民事裁判開廷!
初の裁判開廷ですっ。
楽しんでもらえると
光栄です;
ドーリィが振り向くと、そこには小さな男の幼子に当たり散らす筋肉質な輩がいた。
どうやらどちらかが片方にぶつかったらしい。
「いってーなてめー! 俺になんか文句でもあんのか!!」
「あ……すっ、すみません……」
「どうしたの?」
幼子を哀れみ、ドーリィはその怒鳴り散らす輩に《審理》を問い正すことにした。
「どーもこーも、このきたねぇクソガキがぶつかって来やがってよ! 謝りもしねーんだ!!」
「さっきその子謝ってなかった?」
「なっ……そ、それによぉ! こいつがさっきぶつかった時に金盗みやがったんだ!!」
「!? そんな……」
「ほら、こいつも否定してねぇしよ」
見ていたドーリィにはそんなことが全くの嘘だと知っていたが、被害者の本人が気弱で話にならない。
-仕方ない……-
「ねぇ、これは《訴訟》と取って良い?」
「は?」
「良いよね。
……『只今より、ドーリィ・アウディの名の下、ここに民事裁判を【開廷】する!』」
ドーリィが開廷文を唱えると、三人を囲む巨大なバリアと陣が出現した。
これらは裁判をしている間だけ一時的に出るようになっており、この中にいる裁判官以外の人間は外に出られなくなるのだ。
これを解くには、ドーリィが裁判を放棄するか裁判をして判決か和解をし、罪に合う罰を与えれば消滅するようになっている。
「お前裁判官だったのかよ!」
「そうさ」
「しかもただの裁判官じゃない!! 切り揃えられた漆黒の髪に血のような眼……ジャスティス裁判官の中でもトップクラスの力量を誇る【死に神】ドーリィ・アウディ……!!」
「ご説明どーも」
「何でこんな所に……」
信じられないという顔をする輩に深いため息をつき、ドーリィは仕方なさそうに答を言った。
「仕事だよ、し・ご・と。僕だってこんなへんぴな所に来る予定なんてなかったさ」
「クソ……っ」
「『では、裁判を始めます。原告人クラース、被告人イヴの罪を述べよ』」
ドーリィは一気に目付きを変え、その赤い瞳を更に赤く輝かせて輩……クラースを睨みつけた。
何故彼が双方の名前が分かったのか、二人には理解できなかった。
この能力は他の裁判官も持っている訳では無い。ドーリィの目だけがもつ特殊能力なのだ。
彼はその両目……ヘルズキュアを裁判を始めた時だけ発動するようにしており、ドーリィには見ただけで相手の情報が頭に流れ込んで分かるようになっているのだ。