現状
心に深く消えない傷を負い、不貞寝を決め込む俺を放置して、
娘どもはなんかきゃいきゃい楽しそうである。
まーねー。年頃の娘っ子が4人も居ればねー。静かにしてろってのが無理だよねー。
「えー、ユーキって記憶喪失なの?」
「うん。私の家の近くで行き倒れてて・・・。」
なんかそーゆー設定になったらしいんだが、相談ぐらいしろクレア。
あと呼び捨てとは生意気な。後で覚えてろアリサ。
「名前とかは憶えてたの?」
「今のとは違うけど、着てた服にね。」
「そうなんだー。」
うむ。ニノは鋭いな。さらっと返せるクレアもアレだが。
「それで・・・お二人はどこまで進んでるんですか?」
「うふふ・・・内緒♪」
サム・・・ロリの分際でそう来るか。
クレア、隠す気ゼロだな。
「うわっ!なにこの敗北感っ!クレアが輝いて見えるっ!」
「オーバーですね・・・でもその、負けた気は凄くしますね・・・。」
「大人の階段・・・早く登らないと負けっぱなし。」
男ならアリだと思うんだが、女の子だと微妙な台詞だな。
「ユーキさんはダメですからねー?」
「判ってるってば。」
「アリサには、ケンが居るもんね。」
「///あああああ、あんなヤツ関係ないでしょっ!」
「ツンデレさんなんだね。」
「いっつもじゃれ合ってる。」
「今回の依頼だって、ケンの誕生日プレゼント買いたくて受けたんだもんね。」
「ちちちち違うわよっ!///」
「はいはい。」
元々いじられキャラだったんだなアリサ。強く生きろよ。
「あ、そうだ。私たちも冒険者になろうと思ってるんですけど、どうすればなれます?」
「えーと、街の冒険者ギルドに登録するだけですが。」
「身分証とか無いんですよ。私も1人暮らしだったので。」
「ウソ・・・ずっと?」
「両親が早くに亡くなってしまったもので・・・。」
「あ、ごめん。」
「でも身分証が無いと、保証人が必要になる。」
「それなら、あたしたちがなればいーじゃん。」
「無理ですね。私たちFクラスじゃ実力も信用も足りません。」
「うっ。」
「あの、Fクラスって?」
「冒険者のランク。Fから始まってAまで。その上にSがあるけど。」
「つまり私たちは最低レベルなの。保証人としては、せめてCクラス以上じゃないと。」
「頼めるような知り合いも居ないし・・・ごめんね。」
「いえいえ、貴女たちのせいじゃ無いですよ。身分証が無いのがそもそも・・・。」
「まあでも、あたしたちと一緒に居れば、街には入れるから。」
「それだけでも大助かりです。」
「でも、あの子たち・・・龍は隠しておくべきです。」
「うん。龍の身体は魔法具の材料として最高級。絶対狙われる。」
「あ、あたしたちは絶対言わないから、安心して!」
「ありがと。それは信じてる。」
「聞いてましたよね?」
3人娘がようやく寝入ったところで、クレアが傍に来た。
ちなみに結界が張ってあるので安全である。
「ああ。やっぱこいつらはマズいか。」
当然のように俺の寝袋に潜り込んで寝てる白黒。
「アレに入ってもらうしか無さそうですね。」
アレってのは、まぁ四次元ポ○ットである。
詰め込もうと思えばそれこそ何でも入れられるんだが、俺らのは空っぽに近い。
隠れ家にあった貨幣と、食い物や薬をそれなりに入れてるだけだ。ジャーキーは無くなったがな。
「けどアレ、生き物大丈夫なのか?」
「それが判らないのが問題なんですよね・・・。」
「そんなんで死なせたくないしなぁ。」
「どうしましょう?」
「置いて行こうにも、付いてきちゃうだろうしなぁ。」
「ですねー。」
「リュックに詰めるか・・・」
「大人しくしててくれますかね?」
「大丈夫だろ?利口だからな、こいつら。」
「それしかないですねー。」
「悪いが、その分俺の荷物はお前が持ってくれ。」
「むー。か弱い女の子に荷物持たせて、自分はこの子たちと仲良く行くんですね・・・。」
「あのな・・・。」
「ふーんだ。」
ふと違和感を感じる。見られてはいないが・・・聞き耳が6つ立ってるな、これは。
(おい。)
(起きてますね。)
(興味津々だなありゃ。)
(流れからして、エッチ突入の前フリって感じでしたからね。)
(狙ってたんだろ、お前?)
(ユーキさんだって、その気だったクセにぃ。)
(否定はせんが・・・この状況じゃなぁ。)
(うぅ・・・今日は諦めて寝ますか・・・。)