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「その首の後ろに付けてるやつって何?」
「これは通信用の道具です。2対セットで相手の端末とだけ、メッセージのやりとりができるようになっています」
「ふうん。どこに繋がってるの?」
「前にもお伝えしました、個人的に動かせる戦力になってもらった人です。アリシアさんが不測の事態で動けなくとも、最悪こちらを動かすこともできるという話ですね」
きっかけは暇つぶしだったものの、緊急時に連絡を取れると考えれば悪いものではない。
まあアリシアさんがいる限り、そんな事態はそう起きないだろうけど、備えはあった方がいい。
「話は変わるけど、なんかさっきから上からドスンドスン音がしてない?」
「ギルドの上で何か作業をするような話は聞いていません。恐らく鳥か、モンスター。あるいは」
そこまで言ったところで、轟音と共にギルドの建物の天井中央が突然崩落し、蜘蛛のモンスターが降ってきた。
幸い瓦礫と蜘蛛が降ってきた場所には誰もおらず、受付カウンタ―は端の方だったため問題ないが、もし真上からあれらが降ってきたらと思うとゾッとする。
しかし突然の出来事に、誰もが目を白黒させている。
「アリシアさん」
「お任せあれー」
指示を出した次の瞬間、距離を感じさせない動きで一気に蜘蛛の懐に踏み込み、その頭を切り落としてこちらへ戻ってくる。
なんという無駄のない動きだろうか。
「一丁上がりってね」
「助かりました。あれの運び出しと解体も手伝っていただけますか」
「そりゃあね、あれ中に残しておくわけにもいかないしね」
何事ですかと奥からヘレーナさんも姿を現す。
とりあえず屋内が雨ざらしになる前に、屋根の修理を手配しなければ。