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「少しいいだろうか」
「ロイドさんですね、何かありましたか?」
「いや、ここに来た日のことを謝罪しようと思ってな」
「それには及びませんよ、失礼を承知でやったのは私からです」
カウンターで本部からの書類を確認しているところ、ロイドさんが現れた。
恐らく初日の少し威圧的な態度のことだろうか。
あれはこっちもこっちなので深くは追及すまい。
「実は一番強いと紹介を受けた彼の実力も少し見せてもらったが。なるほどあれならこちらの実力を把握しておきたいというのも頷けた」
「お眼鏡にはかなったようですね。アリシアさん的には、ロイドさんは自分よりかなり高い位置にいると評していましたが」
「あれなら鍛えれば、遠くないうちに俺も追い抜くことだろう。それはそれとして、俺と彼とで連携ができるかを気にしていたな」
「相手の勢力次第では助力も必要かなと」
半分はあの場で納得させるための建前だったが、律儀にすり合わせにも来てたらしい。
まあそれはそれで助かるのだが。
「アリシアさん本人は、実力差がありすぎて足を引っ張るだけだと言っていました」
「とんでもない。あれだけやれるなら俺のリーチ外で十分に戦えるはずだ。どうしても数を減らす必要はある、ぜひ協力してほしい」
「親玉も合わせて相手をするのに、同時に大軍を捌くのは厳しいということですね。いざという時、助力を必要としていることは伝えておきます」
「頼んだ。それと他には頼れそうな冒険者はいるだろうか」
「それは難しいですね。アリシアさんが飛びぬけて強いだけで、他は一般的なゴールドなのでかえって邪魔になります。襲撃された際には避難誘導などに割かれることでしょう」
アリシアさんでようやくなら、やはり他の冒険者を出すことはできない。もしプラチナに上がったとてゴールド抜けきらない状態、ゆっくり頑張ってもらうほかない。




