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ー第3項 時の流れすらも跪かせる女王の美貌。老いることを許されず、民衆の崇拝を一身に浴びて輝き続ける、生ける神としてのセシリア

第3項 時の流れすらも跪かせる女王の美貌。老いることを許されず、民衆の崇拝を一身に浴びて輝き続ける、生ける神としてのセシリア


あれから、どれほどの月日が流れただろうか。

十年、二十年、あるいはそれ以上か。

かつての王国を知る老人たちは死に絶え、新たな世代がこの国の中核を担うようになっていた。

だが、たった一つだけ、時間の流れから取り残されたかのように変わらないものがあった。


女王セシリア・オルコットの美貌である。


彼女は即位したあの日から、一本の皺も増えず、白髪の一本も生えることはなかった。

その銀髪は変わらず月光のように輝き、瞳は宝石のような鋭さを保ち続けている。

人々は彼女を「生ける神」「永遠の処女」と崇め奉った。

老いという概念すらも否定し、常に美しく完璧な存在として君臨する彼女の姿は、一種の信仰対象となっていたのだ。


「女王陛下万歳! セシリア様万歳!」


大通りをパレードする黄金の馬車。

沿道を埋め尽くす民衆は、熱狂的な歓声を上げてセシリアに手を振る。

彼らは知らない。この豊かさと女王の若さが、悪魔ノワールの魔力によって維持されている歪なものであることを。

あるいは、知っていたとしてもどうでもよかったのかもしれない。

今の生活が満たされているのなら、支配者が人間であろうと悪魔であろうと関係ないのだ。


セシリアは優雅に手を振り返しながら、その瞳の奥で冷ややかに群衆を見下ろしていた。


「滑稽ね。あんなにも熱狂して。私が指先一つで彼らの明日を奪えるとも知らずに」

「それが大衆というものでございます、お嬢様。愚かだからこそ、こうして飼い慣らす甲斐があるというもの」


御者台のノワールが、楽しげに口元を歪める。

彼もまた、契約したあの日から全く変わらぬ姿でセシリアに仕えていた。

この国は巨大な実験場であり、彼らの遊戯盤だ。

二人は盤上の駒たちが右往左往し、繁栄という名の夢に溺れる様を、神の視点から眺め続けている。


セシリアの国では、病も貧困も激減していた。

ノワールの力が土地を浄化し、作物を育て、人々の精神さえも安定させているからだ。

それは一見すれば理想郷ユートピアだが、その実態は、全権を魔女と悪魔に委ねた管理社会ディストピアでもあった。

だが、誰もそのことに異を唱えない。

思考を停止し、ただ与えられる幸福を享受する。それこそが、セシリアが世界に与えた「救済」だったのだ。

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