男と女、それぞれの事情?!(0 )初々しく恥ずかしい恋話なり
あっ、と、一瞬、小さく声が出て、まばたきも、できなかった。
どうしよう あの人だ!
どうしよう あの人だ!
廊下をこっちに向かってゆっくりと歩いて来てる。
顔がポッポしてくるのを感じて、咄嗟に、その場にかがみ込んだ。
挨拶 する?
挨拶 できる?
ブツブツ言ってるうちにも、あの人が、どんどん近付いてくる。
あーっ、もう、だめだ!!!
そこまで来てる!!!
うつむいたまま、パンパンに膨れた黒い革の学生カバンの中に、右手をヒジまで突っ込み、教科書にぶつけながら、不自然にクルクル回し続けた。
数分後だろうか、あの人は、真っ直ぐな風を残して、横を通り過ぎて行った。
私は、かがみ込んだまま、首をできるだけ遠くに回して、あの人の後ろ姿を目で追っていた。
あの人に出会う度に、自分の胸に熱い心地良い痛みを感じた。
追伸
あの頃、少年だったあの人は、どんな男性になってるんだろう。
どんな人と出会って、どんな生き方をしてるんだろう。
あの頃、少女だった私は、あいかわらず、顔がポッポしてきます。