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ある辺境のギルド職員について  作者: レスカ
ドラゴンとギルド職員
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「アリシアさん、おはようございます。生きて戻ってこれましたね」


「おはよ、キリハさん。アレなポーションの副作用が尾を引いてて、無事とは言い難いけどね。ところで、あの盾って結局なんだったの?」


「ああ、やっぱり使ってくれてましたね。攻撃はちゃんと防いでくれたでしょう」


「文句なしに防いではくれたけどね? そのあとで謎の人がドラゴン持ってっちゃったし、キリハさん何したの?」


 アリシアさんの疑問ももっともである。

 ので、何があったかを明かすべく、ギルドの奥の部屋に案内する。


「さすがに受付で話せることじゃないので」


「本当になにしたの……」


「話は私が王都に出てた時まで遡ります」


 ==================



 太祖の竜王に対抗するべく、なりふり構ってはいられないと、私はギルドのツテを使って城の書庫に入り込み、世界樹の情報について調べていた。


「いや、これだめだな。入手にあたって王家の血筋の者でないと入れない『聖域』に行く必要があるって、そこに隠してあったから誰も見つけられてないと。仮に入手できたとしても、ここにある情報じゃ、ドラゴンと戦うのに有益な道具も作れそうにないし」


 ため息をついて本を棚に戻したところで、一つの本が目についた。


「大悪魔の記録……」


 導かれるようにその本を開き、読み進めてみればその内容は、ドミノから聞いていた四人の大悪魔のものだった。

 曰く大悪魔は超悪用できるから、全部騙して封印しましょうとなったのだとか。

 曰く悪用されないよう多くの魔法使いを動員して、世界樹の封印をかけたのだとか。

 曰く世界樹の封印があるため、呼び出したところでまともに機能することはないのだとか。

 曰く世界樹の封印を解くことは、人の手では不可能な域なものなのだとか。

 曰く問題が起きた場合に備えて、念のため呼び出す方法は残しておくのだとか。


「なるほど、大悪魔ね。ダメで元々、あたってみるのも悪くないかもしれない」


 私は悪魔の召喚方法をこっそりメモして、城の書庫を後にした。



 ==================



「初めまして。鎖の悪魔さん。気分はどうですか?」


「封印が続いてて最悪ではあったが、久々に出てこれて悪くない気分だ。あれから何年経った?」


「たぶん千年ちょっとってとこですね」


 誰もいないのをいいことに、私は王都のギルドの地下室に忍び込み、こっそりと鎖の悪魔を召喚していた。


「しかし見ての通りだ。呼んでくれたとこ悪いが、封印のせいで期待に応えられそうもない。ほかをあたって……」


「その封印なんですけど、どんな封印かわかりますか? 書物には世界樹の素材を用いた、世界樹の封印としか書いてなくて……」


「ん、封印自体は普通の魔法使いによる魔力封印だ。しかし、世界樹の素材を使用したことで、膨大な魔力による封印になっている。これを破壊するには、封印を上回る膨大な魔力が必要になる。それこそ魔族や魔王のコアでも大量にな」


「なるほど。ドラゴンでもいけますか?」


「まあそれでも問題はないが」


「わかりました。準備ができたらまたお呼びします。しばらく待っていてください」


 封印されていて動けないのなら、その封印を解いてしまえばよいではないか。

 準備をするべく一旦悪魔を戻して、メイズへと帰還した。



 ==================



 時は進んで勇者選定の儀の後、またギルドの地下で悪魔を呼び出していた。


「そういうわけで、ドラゴンのコア持ってきましたけど。これで足りますかね?」


「まてまてまて、その数は何だ!!」


 袋の中から、次から次へと出てくるドラゴンのコア。

 そう、アリシアさんが討伐証明として、毎度のごとく出していたやつである。

 使い道もないので、ギルドから持ってきたのだ。


「足りるなら遠慮なく使っちゃってください」


「ああ、助かる」


 いくらかコアを悪魔の前に置いてあげれば、ドラゴンのコアが眩い光を放ち、直後ぱきんと割れてしまう。

 悪魔が立ち上がり、体をうごかしていた。


「おお、久方ぶりの自由だ……。素晴らしい」


「封印は解けたみたいですね、えっと」


「おっと、失礼した。私の名はヴィルヘルム、鎖の悪魔としてかつてはぶいぶい言わせていたのだが、この通り鎖の悪魔のくせして、無様にも封印されてしまっていた。感謝する、恩人よ」


「私はキリハといいます。あなたを呼んだのは、契約をしたかったからです」


 封印もなくなったことだし、本題に入る。

 コアの入っている袋から、盾になるハンドルを取り出して、カシャカシャ開け閉めする。


「この盾に、どんな攻撃でも防ぐ力をつけることはできますか?」


「そのくらい容易いことよ、恩人の頼みともなれば」


「ああいえ、頼みではなくあくまで対価ありの契約です。なんか申し訳ないですし、コアはまだまだありますから。それともう一つ、これを使って攻撃を受けた後で、その攻撃をした相手を鎖で封印してもらうこともお願いできますか?」


「構わないが、それほどの相手か?」


「人間にとっては敵わない相手が近々現れる予定なので、力を貸してもらえると助かります」


 袋からひときわ大きなドラゴンロードのコアを差し出す。


「契約の対価はこちらで」


「なるほど……? まて、それはこの先しばらく対価なしで契約してもいいほどの、一線を画す膨大な魔力の塊だが、私がもらってよいのか?」


「使い道ありませんし、もらっちゃってください。また必要になったら呼ぶかもしれませんし、先払いってことでもまあ」


「よし、ここに契約は成立だな。対価としてそのコアをもらい受け、まずは盾をどんな攻撃も防げるようにし、攻撃した相手を封印することを誓おう」


「助かります。それとこれを盾を使った人に渡しといてください」


 そうして鎖の悪魔、ヴィルヘルムと契約を済ませた上で、私は王都から戻ったのだった。



 ==================


「ということがありまして」


「えっと、キリハさん封印してた悪魔解放しちゃったのね……」


「まあ背に腹は代えられないってことで、ひとつ」


「確かにあの悪魔がいなかったら、私も死んでたし。どうこう言える立場じゃないか」


 これは必要経費みたいなもので、ある程度は目をつむるべきだと思っている。竜王なんてのがいたのが悪い。


「ああそれと、今回太祖の竜王は倒すのではなく、封印となりました。なので再び魂が分裂することもなく、今後はメイズ近辺にドラゴンが湧くことはないと思います」


「なるほど、それはいい知らせだね」


 メイズが骨を埋めたくなるような、平和な安住の地となった瞬間だった。

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