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「どうやら魔王軍との戦いが始まったみたいで」
「ついに来たって感じだね」
「これ新聞記事なので数日前には開戦してそうです。勢力は大規模ですね」
「わ、本気だー」
カウンターでアリシアさんと新聞を囲む。
ドミノの見立て通りひと月もかからず進軍してきたようだ。
「確認できている限りで、推定雑兵12万、幹部級20人。魔王本体も後方にいるんでしょうね」
「幹部クラスが二桁いるのは少しまずいかもね。単純計算で5:1で勇者を攻めれるから、拮抗どころか押されてるかも」
「しかもこの数は現時点で確認できている数ですから、下手すればさらにいますよ。実情は現場を見ないことにはわかりませんが、ここからでは敗色濃厚でしょうか」
「他の勇者を最低限で足止めしている間に、一人の勇者に幹部と魔王を集中させて順番に落としてくのもできるだろうし。隠れ住むとか言ってたの冗談のつもりだったんだけど……」
どうやらその冗談が現実になってしまうかもしれない。しかし嘆いたところで、戦況を覆すためここでできることはない。逃げる準備でもしておくべきか。
「アリシアさんは主にドラゴンを相手していましたけど、対人間複数で戦えたりします?」
「……頑張って3人同時くらいが限界かな。あくまでドラゴンとは1:1だから、全てのリソースを回して集中できるけど、複数相手は意識を分散させる必要があるから動きが鈍っちゃうし。もちろん相手との戦力差にもよるけどね?」
「自分より一段落とした相手だと3人ってことですか」
「そうそう。シルバーとかブロンズ相手とかなら無双できるよ」
アリシアさんほどでも3人ならば、駆り出された勇者がさらに強いことを祈るしかない。
果たしてこの戦いの行く末やいかに。




