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自宅にてトロッポさんが寝た後で、こっそりヴィルヘルムさんを呼び出していた。
「おお、何かと思えばキリハか。私を呼び出すとは何かあったか?」
「いえ、特には。ひとつ渡したいものがありまして。ご飯もありますから、どうぞ」
ボスがヴィルヘルムさんとの契約を感知していた以上、頻繁に呼び出すべきではないと認識を改めたが、しかし首につけるやつは先に渡しておきたい。
善は急げとはよく言ったもので。そういう意味じゃないって?
ともかく食べながら、ボスについても伝えておくべきだろう。
「つい先日、ヴィルヘルムさんと契約したことを嗅ぎつける人がいまして。こういうのって普通なんでしょうか」
「いいや。普通は悪魔との契約はそれをした悪魔と人間、それぞれしか知り得ない。その上私は大悪魔だ、それを見抜けるとなれば……」
「その人は大柄な体格でこの周辺でボスと呼ばれているとか。心当たりはありますか?」
「大柄でボス……。ああ、恐らくアレのことか。アレなら全然問題にもならないぞ。バックに私がついている限り安心していい」
「えっと、どういうご関係ですか?」
「くだらん話よ、ひょんなことから前に叩きのめしてやってな。大方それを根に持っているのだろう。私の気配を忘れられずに、恐らく見抜けるのは私と契約した相手のみだ」
つまりはそういうことらしい。細かく掘り下げるつもりはないが、負けたことで苦手意識か悪魔が悪いモノと判断しているのだろう。
「ところでこの半円の道具は何だ?」
「首の後ろにつけてください。繋がってるハンドルでメッセージを打ち込んで送信できます」
「おお、なるほど。便利なものだ。しかし、こちらとあちらで繋がるとは思えんが」
「とりあえず戻った後で、そちらからメッセージを送ってみてください。こちらに届いた場合は返信します。空間を跨いで使えなくとも、こちらにいる間の通信手段としては使えますから」
そうしてご飯を終えてから、戻った後でも無事メッセージのやり取りは出来た。
しかしアリシアさんといいヴィルヘルムさんといい、通信ができないことを懸念していたあたり、これを作った人には感謝しかないな。




