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「うわっ、キリハさんその大量のポーションどうしたの……?」
「実はギルドでストックしていたポーションを、品質の高いものに変えることになりまして。今まで置いていたものを、冒険者に配ったりで消化しているんですよ」
「新しいの用意するにもお金かかるだろうに、売り払わないの?」
「魔王軍を警戒しているのでしょう、本部から全支部への命令ってことで予算が出ているんです。つまり費用は本部持ちです、今までのものは使っても売っても好きにしていいとも」
実際に王都前まで攻め込まれて、かなり危機感を抱いているのだろう。できることから対策を講じようという気概を感じる。
「空き瓶が4本、結構飲んでるね」
「メイズ支部の皆さまには粗方配り終えまして、なお結構な量が残ってしまいました。捨てるのももったいないのでちびちび飲んでいこうかなと。あるいはカウンターの下に置いておきます」
「わあ、大変だ。ところでそんなに飲んでて飽きない?」
「これが無味だったら少しきつかったですが、ほんのり甘いタイプなので問題ありません」
ジュースみたいなものだし、身体に害はないどころか良いものだ。断る理由はない。
「アリシアさんも一本いかがですか。普段は逆に見ないであろう代物ですよ」
「そういえばギルドのポーションはお世話になったことないなあ。それじゃご厚意に甘えて」
冒険者は強くなるにつれて、効果の強いポーションを自前で用意するようになるため、こんなギルドのストックに用はなくなる。だが今後はストックに頼れるという選択肢もある。
「あー。効果はこんなもんか」
アリシアさんの物足りなそうな表情も、冒険者としての感想を物語っていた。




