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「トロッポさん、これ思いのほか早く手に入りましたよ」
「あー!首につけるやつ!」
「早速使ってみましょうか。ひとつどうぞ」
「もっと待つかと思ってたー」
トロッポさんお望みの品ということで、半円のリングを首につけて、そこから管でつながる片手用ハンドルのキーを押して文字を打ち込む。するとリングから投影されているのか送信前の文字が眼前に表示される。複数あるキーの種類を順番と打ち込む回数によって、別の文字を入力できるらしい。よくできている。
「なんかいいね、これ」
「試しに私から送りますね」
「えっと『同僚に王都で買ってきてもらいました』。へー、面白い。今度はこっちから!」
彼女も続いて巧みにキーを連打して……なんか手馴れすぎじゃないか?
その直後『これで暇せずに済みそう! これからもよろしくね!』とメッセージが表示された。
なるほど、手ごろな通信手段として便利なわけだ。
「あくまで二対間のみでの通信だけで、下手に改造とかしない限りは、他の端末とは繋がらないのが欠点でしょうか」
「そのくらいいいじゃん。私はいつでも話せるの好きだし」
「お気に召したようでなによりです。可能な限り返信はしますね」
早速カチカチとキーを鳴らしている。目の前にいるんだから話せばいいのに、というのは野暮か。
『明日のごはんなに?』
それにならって、こちらもキーを押して返答を組み上げる。
『考え中』
そうして、新しいおもちゃを買ってもらったかのような、キラキラした笑顔との無言のやり取りは続くのだった。




