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「おや、アリシアさん。珍しくお困り事ですか?」
「察しが良くて助かるよ……。この人どうにかして……」
ギルドに来てみれば、先にアリシアさんが受付に。その傍には不満気な冒険者が一人。
いかにも新人という雰囲気だか、装備は明らかにそれに見合わないほど高価っぽい。
なるほど貴族のボンボンだな。
「どうかされましたか? ご意見があれば、私がお聞きしますよ」
「ギルドはこんな奴を庇うのか? 冒険者はこんなギルドでだらけてる奴じゃない。勇猛果敢に戦い、平和を守る者だ。それがなんだこの体たらくは」
「彼は十二分に戦い、強大な相手を打ち倒してきた戦士です。ならば問題ないでしょう」
「そんな風には見えないがね。こんなひ弱そうな奴が、そんな大層な評価を受けているはずない。大方俺を納得させるための嘘だろう」
メイズに人が増えれば閉鎖的ではなくなり、人が他所から入ってくれば揉め事も起こるというもの。
しかし、最近は外に出ることはないものの、ギルドの隅で大人しくしてるアリシアさんは無縁だったのだが、ついに目をつけられてしまったというわけで。
何かあれば外野が囃し立てるのは定番だが、一方で実情を知るメイズの冒険者は、戦々恐々と様子を窺っていた。
「その辺にしておきましょう。血の気の多い方もいるので喧嘩をするなとは言いませんが、争いを推奨しているわけでもありません」
「よっぽどこいつがお気に入りみたいだな。ならお前から父上に頼んでクビにしてもらうとー」
「今なんて?」
アリシアさんが反応した、まずいかも。
「ようやく口を開いたか。このギルド員さえいなきゃ、お前を追い出すことなん」
「わかった、いいよ。相手してあげる。ちょうど副作用も抜けきったし、鈍った体戻さないとだし、外出よっか」
「ふんっ。ようやくその気になったか。負けたら冒険者をやめてもらうぞ!」
立ち上がって外に出ていくアリシアさんと、それに続くボンボン。
基本的には負の表情を滅多に出さない人だけど、今はすっごい無表情だった。
周りの人も諦めたような表情してるし、どうなる事やら。
一泊置いて満面の笑みで戻ってきたアリシアさんが引きずるのは、ボロ雑巾と化したボンボンだった。それを私に見せてから、アリシアさんは再びギルドを後にした。




