ー第3項 荒野に灯る希望の光に導かれ、王国を追われた亜人や職人たちが集まり始め、最初の民となる話
第3項 荒野に灯る希望の光に導かれ、王国を追われた亜人や職人たちが集まり始め、最初の民となる話
数日後。
荒野に異変が起きていた。
セシリアたちが浄化した土地から、目に見えない「清浄な気配」が風に乗って周囲へ広がっていたのだ。それは、行き場を失った者たちにとっての灯台の光のようなものだった。
「……おい、あそこを見ろ。煙が上がってるぞ」
「死の荒野だぞ? 誰か住んでるのか?」
最初に現れたのは、ドワーフの親子だった。
彼らは王国で「亜人は不浄だ」と迫害され、鉱山を追放されて放浪していたのだ。飢えと渇きで倒れそうになっていた彼らは、吸い寄せられるようにセシリアの小屋へと辿り着いた。
「だ、誰か……水を……」
玄関先で倒れたドワーフを見て、セシリアは眉をひそめた。
本来の彼女なら「薄汚い」と敬遠したかもしれない。だが、今の彼女は「生き汚さ」を知っている。
「ノワール、水を出して」
『あ? 俺は水道じゃねえぞ。……まあ、こいつらの「絶望」を食う代金代わりなら出してやるか』
ノワールが彼らの頭上を漂うと、ドワーフたちの顔から死相が消え、代わりに彼らが持っていた水筒に清水が満たされた。
水を飲み、息を吹き返したドワーフたちは、セシリアに平伏した。
「あ、ありがとうございます! 女神様!」
「女神じゃないわ。私はセシリア。この土地の領主よ」
セシリアは堂々と宣言した。
「あなたたち、腕に自信はある? 鍛冶ができるなら雇ってあげる。報酬は衣食住と、理不尽な迫害からの保護よ」
ドワーフたちは涙を流して喜んだ。
彼らだけではない。
翌日には、不当解雇された人間の大工が。
その翌日には、魔法の才能があるのに「魔女」と呼ばれたエルフの少女が。
王国で居場所をなくした有能な者たちが、次々とこの荒野へ集まってきたのだ。
彼らは皆、何かしらの技術を持っていたが、王国の腐敗した貴族社会では評価されなかった者たちばかりだった。
セシリアは彼らの才能を見抜き、適材適所に配置した。
「あなたは家を建てなさい。あなたは井戸を掘って。あなたは……そうね、私のドレスを仕立てなさい」
かつての「悪役令嬢」としての冷徹な指揮能力と、ノワールによる「ネガティブ感情の除去」が組み合わさり、集落は爆発的な速度で発展していった。




