さてどうしよう
「ただいまです。」
クレアがお帰りのようだ。なんかスゲー不安だな。
「おかえ・・・り?」
出かけた時はいつもの紫ワンピースだったんだが・・・?
今着てるのは、空色のシャツ?(すまん、俺にファッションを語るスキルは無い。)
黒のベスト。ほら、良くある胸のトコで紐結びなヤツ。
ってか、それ胸強調し過ぎだから!元々存在感あり過ぎなんだから!自重して!
下はふつーにスカート。膝上ってのか?色はワインレッドで良いのかな?
ミニは許さん。あのフトモモを拝めるのは俺だけの特権である。
「あ、あのっ///」
「はっ!」
うむ・・・つい見惚れてしまったぞ。
「///ど、どう・・・です・・・か?」
俯きがちにモジモジしながら訊くな!クるだろーが!
こ、ここは褒めねばならん局面なんだろーが、俺のスキルじゃ・・・。
ぴーんち!
先に謝っておこう。チキンな俺。
「あ、あーゴメン・・・。」
「えっ!」
「そ、その・・・似合う、と、可愛いい、しか思い付かない・・・。」
「///はぅっ!///」
気の利いた褒め言葉なんて、俺の脳内辞書には掲載されてねーっつの!
ま、まぁ・・・ハズさなかったっぽいから良しとしよう・・・うん。
「で、そ、その服どしたん?」
「///え、えっと・・・ジュリさんのお下がりなんですけど・・・
町中でくらい、少しオシャレしなさい、って、下さったんです・・・。」
「そ、そうなんだ・・・。」
うーむ・・・女の子って、服装だけでここまで変わるのか。
いや、美少女だからだなー。
こいつの容姿に欠点とか皆無だもんなー。あくまで俺基準だけど。
「あ、それでですね、ジュリさんにそれとなく訊いてみたんですけど・・・。」
「うん?」
ごく自然に、寝そべってる俺の頭を膝に載せてくれながら。
うーむ。相変わらず見事なおっぱい。
見上げても顔見えねーぞ。
はっ!
見えねーって事は、耳かきサービスしてもらえねーって事じゃん!くぅぅ・・・。
「聞いてます?」
「あ、うん。」
「魔族についてなんですけど、人間に嫌われてるわけじゃ無いみたいです。」
「ほう?」
「ただ、150年前以来、見かけられた事が無いそうなんです。」
「・・・例の支配地とやらでも?」
「バーデン軍では、居たと言い張ってるみたいなんですが、
信じてる人はほとんど居ないとか。」
「バーデン国民も?」
「あ、それは判りませんけど・・・。」
「大本営発表みたいなモンだな。」
「なんですか?それ。」
「ん、国家とか軍部に都合の良い情報しか流さない事。ウソも含めてね。」
「国民を騙すんですか?」
「戦争中なら珍しく無いと思うよ。負けっ放しですーとか、言えないだろ?
あとはまぁ、相手を貶めたりとか、正義は我にあり!って主張するとか。」
「そんな事まで?」
「だってさ、
あそこの領地が欲しいから、侵略します。国民の皆さん命がけで協力してネ☆ミ
とか言われて、喜んで行くか?」
「そ、それはまぁ・・・。」
「で、そーゆー場合はさ、
そこの領主がこっちに悪さ仕掛けてくるから懲らしめる為だとか、
そこの領民が圧政で苦しんでるから助けに行く正義の行ないなのだ!
とか理屈付けるわけ。」
「詭弁ですね。」
「そんなモンだよ、戦争の理由なんてさ。
”自称”正義の為の戦争はうんざりするほどあるけど、
まぁほぼ全て、自国の為の戦争さ。
勝てば”自称”解放軍。負ければただの侵略者。」
「・・・判り易いですね。」
「歴史は勝者が作ってるのさ。負けた国は悪役確定なの。」
「・・・」
「ま、んなの今はどーでも良い。
で、これからどーしよっか?」
「私は、ユーキさんに付いてくだけです。」
「おいおい、奴隷じゃ無いんだから、自分の意見とかあるんだろ?」
「意見が無いわけじゃなくて、まだその・・・外の世界に慣れてないって思うんです。
だから・・・。」
「あー・・・それは俺もだ。外ってか、この世界に。
でも、そうだな。まず慣れるのが先かもな・・・。」
「まだ、知らない事や分からない事が多いですからね・・・。」
「余所者の俺と、150年ニートのクレアだもんなー。」
「ニートって何ですか?」
「社会不適合者?」
「酷いっ!」
「ま、それは置いといて。そろそろココ出ないとなー。」
「あ、そうですね・・・いつまでも居候してるわけにもいきませんね。」
「たださ、この町気に入っちゃったから、宿屋に移るだけにしないか?」
「そうですね。この町にもう少し居ても良いですね。」
「んじゃ、宿探しに行くか!」
「はい!」
左腕にクレアぶら下げながら歩いてると、向こうから同じような二人組が。
「あら、ユーキとクレアじゃない。」「やぁ。」
「おー、新婚バカップル。昨日ぶり。」「こんにちは。」
バカップルって言ってるのに、でへへーな表情になる若奥様。
付ける薬は無さそうだな、うん。
こっちも弛んだ顔ながら、まだマトモな若旦那。まぁ五十歩百歩だがな。
「何か探し物?ボクたちで良ければ案内するけど?」
「あー、うん。お勧めの宿屋ないかな?」
「え?ウチの父さんと喧嘩でもしたの?」
「ううん、違うの。そろそろ居候は申し訳なくて。」
「そんなの気にしなくて良いのに・・・。」
(アリサ。彼らも二人っきりになりたいんだよ。)
(あ、あぁぁぁ、そうかぁ、さすがね、ア・ナ・タ♪)
聞こえてるわい、このお花畑コンビめ。なーにが、ア・ナ・タ♪だ!
あーもー、居心地悪過ぎ!
「んで、お勧めあるかい?若旦那。」
「あ、あぁ・・・案内するよ。
最初に言っておくけど、この町に宿屋は3軒しかない。」
「ふむ。」
「で、3軒はまぁ、値段的に上中下に分けられる。
サービスとかは、どの宿も値段相応以上の質だと思うよ。
普通なら下に当たる宿を紹介するんだけどね、君たちには向いてない気がするんだ。」
「そのココロは?」
(壁が薄い。)
(お気遣い感謝する。)
(いやいや。)
「何小声で内緒話してるのよ?」
「い、いや、何でも無いよ、アリサ!」
「コホン。妻たる者、夫のする事に一々口を挟むのは如何なものかな?」
「///うっ。」
(さ、さすがだね、ユーキ君。)
(いや、アンタが弱腰過ぎるだけだと思うよ?)
(うっ。言い返せない・・・やっぱり弱いよね、ボク。)
(いや、アンタは真の勇者だよ。アリサを嫁にした時点で。)
(・・・褒められてる気がしないよ、ソレ。)
(猛獣の調教は命懸けなのは知ってるだろ?)
(・・・自分で選んだ道とはいえ、引き返したくなってきたよ・・・。)
(良く言うよ。ベタ惚れのくせに。)
(・・・うん。そうだよ。)
(そう言い切れるなら、大丈夫だろ?)
(ははは・・・そうだと良いけど。)
「もう二人とも!着いたわよっ!」
「え?」
「え?じゃないわよ、もう。ヒソヒソ話しっ放しで、感じ悪いんだから!」
「いや、ケンがな、アリサが毎晩どれだけ積極的かって、自慢しやがるから・・・。」
「えっ?えっ!///」「ちょっ!///」
「じゃ、案内ありがとなー。」
「え?ちょまっ!ユーキ君っ!?」
「なかなか良さそう、てか高級っぽいなぁ。」
「・・・ユーキさん、ホントは何話してたんですか?」
「内緒だから内緒話って言うんだぜ?」
「むー。」
「さ、入るべー。」
「あ、ずるいー。・・・でもあの二人あのままで良いんですか?」
バカップルは、天下の往来で何やらナイトライフな言い合いを始めたよーだ。
「ふっ。夫婦の問題に他人が立ち入るべきではない。」
「カッコつけてもダメです。けしかけたくせに。」
「痴話喧嘩に一々関わってられるかっての。ほっとけ。」
「良いのかなー?」
銀熊亭ね・・・。まーなんつーか落ち着いた感じってか大人っぽいってか。
なんか俺らみたいなガキっぽいのは似合わんよーな・・・。
「いらっしゃいませ。」
おおぅ!これは所謂一つのエルフなのか?
銀に近い肩までの金髪。
スラリとした長身。俺も180あるんだが、俺より高い。
切れ長の眼を初め、整い過ぎな顔立ち。笑顔が眩しすぎて・・・。
殺意すら沸いてきたぞ!
なんだこのイケメン兄ちゃんはっ!?
絶対隣に立ちたく無いぞっ!うわっ!歯が光ってるしっ!
「あの、なにか?」
「はっ!す、すいませんっ!エルフって初めて見たもんで、その・・・。」
「ははっ、やっぱりそうでしたか。そういうお客様多いんですよ。お気になさらず。」
くっ!歯が眩しいっ!キラーン☆とか擬音が聞こえそうだぜっ。
ぬぅ、全てに於いて負けてる気がするぞっ!
「それで、どんな御用ですか?」
「あ、はい。明日から宿泊したいんですが、料金とかをお伺いしたくて。」
さすがクレア。ナチュラルに会話出来るとは。容姿で負けてないからだろうか。
「はて?お二人は町長さんのお宅にお泊りでは?」
あー、やっぱこっちの事は知ってるのね。
「はい。ですが、ご厚意に甘えっ放しなのは、いささか・・・。」
「なるほど・・・。ふむ、そういう事ですか。
部屋はダブルで・・・一泊二食付き銀貨1枚なんですが、お二人は名誉町民ですしね。
半額で結構です。」
なんか一人で納得された。多分ケンと同じ結論出したんだな。
「いえ、そんな。名誉町民なんて名前だけですし・・・。」
「はは・・・なに構いません。
宿のほうは付け足しみたいなモノで、売り上げはほとんどこっちの店ですから。」
「酒場・・・ですか?」
「昼間は食事がメインですけどね。町長さんも時々来てくださいます。」
いや、客一人も居ないじゃん?大丈夫なのか?
とか失礼な事おもってたら、客が来た。
って、え?
「こんにちはー!」
「いらっしゃい。ジュリさん。」
「はー、お腹空いたー!ブレットォ、今日は何がお勧めー?
って、あれ?クレアちゃん?」
「こんにちは。ジュリさん。」
「ここのランチに目を付けるとは、侮れない嗅覚ね。
ん?ユーキ君は、なんで固まってるの?」
「ああ。エルフは初めてらしくてね。」
「あー、わかるわー。なんか自分の存在を全否定したくなっちゃうのよねー。」
「そんな、大げさな・・・。」
「クレアちゃんは平気みたいねー・・・ま、当然と言えば当然か。」
「え?え?」
「いや、僕も久々だよ。エルフに匹敵するほどの女性を見たのは。」
「ほー、以前見たのって人間かなー?」
「いやー、子供の頃の事なんでね。ただ、人間じゃ無かったとは思う。多分、龍族。」
「はぁ・・・エルフや龍族に匹敵するんだー・・・クレアちゃん。」
「え?あ、あの・・・。」
「自覚は無いみたいだね。」
「ふふ、そこがまた可愛いいんだけどね。
それに自覚しようがしまいが、この娘はソコの石像しか見てないしね。」
「ははは・・・あやかりたいもんだね。」
「はっ!・・・このおっぱいは渡しませんよ!」
「復活第一声がそれかい・・・。お姉さんは泣けてきたよ。」
「///うぅっ・・・おっぱいって・・・嬉しさ微妙過ぎ・・・。」