これは想定外かも
ドアを開けて、外界への第一歩----
は踏み出せなかった。
だって踏み出すべき地面がねーんだYO!
3千m級と思しき山の頂上付近と思われるんだが、ドア開けたらいきなりこれかよ・・・。
見渡せば、青い空と白い雲、そして雪を戴いた山々・・・アルプスとかってこんな感じ?
「だぁぁぁぁっ!寒いっ!」
「と、取り敢えず戻りましょうっ!」
バタン。
「ぬぅぅぅ・・・まさかこんな場所とは・・・お前も知らなかったのか?」
「すみません、いつも転移魔法だったもので、場所は知らなかったんです。
あ、でも・・・」
「でも?」
「一度だけ、子供の頃にこのドアから入った記憶があるんですが、確か洞窟の突き当たりだったような・・・。」
「ふーむ・・・そいや、親父さんもすぐ外でバトってたんだよな?」
「私の記憶違いで無ければ、そうです。」
「それが正しいとすると・・・吹っ飛んだんだな、山の一部が。」
「え?」
「親父さんと勇者のバトルで、この山の結界より向こう側は吹っ飛んだんだろうと思う。
そうでも考えないと、あんなバカ高い垂直の断崖てのは地形としても不自然過ぎる。」
「なるほど・・・。」
「お前がここに閉じ込められちゃってから、人間は攻めて来たか?」
「いえ、一度も。」
「やっぱりな。
つまり昔は、ここまで人間が登って来られる道があったわけだ。」
「でも、龍騎兵なら飛んで来られますよ?」
「ドアに気付いて無いのかもな。小さいから麓からも見え難いだろうし。
それに見た限り、周りは高山ばっかで、人が住んでる気配も無いしな。
唯一近くまで来たのは勇者御一行だけだろ。
連中も山ごと下に落ちちゃったなら、無事じゃ済むまい・・・。」
「って事は、誰もここを知らないわけですか?」
「親父さんが、よっぽど信頼してた友人とかには教えてるかもな。
でもそういう人なら余計黙ってるだろうし、ここはほぼ知られて無いんじゃないかな。
あ、ドアに偽装掛けておくんだった。」
「それならさっき掛けました。」
「お前、時々高性能だな。」
「むー。時々なんですかぁ?」
「朝は役立たずだしぃ♪」
「あぅ・・・。」
「しっかし、あそこ降りるのは大変そうだよなぁ。」
「飛べば良いじゃないですか。ユーキさんだって多分飛べると思いますし。」
「俺もかぁ?って、お前飛べるの?」
「飛行魔法は簡単ですよ。ただ物凄く魔力使うんで、人間には無理みたいですけど。」
「・・・訓練場で練習してからにする。ぶっつけ本番で失敗したらマジ死ねるから。」
「ユーキさんなら、落ちても平気だと思いますけど?」
「お前、俺を何だと・・・。」
やってみました飛行魔法。
浮け!って念じたら浮きました。勢い良すぎて天井に激突したのは仕様です。
その後クレアの膝枕で治癒してもらったからプラマイゼロだな。
しかし膝枕(美少女or美女限定)って何であんなに癒されるんだろうか・・・。
「ねっ、簡単だったでしょう?」
「うーむ・・・まぁ確かに簡単だが・・・いきなり飛べるとか・・・
一体俺はどこまで人外になるんだろう?」
「ユーキさんが強いほうが、私は嬉しいですけど。」
「なんで?」
「だって・・・その・・・護って欲しいな、なんて・・・///」
「・・・か弱い女の子なら護り甲斐があるんだがなー。」
「私はか弱い女の子ですっ!」
「そーゆー事にしとくよ。」
「意地悪っ!」
「なぁ、地図あるか?」
「はい。」
「ふーむ・・・これが大陸ね。で、魔王城ってどこにあったん?」
「魔王城はここです。この右下の黒森島ですね。」
「って、大陸じゃねーじゃん。さっき見た景色はとてもじゃねーが島とは思えんぞ?
この地図で見る限り、この中央山脈あたりっぽい気がするんだが。」
「私もそうだと思います。」
「としたら、親父さんは何でここの近くで闘ったのか・・・。」
「転移魔法陣があったのかも。イザという時の・・・。」
「アリだな。
ところが追い掛けられちまって・・・ってとこか。」
「魔族の魔法陣は、魔族以外にはそうそう簡単には・・・あ、勇者なら・・・。」
「勇者も俺みたいにバケモノちっくだったと考えれば、それだろうな。
だとしたら、ここが知られてる可能性はもっと下がるぞ。
勇者だってパーティ組んで来たんだろうが、転移出来たのが勇者だけだったなら・・・。」
「他のメンバーは、黒森島に居残りだった事になりますね。
それならここを知るはずが無いですね。
あ、でも、もし勇者が生きてたなら、誰かに教えたんじゃ?」
「勇者が生き残ったとしても、多分言わないと思うよ。
彼が喜んで闘ったとも思えないしな。
魔族が悪鬼の如き存在だったりしたら、義憤に駆られてって事も有り得るけど、そうじゃ無いし。
身勝手な理由で自分を利用してるだけの奴らになんか、まず言わないね。
それに、すぐ殺されただろうしね・・・。」
「えっ!?」
「考えてもみろ、魔王を倒せる存在なんだぞ。
しかも自分たちは、元の世界に帰すって騙してたんだ。
それが嘘だとバレてみろ、魔王に匹敵する強敵誕生だぜ?
生かしておくわけが無い。」
「・・・人間って、どこまで醜いんでしょうか・・・。」
「どこまでも、さ。でもそれで生き残って来られたんだ。」
「え?」
「この世界で会話が出来る種族でさ、単体で闘って人間より弱いのって居るのか?」
「・・・居ないかも・・・ゴブリンが同等なくらいで。」
「だろ?人間はさ、悪知恵で生き残り、卑劣さで繁栄して来たんだよ。
腕力でも魔力でも最下等の人間には、他に道は無かったんだから仕方ないんだけどな。」
「ユーキさんの世界でも?」
「種族とかは違うけどね、まぁ同じだな。特に権力者や金持ちにその傾向が強い。」
「イヤですねー。」
「俺もまだ多分いちおー人間だけどな。お前の事騙して弄んだあげくに捨てるかもよ?」
「捨てられても付いていきますから問題無いです。」
「む・・・。」
「それに・・・もう毎晩弄ばれてますから///」
「う。」
「あ、そうだ。
こっちの人間の女性相手にエッチしちゃダメですよ。
魔族の私があんなになっちゃうんですから、人間だと多分・・・。」
「多分?」
「命に関わるかと。」
「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!」
「・・・物凄い凹み方ですね・・・。」
「うぅ・・・まさかこんな理由でハーレムフラグが折られるとは・・・。」
「ハーレム?・・・私だけじゃ不満なんですねっ!?」
「いや、お前に不満は無い!無いが・・・けどやっぱ浪漫だしぃ♪」
「むぅぅぅぅ・・・堂々と浮気予告・・・。」
「しかし人間の女の子が全部ダメってのは・・・大丈夫そうなのは?」
「うーん、龍族とかエルフとか、長命種なら多分・・・って!何教えちゃってるの私ぃぃぃっ!!」
「はっはっはっ!クレアは素直で良い娘じゃのぅ♪」
「くぅぅぅぅ・・・あまりにもナチュラルに訊かれてつい・・・私のバカ・・・。」
「よぉし!長命種の巨乳美少女の皆さん!待っててね~♪」
「エルフの女性は美人揃いですけど、胸は控えめですよ。」
「ぬぅっ!巨乳エルフは居ないのか?」
「絶対居ないとは言い切れませんけど、そもそもエルフ自体少ないですし。」
「くっ、龍族は?」
「龍族は良く知りませんが、人化出来るほどの高等種は滅多に居ません。」
「なんか既に詰んでる気がしてきたぞ・・・って、やけに素直に教えてくれてるな?」
「負ける気が無いからですよ。正妻の座は譲りません。」
「正妻って・・・側室なら良いのか?」
「・・・どうせ止められそうも無いですから。獣欲魔神ですし。」
うーむ・・・ハーレムOKって事だよな?
けど何か負けてるよーな気がするのは何故だ?
無意識に許可を求めてる時点で負けなんだよ。ユーキ君。