、人間なんて虫けら同然に見えてるのかもな。
なのに、今大陸を支配してるのは、その虫けらどもなわけだ。」
「・・・そうか、あの目は、ブレットが時々見せるあの目は・・・
こっちを見下してるんだ。」
「態度がいくら慇懃で丁寧でも、内心は馬鹿にしてるから、
それが何となく分かる人には不快に感じられるんですね。」
「人間風情に頭下げたり敬語使ったりするのが、
嫌で嫌でしょうがないんだろな。
んで、たまに表に滲み出てくる、と。」
「うわー、なんかムカついてきたわ!」
「ホントです!」
「・・・問題はだな、今のは全て俺の推論でしか無いって事でな。」
「でも、当たってると思うわよ。」
「いや、そうだとしても、誰が信じる?
恐らく無能揃いの王侯貴族は鼻で笑うだろうよ。
エルフが表立った行動でも起こさない限り、俺らはただの変人かキチガイで終わる。」
「うーん、どうしようも無い?」
「今んトコやるべき事は・・・。」
「情報集め、ですね。」
「まずは敵を知る事さ。」
「ユーキさんって、こういう事になると活き活きしますよね。」
「うっ!」
「生まれ付き黒いのかもね。」
「あー、そんな感じですねー。」
「お、お前ら・・・。」
「ユーキさんが真っ黒な人でも、私はずっと味方ですから・・・///」
「クレアのノロケはお約束として、私たちに何が出来るかしらね?」
「そうですね。私たちクレアやユーキさんみたいに強くも無いですし。」
「あー、まずは町の人でさ、俺らの味方になってくれる人を探して欲しい。
ただし・・・。」
「口の固い人、でしょ?」
「ああ。難しいけどな。
ほとんどの人はエルフを警戒なんかしてねーし、むしろ好意的だ。
・・・美形は得だよな、チクショウ!イケメンなんて滅びるが良いっ!」
「私怨が混ざってるわよ。
てかね、クレアみたいな超絶美少女ゲットしといて、なに贅沢言ってんのよ?
大陸中の非モテ男どもに殺されるわよ?」
「うるさい。ハーレムは浪漫なの!」
「粋がったって無駄よ。
アンタ、クレアを怒らせるぐらいはやりそうだけど、
泣かせるなんて真似は到底出来そうも無いし。」
「うっ!」
「///あぅ」
「ホント、大事にされてますもんね、クレアって。
あぁー、私のイケメンはどこぉーっ?!」
「だいぶ壊れてきちゃったわね。神官って一応禁欲が建前だからかしら?」
「なぁサム、お前、自分が俺と同じくらい黒いって気付いてる?」
「うっ・・・私は闇属性なのよっ!黒くて当然でしょっ!」
「開き直りましたね・・・。」
「ニノも案外黒いけどな。」
「ふふ・・・神殿なんて言っても、神の名を借りた営利事業ですよ?
神官だってお金は必要なんです。イケメンも。」
「・・・まぁ知ってたけど、神官がそれ言っちゃ・・・イケメンは置いといて。」
「うぅ・・・何だか仲間外れにされたような気がします・・・。」
「いやクレア、お前まで黒くなられると困るんだが。」
「そうそう。
外で黒い戦いをして帰ってくる旦那様を、
優しく癒してあげるのが奥さんの務めよ。」
「///お、奥さん・・・えへへ♪///」
「クレアって・・・安いですね。」
「俺もそう思うが、あんまり高くても困るしな・・・。」
「なに言ってるのよ。クレアが安いのはユーキにだけよ。
他の男になんて非売品なのよ?」
「う。」
「・・・私にイケメンな買い手は付くんでしょうか?」
「ニノ・・・安売りしちゃダメよ。」
「お前らも十分美少女だと思うけどなぁ?胸は残念だけど。」
「胸の事は言うなぁっ!」
「うぅ・・・クレアと比べられたら、勝ち目ある女の子は居るんでしょうか?」
「んー、おっぱいのデカさだけなら結構居ると思うよ?
けどクレアよりデカくても、俺はクレアのが良い。」
「///ユ、ユーキさん・・・」
「キタわね、ノロケが。」
「形といい、柔らかさといい・・・何より揉み心地が・・・。」
「///はぅっ///」
「その辺にしときなさい。エロ猿。」