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観察者の刃と、決別

[システム通知:ステータスボーナスの使用を確認。対象:自爆]

(熱源指定、摂氏500度。形状、指向性なしの爆発的膨張。……範囲は、俺とクロコッタを含む、半径3メートル以内!)

『……了解。生存確率は40%。実行しますか?』

(やってやんよ!)


自爆のプロンプトを組んだ俺は、間髪入れずにクロコッタの方向へと突っ込んでいった。

「お前が人間なら、この攻撃をくらえば無傷じゃすまないだろ!」


『——コンパイル開始!』


右手の熱い魔力の塊は瞬く間に膨張していき、俺とクロコッタを巻き込んで爆発を起こした。


……ッ! 熱い!

 だが、思ったほどのケガはしていない。重度の火傷を覚悟したのに……どうなっているんだ?


『解説。カイト様はプロンプトに「自爆」を組み込みました。本システムの隠し仕様により、自身を代償とする行動には一時的なステータスボーナスが付与されます。今回は自動的に「耐久力」に割り振っておきました』

(なるほど、そういう裏技が……って! そんなことよりクロコッタはどうなったんだ!?)


「ギギャ……ギャウ! ギャウ!」


煙が晴れると、まともに攻撃をくらったはずのクロコッタが、体の右半分を黒焦げにしながらも立ち上がっていた。魔物になった影響で生命力が跳ね上がっているのか、半狂乱でこちらへ飛びかかろうとしてくる。

 ……が、その瞬間、クロコッタの視線が左へ逸れた。


「ひよっこが体張って頑張ってるのに、俺が何もしねぇのはないだろ」

「バルガスさん!」


「立てるか、ひよっこ? 俺が囮になる。お前はゆっくり、どでかい魔法を準備しとけ。撃つ時はちゃんと合図しろよ!」

 そう言って、バルガスは剣を構えてクロコッタの側面へと飛び出していった。


(チャッピー! 今俺たちが撃てる一番でかい魔法は!?)

『推奨:先ほど練習した炎系の魔法が最も安定しています。速度、サイズ、指向性を重点的に再定義してください』

(熱源指定、摂氏500度。速度時速60km。形状2mの円形、指向性は人差し指のさす方向!)

『プロンプト、受領。——コンパイル開始』


「兄貴!」

「分かった!」


俺の合図と共に、バルガスが瞬時に右側へバックステップで退避する。

 囮を失い、反応できずにいるクロコッタの顔面に向かって、俺は再構築した炎の魔法を一直線に撃ち放った。


「ギギャアァッ!?」


凄まじい断末魔の叫びの後、ドサリ、と嫌な音を立てて異形の獣が地に伏し、やがて完全に動かなくなった。


「はぁ……はぁ……勝った、のか?」

「——ああ。助かったぜ、ひよっこ。あんな化け物が居座ってちゃ、俺一人じゃこの森を抜けるのは無理だったからな」


バルガスが剣を下げ、ゆっくりと近づいてくる。

 その時だった。


『警告! 対象から明確な殺意を感知! 回避——』


チャッピーのアラートが脳裏に響く。

 俺は反射的に、右へ身を捩ろうとした。だが。


「そこだ」


バルガスの踏み込みの方が、圧倒的に速かった。

 いや、速いだけじゃない。俺が「チャッピーの警告を聞いてから右に避ける」という動きを、完全に予測して置いていたのだ。

 俺の回避先の空間をすくい上げるように、バルガスの剣が下から跳ね上がった。


「がぁっ……!?」


肩口から胸にかけて、熱い痛みが走る。

 致命傷ではない。だが、確実に肉を深く裂かれた。衝撃で吹き飛ばされ、俺は地面を無様に転がった。


「カハッ……なに、を……っ!」

 血の滲む胸を押さえながら睨みつけると、バルガスは剣についた血を払いながら、氷のように冷たい目で見下ろしていた。


「……やっぱりな。お前、戦ってる最中、常に『誰かの指示』を聞いてから動いてただろ」

「なっ……」

「視線が宙を泳ぐ癖、魔法を撃つ前に必ず数コンマ動きが止まる隙。そして何より、危険を察知した時に『右へ逃げる癖』。……お前と出会ってからずっと、お前のその不自然な挙動を観察してたんだぜ」


血の気が引いた。こいつは、俺が魔法の練習をしている時からずっと、『システムに依存した癖』を完璧に測っていたのだ。


「お前は異常だ。他人のトラウマを抉る声を聞いて平然とし、無詠唱で魔法を撃ち、頭の中に誰かを飼っている」

 バルガスはゆっくりと歩み寄ってくる。

「だが、動きは素人だ。指示を聞く『ラグ』がある以上、タイマンなら俺の敵じゃねぇ」


『分析完了。バルガス様の指摘は100%正確です。私の音声出力に対するカイト様の脳内処理速度(Ping値)が、平均0.8秒遅延しています。回線弱者ですね』

(ふざけんな! お前がもっと早く警告しろよ!)


「……どうして、俺を狙う。あんたの命を救ったはずだぞ」

「だからだ。過去もねぇ、得体も知れない化け物と一緒に行けるか。道中でお前がどう転ぶか分からねえんだ。なら、俺の背中を預ける前に、ここで消しておくか、置いていくのが筋ってもんだろ」


バルガスが再び剣を振り上げる。

(チャッピー! なんとかしろ!)

『カイト様の負傷レベル:中。SP不足により防御障壁は展開不可。即座の戦闘継続は極めて困難です。ブラフによる牽制を推奨します』


俺は激痛を堪え、血塗れの右手をバルガスへ向けた。

「……近づくな! どうせ殺されるなら、さっきみたいにお前を巻き込んで自爆したっていいんだぞ!」


実際には、イメージを組み上げる集中力なんて残っていない。ただのハッタリだ。

 しかし、バルガスはピタリと足を止め、チッと忌々しそうに舌を打った。


「……まあいい。ここは魔物の縄張りだ。その血の匂いを嗅ぎつけて、すぐに他の奴らが集まってくるだろうさ。俺はわざわざ怪我を増やす気はねぇよ」

 バルガスは剣を鞘に収め、俺から背を向けた。


「この先は、森を抜ける唯一の獣道だ。俺が先に使わせてもらう。......奇跡的に助かったとして復習なんてされたら怖いからな。もしもの時のために『罠』をしかけといてやるよ」

「な……」

「あばよ、バケモン。せいぜい魔物の餌にでもなるんだな」


それだけ言い残し、バルガスは振り返ることなく、足早に森の奥へと消えていった。

 取り残された俺は、地面にへたり込んだまま、熱く痛む傷口を強く押さえた。


(……やられた。完全に、出し抜かれた……)


AIという最強の相棒がいながら、俺は人間の「悪意」と「経験」に完敗したのだ。

現在日曜日の24時30分......ギリギリセーフです!

投稿するのを忘れていました! 次回3月29日! 20時くらいを目指して頑張ります!


コメント評価ブクマ貰うとやる気出て早くなったりするかもしれないです。

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