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「ってことで、なんかもらってきちゃった」
「これまた頑丈そうな剣ですね」
「いや聞いてよ、最初話してたのは剣のことだったんだけど。あれよあれよという間に、別の街に駆り出しててね」
「彼は能力者か何かでしょうか」
ロイドさんに剣をもらうことはできたらしいが、何かあったようでアリシアさんは珍しく微妙な表情をしている。
「正直どういう道を通ったのかは覚えてないけど、王都に劣らないくらい発展した賑やかな街のモールで、おすすめだからって剣を用意してもらうことになったんだけど、待ってる間ウィンドウショッピングしたり、ちょっと高めのお茶したりしてた。ちょっと身の上話を聞かされたりもした。最後は気が付けばメイズに戻ってた」
「なんとも不思議な方ですね。肝心の剣についてはどうですか?」
「剣、文句のつけようがないほどいいんだよね……。これで何か問題があればまだマシだった、何もないのが逆に不気味すぎるんだよね!」
「それはまた……」
アリシアさんが絶叫気味に頭を抱え始める始末。
もしこれが適当な剣だったなら、それを建前として別に目的があるのかもと考えられなくもないが、本人の知る中でも信頼のおける場所で用意したのだろう。
謎は深まるばかりだ。
「いろいろと探ってみたいところですが、相手が相手なのでそれも難しいです」
「この気持ちのやりようはどうすれば……」
「今は彼を見極めるしかないですね。一見悪い人ではありませんが、要注意といったところでしょう」
「あー、早く魔王帰ってくれないかな……」
収穫こそあったものの、もにょもにょする結果に終わった。
果たしてロイドさんの正体、目的やいかに。




