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「キリハさんおはよー」
「おはようございます、アリシアさん。例のボロ雑巾は、あの後どうしたんですか」
「あれ? 宿屋の前にほっぽっといた。親切な誰かしらが助けてくれるでしょ」
「逆恨みとかないといいんですけどね」
貴族のボンボンはアリシアさんの逆鱗に触れた結果、高そうな装備諸共見るも無惨な姿にされ捨てられていたと。
しかし発言からして、それなりの地位の後ろ盾はあるのだろう。
吹けば飛ぶ一般ギルド員としては、職を失いかねないのは少し心配である。
「それよりもうまく加減できたのを褒めて欲しいな」
「後遺症とかはないんですよね?」
「私もそこまで鬼じゃないって。そのせいで少し苦労したけど」
「今後はここからどう転ぶかですね」
一応アレは平和を守る者どあって、強さを求めていた。
そしてそれを証明したのだから、何かしら跳ね返ってくることはない、と思う。
「あと今後についてだけど、とりあえず副作用は抜けきったし、しばらくは適当に体を動かしてようと思うけど。キリハさんは?」
「私はちょっと仕事しつつ、ほぼ座ってるだけですね。今までちょくちょく動いていたのは、アリシアさん絡みだったからであって、本来はこうなるべくして左遷されて来ましたから」
「じゃあこれからは、色々と付き合ってもらっていいかな。ドラゴンじゃないなら連れ回しても、ある程度は大丈夫だと思うし」
「ほどほどにお願いしますね」
まあ加減は、死にかけたこともあってわかってるはず。素直に期待しておくとしよう。