ー第2項 労働の苦しみすら魔王に食べさせ、疲れ知らずの令嬢が魔法と開拓チートで拠点を爆速建設する話
第2項 労働の苦しみすら魔王に食べさせ、疲れ知らずの令嬢が魔法と開拓チートで拠点を爆速建設する話
拠点作りは、想像を絶するスピードで進んだ。
通常、家を一軒建てるだけでも数ヶ月はかかる。ましてや荒野の真ん中での開拓など、常人ならば過労で倒れるレベルの重労働だ。
だが、セシリアにはノワールがいた。
「土魔法、生成。石材、加工」
セシリアは貴族として高度な魔法教育を受けていた。土を操り、石を切り出し、即席の建材を作る。
魔力は有限だ。精神的な疲労も溜まる。本来なら一時間も作業すればへたり込むところだ。
『お、疲れてきたか? その「ダルい」「もう無理」っていう感情、もらうぞ』
ノワールがセシリアの頭に噛み付く(甘噛み)。
チュウウゥゥ……。
セシリアの脳裏に浮かんだ疲労感やストレスが、ストローで吸われるように消えていく。
「……あれ? 身体が軽い」
数時間ぶっ通しで魔法を使っていたはずなのに、朝起きたばかりのような爽快感だ。
『お前の「疲労(乳酸)」と「精神的摩耗」は俺が食った。カロリー(魔力)はお前の中に残ってるから、あと十時間は働けるぞ』
「十時間……? ブラック企業も真っ青ね」
セシリアは苦笑したが、手は止めなかった。むしろ、働けば働くほど頭が冴え渡っていく奇妙な感覚だった。
日暮れ前には、小さな石造りの家が完成していた。
簡素だが堅牢で、セシリアの美学により優雅なアーチ状の窓枠まであしらわれている。
さらに、家の周囲にはノワールが吐き出した「浄化された土」を使って、小さな畑も作った。
「とりあえず、住む場所は確保できたわね」
完成した家の前で、セシリアは腰に手を当てた。
貴族令嬢の手は泥だらけで、爪も割れていた。だが、その顔にはかつての舞踏会では見せなかった、充実した汗が光っていた。
『へへっ、お前の「達成感」の裏にある「将来への不安」も食っといたぞ。これで今夜はぐっすり眠れるだろ』
「気が利くじゃない。……ありがとう、ノワール」
セシリアは素直に礼を言った。
この悪魔的な相棒がいなければ、今頃は荒野で野垂れ死んでいただろう。
その夜、セシリアは固いベッドの上で、泥のように眠った。
悪夢は見なかった。ノワールが寝ずの番をして、悪夢の素となる不安を片っ端からスナック菓子のように食べていたからだ。




