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「サラさん、プラチナに興味はありませんか?」
「そりゃ、ないと言えばウソになるけど。急にどうしたんだい」
「本部も昨今の事態を重くみていると言うべきか、ランク昇格に少し手を加えたみたいでして。ゴールド以上への昇格試験の基準が緩和されています」
「それは……実力が伴ってなくとも、ある程度は許容するってことじゃ」
プラチナとミスリルの試験の壁はかなり高い。それが緩くなったということで、通りがかったサラさんに声をかけてみた。
いい顔はしていないが、どこもそんなものだろう。
「無理にでも手駒を増やす、自信をつけさせる、何が本部の目的かはわかりかねますがいい機会です。受けてみてはいかがでしょうか」
「ランクが上がるのは願ったりだが、別に自殺願望もない。プラチナっていうと、アリシアさんと同じ扱いになるんだろう……?」
「そこは安心してください。あくまでプラチナですが、メイズではゴールド扱いとします。さすがにゴールド上りを、あの人と同列にするのは無理がありますからね。この改正もいずれ騒動が落ち着いたら、元に戻ると思います。上げるだけ上げておいて相応の力が身に付いたと思ったら、改めてプラチナ対応に切り替えます。ゴールド昇格からある程度経っていますし、どうでしょうか」
「なるほどね……。まあ悪い話じゃないか。ゴールドで燻ったまま終わるつもりもなかったことだし、一旦挑戦してみるか」
ゴールド以下の昇格は危なくて提案できたものではないが、プラチナへの昇格なら経験値もあって冷静な判断を下せるであろうため提案をしてみたが、やはり心配していたのはアリシアさんの存在だったか。
「最悪昇格した後でプラチナが重いようであれば、その際も返還を受け付けます」
「いろいろと助かるよ……」
「微力ながら手伝えるのはこの程度です、頑張ってくださいね」
そうして始まった彼女の試験はしばらく続くのだった。




