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「ちょっといいですか?」
「ヘレーナさん、顔がすごいことになってますよ。まずは深呼吸しましょう」
「そんなことよりも……やってくれましたね……」
案の定、ヘレーナさんは本部の依頼から戻ってきて地獄を見ているらしい。
「文句なら聞きませんよ。代わりにギルド長(代理)として頑張ったまでですから」
「それにしたって! リストには他支部からの連絡については対応するなって書きましたよね!?」
「正直よくあの環境でやってたとは思いますよ? ただ良心の呵責といいますか、経験値があるからこそ任されたのなら、適当に切って捨てるのも違うかなと」
「それにいくつか間違いこそありましたが、だいたい合ってたのはなんなんですか……」
「経験に基づく推測ですよ」
アリシアさんのサポートもあり、ヘレーナさんが全て対応してなかった諸々の連絡に手をつけた結果、戻ってきてから逆に対応できなくなってるらしい。
「なんでそういう勝手なことをしちゃうんですか! しかも遠くないレイドに対して、冒険者を派遣して即座に鎮圧させたってどういうことですか! なんか当然のようにまた頼まれてるんですけど!」
「臨機応変に、良かれと思って本来必要な対応をしたまでですが、納得いかないようですね。仕方ない、アリシアさんいらっしゃーい!」
仕方ないので助け船を呼ぶ。
すると唐突にレコーダー片手にアリシアさんが現れれる、一体どこから来たのやら。
「へい!『本当に私に任せていいんですか? きっと、戻ってきてから後悔することになりますよ。手間取ってもいいから、別の人に任せればよかったと』」
「へい!『必要とあらばやりますよ。あくまで私に任せていいのか、この一点を確認しているだけです』」
「へい!『そんな脅しには屈しませんよ。あなたをギルド長(代理)に任命します』」
アリシアさんが順にレコーダーを再生していく。
すると次第にヘレーナさんの顔から血の気が失せていく。
「恨むなら出発前の自分を恨んでくださいね。一応私がどんな基準で対応していたのかを、簡単にまとめたマニュアルを左奥の棚に用意してあります。参考までにどうぞ」
へなへなと奥の部屋へと戻っていくヘレーナさん。
代わりにアリシアさんが対面に座る。
「キリハさんはこうなることがわかってたの?」
「王都を出た後で、後任との対応差で面倒なことになってたと知らされたので、今回も恐らく面倒なことになりそうだなと思いまして……。まあヘレーナさんが恐らくキャパオーバーで、仕事を一部削っていたのも問題なのかもしれませんが」
「上に立つ人も大変そうだね」
「ええ、全くです。私は下の職員で十分ですよ」
とりあえずあの状況だとヘレーナさんまずいだろうし、他の職員にあの人が助けを求めてることは伝えておこう。
ちなみに首につけるやつはちゃんと買ってきてくれていた。感謝せねば。




