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 「ただいまー。」「ただいま戻りました。」

 「おう。お帰り。明日の結婚式に間に合わんかと心配してたんだぞ。」

 「いやー、数が足りなくても、今日には戻るつもりでしたよ。」

 「そうか。って事は、もう片付いたのか。大したもんだ。」

 「案外居るんですね、熊。」

 「春先だからな。山の方もあったかくなりゃ、そっちに行くんだがな。」

 「あー、なるほど。」


 門番のおっちゃんと挨拶がてら会話してから、ギルドつか酒場へ。


 「こんちわー。」「お邪魔します。」

 「おう。戻ったか。首尾は・・・って訊くまでも無さそうだな。」

 「一応。3頭分の爪っす。あと毛皮とかは引き取ってもらえます?」

 「ん?あぁ、状態が良ければ買おう。

  ・・・ってこりゃあ、ほとんど傷が無えじゃねえか。良い値付けさせてもらうぜ。」

 「よろしく~。」

 「おいおい・・・俺任せで良いのか?足元見るぞ?」

 「ガルさんがそんな事するはずありませんよね。」

 「小僧はともかく、嬢ちゃんにそう言われちゃ出来ねぇなぁ・・・。」

 「うっわ、差別だ。」

 「あたりめーだ。お前だってそうだろーがよ?」

 「くっ・・・否定出来ない。」

 「はぁ・・・男ってホントに・・・。」


 後ろで溜息つく事務員のジュリさん。実はガルさんの娘さんだとか・・・。


 「ジュリさん。お母さん似で良かったですねー。ホントに。心から。」

 「おいこら!どーゆー意味だ小僧!」

 「ありがと、ユーキ君。私もホントそう思ってるの。」

 「な、なんだと・・・わしってそんなに・・・。」

 「まぁまぁ・・・ちょっと・・・いや凄く暑苦しいだけですから。」

 「この野郎っ!」

 「お父さんっ!さっさと値付けしてっ!」

 「はい・・・。」


 父親って、みんなこうなんだろーか・・・。


 「面倒だから、全部まとめて金貨5枚だ。色付けてやったからな、感謝しろい。」

 「さんきゅ。」「ありがとうございます。」

 「小僧、誠意がこもって無いぞ。」

 「こめて無いし。」

 「良い度胸だ、小僧。」

 「お父さん!」

 「くっ・・・憶えておれよ。」

 「てかさ、おっちゃん。俺ら貨幣価値に疎いんだよ。

  実際金貨5枚ってどんぐらいなのかピンと来ないんだわ。」

 「誰がおっちゃんだ!・・・しかし、そーゆー事か。よし、ジュリ、後は任せた。」

 「はぁ・・・全く・・・。」

 「お手数おかけします。」

 「ああ、良いのよ。どうせヒマだしね。」



 ジュリさんに教わった貨幣価値。

 

 銅貨=約100円

 銀貨=約1万円

 金貨=約100万円


 て感じだろうか。あくまで食い物基準なんだがな。

 取り敢えずランチ一食銅貨4,5枚なんで、こんなもんだろう。

 ・・・ってか、熊3頭で500万かよ・・・。


 「あのー、もらい過ぎな気がするんですけど・・・。」

 「ああ、良いのよ。確かに高めに見積もってるけど、ウチが損する価格じゃないわ。」

 「そうなんですか?」

 「ええ。特にあの毛皮は高く売れるからね。

  普通は傷だらけで、ほとんど価値は無いんだけど、あれだけ大きく採れるのは凄く高いわ。

  それが3頭分。もっと高くても良いぐらいだわ。」

 「あー、それでおっちゃん、最初は毛皮の事言わなかったのか。」

 「そうね。傷だらけだと、持って来る労力に見合う価値は多分無いからね。」

 「ガルさんて、やっぱり良い人ですね。」

 「クレアちゃん、その台詞、お父さんに言っちゃだめよ。付け上がるから。」

 「いや、それで舞い上がらせて、もっと高く売りつけよう。」

 「あら、それは困るわね。実際上手くいきそうなとこが特に。」

 「うふふ・・・ジュリさんが居る時点でダメそうですけどね?」

 「なら、ジュリさん不在時を狙うか。」

 「ふふ・・・後が怖いかもよ?」

 「いやその・・・既に怖いかも。」

 「まぁ、失礼ねー。」


 まぁそんな気は毛頭無いんだがな。カネなら結構持ってきたし。

 けどまぁ、こないだの買出しでもイマイチ掴めなかった貨幣価値が掴めたのは良し。


 「それで、二人の登録なんだけどね。」

 「あ、はい。」

 「明日の、あのバカップルの結婚式でね、町長が二人を名誉町民として発表するから、  その後でウチに来て。」

 「結婚式で発表するんですか?」

 「もうみんなにバカップル認定されてるのか、あいつら。」

 「明日は町民のほとんどが参列するからね。

  何かの発表には丁度良いの。

  それにあのバカップルは、元々みんなに好かれてたしね。」

 「はぁ・・・まぁあいつらは見てると和みますからねぇ。」

 「でしょ?あーまたやってるなー、しょーがねーなー、な感じで、生暖かく見守られてたのよ。」

 「生暖かく、だったんですか。みんな?」 

 「とーぜんみんな。」

 「ですよねー。」


 強く生きろよ、二人とも。生暖かい視線に包まれて。




 結婚式は盛大だった。いやもうただの祭りだな。

 町中がドンチャン騒ぎしてる感じ。

 新郎新婦なんて、式次第が終わった途端、どこに行ったのか判らなくなる始末。

 新婦はまぁ、ニノサムを初めとする女友達たちに、やっかみ混じりの祝福を受けてただけだが、

 新郎はもう、やっかみどころか妬まれたっぽくて、服なんてズタボロにされていた。

 まぁ見た目も性格も悪くないもんなー、アリサ。

 クレアが居なきゃ、俺も参加したかもな、新郎いじめ。


 そんな中、俺らは壇上に呼び出され、アリサたちを救った経緯とか熊狩りの功績とかを讃えられ(かなり美化&誇張されてたんだが)、

 町長直々に名誉町民に認定された。

 物凄い歓声と拍手にちょっとビビった。


 その後は、あろう事か俺らが新郎新婦と同じ目に。

 いやクレアは良いよ、クレアはさ。

 なんで俺こんなボコボコにされにゃイカンのよ。


 あんな美少女と! 二人旅だと! 許せん! 天誅! 氏ネ!


 気持ちは解るがな、逆の立場だったら俺もやるだろうしな。

 ただな、酒が入ってる事もあるんだろうが、もうちっと手加減しろっての。

 痛いっつーの!

 ぬぅ、俺がキレたら死人が出るしな、ここは逃げるしかあるめぇ。


 

 「逃げたぞ!」「追え!」「俺まだ殴ってねー!」「コ□ス!」


 こ、こいつら・・・最後になんかアブネー台詞とか聞こえたぞ。



 「ふっ、俺を捕らえようなど、1万年早いわ。」

 「その割りに、服とかボロボロじゃないですか・・・。」

 「最初はなー、ただのやっかみだったんだぞ。お前のせいだ。」

 「え?私のですか?」

 「お前、俺の事訊かれた時、夜が一番強いです!とか言いやがったろ。」

 「え?あ。あー・・・キオクニアリマセン。」

 「あの一言で、やっかみは殺意に昇華しやがったんだからな。」

 「あ、あははははは・・・。」

 「・・・」

 「ごめんなさい・・・以後気を付けます・・・。」



 「おっちゃーん、来たぞー。」

 「マスターと呼べ。・・・また随分ボロっちくなったな。」

 「男の嫉妬ってカコワルイ。」

 「諦めろ。嬢ちゃんみたいな娘っ子、お前如きにゃ勿体無さ過ぎるわ。」

 「んー、まぁそれは認める。」

 「そ、そんな・・・私なんて///」

 「お前な、謙遜も過ぎるとただの嫌味になるからな。」

 「小僧の言う通りだ。まぁ高慢よりゃマシだがな。」

 「じゃ、じゃぁどうすれば?」

 「卑下も自尊もしなきゃ良いのさ。」

 「そうそう。褒められたらありがとうって言ってりゃ良い。私なんてとか言うなって事だ。」

 「はい・・・そうしますね。」

 「嬢ちゃんは素直で良い娘だなぁ。本当にこいつにゃ勿体無いわい。」

 「羨ましいだろー。」

 「このガキャ・・・。」

 「お父さんっ!いつまでサボってるの?」

 「えっ、いや、サボってるわけじゃ・・・。」

 「全く・・・ユーキ君たちが来るとはしゃぐんだから・・・。」

 「だっ、誰がはしゃいで」「お父さん?」

 「ぐっ・・・後は任せたぞ、ジュリ。」

 「はいはい。」

 「なんか、寂しそうです。ガルさん。」

 「あー、良いの良いの。ユーキ君たちとじゃれたいだけなんだから。」

 「はぁ?いや、クレアを可愛がるのは分かりますけど、俺も?」

 「お父さんねー、息子が欲しかったらしいんだけどね、生憎産まれたのは娘だけでねー。」

 「あー、そーゆー事ですか。って、ジュリさん姉妹いるんだ?」

 「居るわよー。もう片付いちゃった姉がね。」

 「お姉さんか・・・。」

 「うふふふ・・・残念そうですね、ユーキさん?」

 「いいいいい、いや、別にそーゆーわけじゃ無いぞっ!」

 「はぁ・・・ホント仲良いわね貴方たち。妬まれても仕方無いわよ?」

 「いやもう、今日は散々でしたよマジで。」

 「見れば判るわよ。その格好だもんねぇ。

  あれでしょ?クレアちゃんが男どもを煽るような事言ったんでしょ?」

 「え?あ、あぅ・・・。」

 「ユーキ君を盗られたくない気持ちも分かるけど、あんまり縛ろうとしちゃダメよ?

  縛ろうとするほど逃げちゃうんだから、男ってのは。」

 「な、なるほど・・・。」

 「あのー・・・男の前でそーゆー話は・・・。」

 「それもそうね。クレアちゃん、続きはまた今度ね。」

 「はいっ!」


 いや、あんましクレアに吹き込まないで頂きたいんですがジュリさん。

 俺が追い詰められるんですよね?いや追い込まれるのか?

 俺ピーンチ!


 「じゃ、ここに指押し付けて。」

 「はーい。」「はい。」

 「んっと。おっけー。んじゃ手続きしてくるから待ってて。」

 「へーい。」


 待つ事30分。


 「はい出来ましたー。確認してみてー。」

 「ういっす。」「はぁい。」


 『俺のカード』


 姓名 :ユーキ・ノース

 種族 :人間

 出身 :ルベル

 職種 :剣士

 ランク:E


 『クレアのカード』


 姓名 :クレア・ヒギンズ

 種族 :人間

 出身 :ルベル

 職種 :魔導師

 ランク:E


 「魔力とか記載されないんだ・・・。」

 「あー、うん。

  実はね、魔力の少ない人を差別するような一派があってね・・・。」

 「どこにでも居るんですね、そういう下らない人種って。」

 「ホント下らないよね。私もそう思うわ。」

 「で、そーゆーヤツに限って、魔力以外取り得が無いんでしょ?」

 「そーなのよ。全くその通り。」

 「?どうしてそうなんですか?」

 「簡単さ。魔力しか威張れるモノが無いから、それだけを主張する。

  無能な王侯貴族が、殊更家柄や血筋を自慢するのとおんなじ。」

 「鋭いわねー、ユーキ君てば。ホントに17歳?」

 「ぐふっ!ど、どーせオヤジ顔ですよ俺は・・・。」

 「ありゃ、急所だったんだ・・・。」

 「はい。ユーキさんの数少ない弱点です。」

 「はぁ、はぁ・・・ところで、俺らランクがEなんすけど?

  それに出身地ここになってるし・・・。」

 「あら、復活早いわね。

  ランクは当然よ。爪長を軽く倒せるなら、普通Bクラスよ?

  ただいきなりだと怪しまれるからね、Eにしといたの。

  出身は、隠しておきたいんでしょ?二人とも。」

 「・・・なんつーか、それで良いんですか?

  聞いてると、俺らスンゲー怪しいんですけど?」

 「確かにね、出身も経歴も不明で、しかもやたら強い。

  怪しんだらキリが無いわ。と言うか怪しい事だらけよ。

  でもね、二人とも人間としては信用に値する。

  少なくとも私と父さんはそう思ってる。

  多分この町の人たちも。

  だから、ね・・・。」

 「ありがとうございます・・・話せる時が来たら、ちゃんと説明します。約束します。」

 「ええ。その時を待ってるわ。ほら、クレアちゃん、泣かないで。」

 「ひっく、えっく・・・だ、だってぇ・・・。」

 「こいつ・・・1人暮らしが長かったから・・・いや俺もかな。」

 「そう・・・落ち着くまで、ここに居て良いからね。」

 

 俺は黙って頭を下げた。


 人の親切とか優しさとか、随分味わって無かった気がするなぁ。

 いや・・・俺が気付いて無かっただけかもな。

 違う・・・拒絶してたんだな。

 クラスでも、俺に話しかけてくれたヤツ居たもんな。俺がシカトしちゃったんだよな。

 どうせすぐ転校するだろうって理由で。

 あいつらには悪い事したなぁ。ごめんな。


 「ユーキさん・・・。」

 「ん?」

 「私たち・・・この町の人たちに、どうやって恩返しすれば良いんでしょう?」

 「それは思い上がりだな。」

 「え?」

 「ここの人たちは、恩返しして欲しくて俺たちに親切にしてくれたと思うか?」

 「あ・・・それは・・・。」

 「誰が言ったか忘れたけどな。

  誰かに親切にされたら、自分も誰かに親切にすれば良いのさ。」

 「誰か・・・ですか?」

 「俺たちがどこかの誰かに親切にしてさ、その噂とかがこの町に届けば、

  多分それだけで、ここの人たちは喜んでくれるよ。」

 「そう・・・ですね。」

 「俺たちはもう、ここの出身なんだぜ?

  故郷の名を辱めるような事は出来ないし、したくもないだろ?」

 「はい!」


 「聞いちゃった~♪」

 「げっ!」「えっ?」

 「カッコ良い事言うわねー、ユーキ君てば。」

 「伊達にオヤジ顔じゃないって事ですよ・・・多分。」

 「・・・実はホントにオヤジなんじゃないの?30ぐらいサバ読んでるとか。」

 「なっ!・・・30・・・って事は、47?・・・Noォォォォォッ!」

 「あらら・・・ここまでダメージ入るとは・・・。」

 「ユーキさんをここまで・・・ジュリさん、Sですね?」

 「さぁ?なんの事?Sってなぁに?」

 「うっわぁ・・・。」

 「うっわぁ、って何かしら?歳考えろとか言いたいのしら?クレアちゃん?」

 「ひ、ひぃっ!」

 「・・・その辺にしとけジュリ。嬢ちゃん泣かすな。」

 「お父さん・・・べ、別に泣かしてるわけじゃ・・・。」

 「大体、き遅れて30間近なのは、お前じしnグボベァっ!」

 「お・と・う・さ・ん?

  だ・れ・が・い・き・お・く・れ・ですって?」

 「おおおおお落ち着けジュリ!話し合おうっ!」


 俺がダメージから回復すると、なんかズタボロのおっちゃんが床に転がっていて、

 ジュリさんは居なかった。


 「・・・命拾いしました。」

 「俺が錯乱してた間に、何があったんだ?」

 「・・・ジュリさんを怒らせてはいけません。」

 「・・・なんとなく、だが・・・分かったような気がする。」

 「お互い、気を付けましょう・・・。」

 「あ、ああ・・・。」


 クレアをビビらせるって・・・ジュリさん恐るべし!

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