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ー第2項 幽閉された塔の中で響き渡る罵り合い。希望を喰われ絶望のみを残された元王子と元聖女に与えられた、死よりも惨い永遠の罰

第2項 幽閉された塔の中で響き渡る罵り合い。希望を喰われ絶望のみを残された元王子と元聖女に与えられた、死よりも惨い永遠の罰


煌びやかな繁栄を極める王都の片隅に、高くそびえ立つ尖塔があった。

『嘆きの塔』。

人々はそう呼び、忌み嫌って近づこうとはしない。そこには、この楽園の「生贄」が閉じ込められていると噂されていたからだ。


塔の最上階、鉄格子のはまった窓のない部屋。

そこには、かつて王太子と呼ばれた男ギルバートと、聖女と呼ばれた女マリアがいた。


「おい! 水だ! 水をよこせマリア! 僕は喉が渇いているんだ!」

「うるさいわね! 自分で汲めばいいでしょ! あんたなんてもう王子でもなんでもない、ただの無能なんだから!」


粗末な衣服をまとい、髪はボサボサに伸び放題の二人が、狭い部屋の中で罵り合っていた。

部屋には最低限の家具と、魔法によって無限に湧き出る水と食料だけが用意されている。

餓死することはない。病死することもない。

セシリアとノワールの呪いによって、彼らは「死ぬことすら許されない」身体に作り変えられていたのだ。


「お前のせいだ……お前があの時、聖女の力だなんて嘘をつかなければ!」

「何よ! あんたこそ、セシリアの財産に目がくらんで婚約破棄なんてバカなことしたから!」


ガシャン、と皿が投げつけられ、壁に当たって砕ける。

かつて愛を誓い合った二人の間に、もはや温かな感情など欠片も残っていなかった。

ノワールによって「希望」を完全に喰らい尽くされた彼らの心にあるのは、過去への執着と、互いへの責任転嫁、そして終わりのない現状への絶望だけ。


塔の唯一の窓からは、セシリアの治める王都の輝きが一望できた。

楽しげに行き交う人々、美しい街並み、夜空を彩る魔法の花火。

自分たちが手に入れるはずだった、あるいは自分たちが守るべきだった幸福な世界。

それを見せつけられることが、何よりの拷問だった。


「出してくれ……ここから出してくれ……!」

「誰か……私を崇めてよ……私は聖女なのよ……!」


二人は鉄格子に爪を立て、血が滲むのも構わずに絶叫する。

だが、その声は防音の魔法によって遮断され、誰の耳にも届かない。

彼らはこの狭い箱庭の中で、互いを憎しみ、呪いながら、永遠に老いていくことすら許されずに生き続けるのだ。

それが、セシリアが彼らに与えた「生きて没落する苦しみ」の完成形だった。

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