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「朝から何事ですか……」
「あっ、キリハさん! ちょうどよかった!」
ギルドに来てみれば、ドアを破壊しながら吹き飛ばされる冒険者が一人。それに続いてアリシアさんも出てきた。争いは珍しい事でもないが、何かあったのか。
「実は今ボスが来ててさ、挨拶してってよ」
「ボス?」
「この辺一帯で一番強い冒険者。普段はあちこち回ってるみたいで、稀にしか来ないんだよね。私より超強いよ」
「それはすごいですね」
あれの上を行くともなれば、もうなんでもありだろう。
少し身構えつつアリシアさんに続いて中に入ってみれば、ローブで顔を含めた全身を隠し、唯一出ている両腕の前腕には包帯を巻いた、大柄な人物が立っていた。確かに今まで一度も見たことがない。
「はじめまして、私はキリハと申します。メイズのギルドで職員として配属されました。以後お見知りおきを」
「新顔でマスコットか。ふむ、アー。我はどれだけここを空けていた?」
ボスが思案の様子を見せつつ、アリシアさんの方を向く。呼び方ェ。
「えっと、約1年半くらいです。今回は結構長かったですね。あ、マスコットっていうのは、私付きの職員のことだよ」
ボスの問いかけに答えつつ、補足してくれるアリシアさん。助かる。
「なるほど、それはそれは。……ん、まて。貴様少し止まっていろ」
ボスが徐にフードに包まれた頭をこちらに近づける。フードの中は何処までも暗闇が広がっており、その表情を伺うことは出来ない。スンスンと鼻を鳴らすような音がする。
「貴様、悪魔と契約したな。それも大悪魔か。何を企んでいる?」
「必要に駆られて契約したまでです。この力をみだりに振るうつもりは毛頭ありませんよ、恐らくその先に待つのは破滅ですから」
「なるほど、契約してから期間が空いているようだが乱用もしていないらしい。今のとこは信じてやろう。アー、我はしばらく滞在するぞ。諸々を頼む」
「わかりました、いつものですね」
口でこそ信じるとは言っているが、監視か。まあ特に不都合はないし別にいいけども。
のそのそと奥の方のテーブル席へ移動するボス、ファーストコンタクトは問題なさそうだ。
「ところで最初に吹き飛ばされた冒険者はなんだったんでしょう」
「ボスのことしらない外の冒険者でね、喧嘩売っちゃったの」
特に問題は起こっていないようだ。ひとまずドアの修理を手配しなければ。




