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「隣にできたダンジョンに行こうと思います!」
「また唐突ですね。アリシアさんダンジョンは狭くて苦手って、前に言ってませんでしたっけ」
「苦手だけど、別に死にやしないしね。新しいことやってみようかなって」
「それはいいですね」
アリシアさんはドラゴンもなくなり、副作用もなくなったとのことで、ギルドから出るようにするのだと。その一環として、今回ストレイのダンジョンへ行くことにしたのだとか。
「ダンジョンは初めてだけど、深くに進むほどモンスターが強くなるし、罠もえげつないものになるっては聞いてる」
「はい、深いほどに敵は強くなりますし、罠も凶悪になります。なので、慣れなかったりや強くない冒険者は、序盤の階層に留めていますよ。深くまで潜るのは熟練の探索家ですね」
「なので、浅いところでしばらく遊んでようと思います!」
「無理してまで深く潜るものではないですからね。ダンジョン用のガイドが確かこの辺に……」
ダンジョンが初めてと言うので、ここはギルド職員らしく案内をしておくことにする。
「自然発生するダンジョン。規模はまちまちですが、数階層から巨大なもので数百階層に至るものもあります。中にはお馴染みモンスターや罠の巣窟。ですが浅い階層では、ブロンズへの討伐依頼で出ているような弱いモンスターばかりです。それに階層構造も深いほど複雑に、大広間が少なくなる傾向にあります。これは単純に戦いにくくなり、迷いやすくなる原因でもあります」
「はい、質問です。迷って帰ってこなかった人とかいたり……」
「しますよ、いい質問ですね。一桁層ならまず迷うことはありませんが、潜るほどに似たような場所が続いたり、特定の順番で進まないと元の場所に戻されたり、罠から抜けられなくなったり、ボスモンスターを倒さないと戻れなかったり。原因は様々ですが、戻ってこないまま死亡扱いになるパーティもあります。なので、しっかりマッピングをしなければいけないので、その間は守ってもらうために、複数人でパーティを組んで挑むことを推奨します。仲間に罠解除の知識を持つ者、ダンジョンに詳しい者がいれば、戻れないということもあんまりないはずです。たぶん」
「帰れないのは困るなあ」
王都で務めてた頃は、戻ってこないパーティも一定数いた。ダンジョンと同時に生成された財宝に挑むべく、命を懸けて姿を消していく者がいるあたり、これはロマンの問題なのだろうか。
「とりあえず実際に行ってみて、空気感や歩き方を知るのがいいかもしれません。それと、こちらを持って行ってください、ダンジョンへ初めて挑む方に道具をお配りしています」
「見たとこスターターキットみたいな感じかな。でも、なんでダンジョンだけ?」
「ダンジョンは通常の依頼と勝手が違いますからね、ある程度知識や道具がないとまずいですから。最低限のサポートですよ」
「メイズにダンジョンなんてなかったのに、道具を置いてたことも驚きだけど……」
「ストレイにダンジョンが生えてきてから、ここを使う冒険者も増えましたからね。ある程度仕入れてあります」
アリシアさんに、ランプやロープなどの必要そうな道具の入ったバッグを渡す。
浅い階層なら必要なさそうだが、あるに越したことはない。
「実りある体験になるといいですね」
「うん、それじゃあ行ってくるね」
アリシアさんはバッグを受け取り、足取り軽やかに手を振りながら出ていく。
すっかり元気そうで何よりである。




