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初遭遇

 出発は夜にした。

 理由は簡単。見られないようにする為。


 取り敢えず現状では、魔王の娘たるクレアの存在は知られていないか、忘れ去られてる可能性が高い。

 もし発覚した場合、再度不幸な異世界人が勇者として召喚されるのは大いに有り得る。


 それは避けたい。彼(彼女かも知れんが)にとっても俺らにとっても、何ら益は無いんだから。

 で、クレアの提案で、俺らは人間のフリをする事に決定。

 俺は元々人間のハズなんだが、彼女の脳内では、既に人外認定されてる模様。

 か、悲しくなんかないんだからねっ!


 自力で空を飛び回る人間はまず居ないんで、夜の出発ってわけ。



 召喚装置を破壊するのが第一目標だが、まずは情報が欲しい。


 何せクレアの知識は150年前の物だ。

 現在の国際情勢とか、種族間の関係とか、皆目判らんてのはマズい。

 

 お約束の冒険者ギルドが存在するらしいんで、まずはそれに加入して情報集めようって事になった。

 まぁ、俺が冒険者やってみたかった、ってのが最大の理由なんだけどな!


 で、格好も冒険者っぽくしたくなって、ほぼ黒に近いグレーで全身固めてみた。

 動きやすいように、現代の戦闘服っぽいのをクレアに作ってもらった。

 太い革ベルトに村正手挟んでるのはちょっとシュールかも。

 あとは漆黒のマントね。なんかコレ無いと寂しい気がするのは俺だけ?


 クレアは、濃い紫のゆったりしたワンピース。魔法使いっぽく。

 これにまた長いローブと魔女ハット。あーんど杖。うむカンペキだな。

 本人はミニスカ系つーか、露出度高めで動きやすいのが良かったらしいんだけどな。

 俺が他の男に見せたくない、みたいな事仄めかしたらゴキゲンになった。

 可愛いいヤツめ。


 

 「とうっ!」「えいっ!」

 「おー、飛べるってのは気持ち良いなー。」

 「うふふ、はい!」

 「けど寒いな・・・。」

 「・・・はい。」


 山々が雪に覆われてる季節。しかも高度3000。寒いよそりゃ。

 エアカーテンみたいなの展開してるから、風切ってるよーな寒さは回避してるけど、

 気温自体が低いからさー。マジ寒い。


 「平地に出たら、とっとと降りよう。」

 「ですね。」

 「あ、鼻水出てきた・・・。」


 高山帯は、30分ぐらいで終わった。

 眼下は鬱蒼たる森林に変わる。針葉樹林かな、と思ったんだが違った。

 高度を下げたらそれほど寒くなかったし、広葉樹林だった。

 温帯って感じだな。寒かったのは高度の所為か。

 

 「真冬ってわけじゃないみたいだな。」

 「ですね・・・多分雪解けの頃でしょうか。」

 「だなー。これから冬になる感じじゃねーな。」

 「そういえば、山脈の北と南では随分気候が違うそうです。」

 「だろうな。」


 こっちでもフェーン現象とかあるんだろうか?

 まぁあれは海流とかも関わってくるしなぁ。


 ふと気付くと、何か物音がする。動物の鳴き声っぽいぞ。

 あと何やら争ってる気配。生存競争かのぅ。

 でも音からして小型だな。大して危険は無さそうな。


 「見に行ってみよう。」

 「え?危なくないですか?」

 「いやさ、こっちの動物って見た事無いから。好奇心。」

 「もう・・・緊張感無さ過ぎですよ?」



 「アレって・・・・。」

 「ドラゴンの子供ですね。2匹とも。」

 「やっぱドラゴンなのか。しかし何とも・・・。」

 「可愛いいですね~♪」


 目の前の空き地で、2匹のドラゴンが争っている。

 いるんだが・・・両方とも子犬程度しかないし、「きゅー!」とか「みゅー!」

 とか鳴きながら取っ組み合ってる姿は、じゃれ合ってるようにしか見えん。


 「ケンカなのか、あれ?」

 「あそこにアカネズミが死んでます。あれを取り合ってるみたいですねー。」

 「しかし白と黒かよ。あれって別の種類だよな?」

 「白龍も黒龍も一般種ですから、会話は出来ませんね。

  ただしその辺の犬なんかよりは余程賢いです。」

 「うーむ・・・欲しい。」

 「龍をですかっ?!・・・あ、気付かれちゃいました。」

 「あちゃ。」


 2匹の龍が、取っ組み合った体勢のまま、こっちを凝視してる。

 黒いのは、いかにもドラゴンな感じだな。すべすべ。

 白いのは毛皮なようだ。もふもふ。

 

 獲物を争ってたんなら・・・


 「おいで~、干し肉あげますよ~♪」


 不覚!クレアに先を越されたっ!


 「ほ~ら、ジャーキーだぞ~。コンビーフもあるぞ~。ただの干し肉より美味いぞ~♪」

 「あー!それは私の大好物なのにっ!」

 「あ、そーなのー、ふーん。」

 「知ってるくせにっ!棒読みがムカつくぅっ!」

 「こらこら、大声出したら、あの子たちが逃げちゃうよ~ん。」

 「くぅぅ・・・この恨み晴らさでおくべきか・・・。」

 「どこで覚えたんだよ、その台詞・・・。」


 俺らの骨肉の争い?を不思議そうに眺めてた2匹が、ちょこちょこと寄ってくる。

 干し肉の匂いをクンクン嗅いだ後、ジャーキーの匂いを嗅いで・・・

 カプっと咥えてはむはむやりだした。


 おおぅ!ナイス!


 「はっはっはっ!やっぱこっちのがいーよなー♪」

 「むぅぅぅぅぅぅ。」

 「よしよし。腹ペコ魔女にはコンビーフをあげようねー。」

 「私まで一緒ですかっ!」


 とか言いながら食うなよ。ってか俺は残り物の干し肉なんだが。


 ふと気付くと、2匹がじぃぃ~~~っと俺を見つめてる・・・。


 「も、もっと欲しいってか・・・。」


 しょうがねえな、とか言いつつジャーキーをリュックから取り出して与える。


 「私のジャーキー・・・ぐすん。」

 「泣くなよ・・・。」

 「それにしても、ドラゴンとはいえ、こんな子供だけなのか?親はいねーのかな?」

 「こんな小さくてもドラゴンですから、この辺じゃ無敵だと思いますよ。」

 「そんな強いのか?こいつら。」

 「強いですよー。だから親も放任なんです。」

 「うーむ・・・こいつらがねぇ・・・。」


 腹一杯になったのか、いつの間にか2匹とも俺の膝の上で丸くなってるし。


 「懐かれたっぽいんだけど、ドラゴンてこんななのか?」

 「有り得ませんね。普通の人間なら殺されててもおかしくありません。」

 「マジかよ。」

 「一般種の龍は肉食ですから。」

 「人間もエサか。」

 「通常は人間が近付かないような森の奥とかにしか居ませんから、被害とかはあまり無いようですけど。

  出会ってしまっても、好き嫌いが激しいみたいなんで、よっぽど空腹でなければ大丈夫だとか。」

 「ふーん。なら、こいつら街とか連れてっても平気かな?」

 「あまり怖がられる事は無いと思いますよ。別の心配はありますけどね・・・。」

 「まぁなぁ。珍しいのは間違い無いもんな。色々狙われそうだなぁ。

  連れてくのはやめたほうが良いか・・・。」

 「そう思いますけど、連れてく事になるでしょうねー。」

 「やっぱそう思う?」

 「だって、この子たちが勝手に付いてきそうですしね。こんなに懐いちゃって。」

 「まぁ、悪い気はせんなぁ・・・。」

 「くぅぅぅ・・・なんで私には懐いてくれないのぉ?・・・うぅ。」

 「それはアレだな。安全のためだな。」

 「どーゆー意味ですかっ!?」

 「だってお前、寝相悪いし。」

 「はぅっ!」

 

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