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「緊急招集です! バスティ森林にて、ミノタウロスの発生が確認されました! 冒険者各位は出撃の準備をお願いします!」


 ガンガンと何かを鳴らしながら、ミノタウロスの出現をギルド内に知らせる、ヘレーナさんともう一人の職員。前に調査に出た際のやつだろう。

 しかし、身体を張るのは冒険者であり、職員ではない。ないのだが、あくまで冒険者サイドの組織ということで、対応可能な冒険者がいない場合は、冒険者の代わりに敵を鎮圧なり足止めすることになる。あんまり安全だからと煽ってもいられない、微妙な立ち位置である。

 ただ、これは戦える冒険者がいない状況に限るため、ヘレーナさんの元に作戦の確認に集まる冒険者を尻目に、今日もせっせと書類整理である。


「ところで、アリシアさんはあっち行かないんですか?」


「え? あれだけいれば大丈夫でしょ。今回はおにーさんといちゃいちゃしてるかなー」


「まあ、強要はできませんしね」


 一応合同作戦、かなりのレイド模様になるあたり、ミノタウロスは強い部類ではあるのだが、アリシアさん抜きで大丈夫だろうかと不安はある。

 後から知ったのだが、どうやらこのメイズ支部はアリシアさんを頂点に、プラチナもまたアリシアさんだけらしい。

 主戦力が抜けるとなると、かなりの苦戦を強いられるのではなかろうか。


「大丈夫、腐ってもあの人たちゴールドだしね。死にかけで済むでしょ」


「大丈夫の基準って、何でしたっけ」


「四肢と頭と内臓が無事なら大丈夫だね!」


 などと呑気に話していれば、案の定ヘレーナさんと一緒に案内をしていた、エルミラさんと言ったか。が、近づいてきた。


「すみません、アリシアさん。今回も参加していただけないでしょうか」


「えー? これまでもかなーり参加してきてるじゃん。隣のストレイ支部からミスリル呼んできてよ、その方が強いだろうし」


「……メイズの予算が足りていませんで、、、」


「しょっぱい商売してるねー。まあ言ってもしょうがないんだろうけどさ」


 これを見るに、メイズではアリシアさんに頼り切りだったのだろう。大抵は3、4人は強い冒険者を用意して回すことで、常に対応出来るようにしているのだが。ここでは主戦力にして、アリシアさん一強体制なのがハッキリとした。


「キリハさん、あなたからもお願いしてもらえませんか?」


「エルミラさん、基本的に緊急招集はじめ、依頼というのはあくまで任意です。問題ない、納得したものを選ぶための、信頼関係による制度でもあります。なので私個人としても、ギルド職員としても、貰うもの貰わないと協力はできません」


 促すよう話を振られるが、参加に納得していないこの状況は、アリシアさんのケアを怠ったギルドのツケである。こっちに回すのならば、報酬を貰わねば割に合わないというもの。ミスリルに出す金はなくとも、平職員用くらいの金は出してもらわねば困る。


「わかりました。今月の給金を1.5倍にします」


「アリシアさん。……良ければでいいので、今回のミノタウロス戦に協力してもらえませんか?」


「えー」


「デート付きと言ったらどうでしょう」


「話がわかるねぇ! サクッと終わらしてくるー」


 デートと聞くや否や一転、ヘレーナさんの元へと向かっていった。


「今後はこういうことがないよう、メイズ支部の体制見直しもお願いしますね」


「マスターに掛け合ってはみます……」


 普通にダメそうなやつだこれ。今回は初回ということでギルドに協力したが、今の惨状を見てしまった以上、個人的にはアリシアさんの味方をするつもりである。

 今後も酷い状態が続くようであれば、メイズが滅ぶことになろうとも、ここから連れ出すつもりにはなっている。プラチナなら引く手数多だろう。


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