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「それでいて、相手の攻撃はまともに受けられないんだもんね……」
強化魔法こそかけているが、直撃したら死ぬ尾の一振り、直撃したら死ぬ爪と牙、直撃したら死ぬ羽ばたき。避けるしかない。
まだ重力球のストックと足の速さこそあるものの、いずれ副作用で落ちてくることもわかっているため、長期戦もできない状況であり。
「剣が通らないなら、なら魔法しかないか」
的確に振るわれる、巨大な足と尾。プレートを踏みつけ下を潜り抜けて避けつつ、その顔面に魔法を唱える。出し惜しみはせず、魔力をふんだんに込めて。
「アークフレイム!」
温存は無駄だ、惜しまず重力球を利用してドラゴンを翻弄しつつ、続けざまに唱える。
「アークサンダー!」
「アークフリーズ!」
執拗に顔を狙ってはいるが、炎と雷と氷が爆ぜ、やはり煙が晴れたそこには、大して傷を負っていないドラゴンの顔があった。
『我を相手にここまでした人間は貴様が初めてだ、褒めてやろう』
「そう言いつつ、どうせ消耗なんてしてないんでしょ」
『わかっているではないか。万に一つも貴様に勝ち目なぞないぞ』
しかし手はまだある、その慢心が命取りだと教えてやろう。
迫りくるドラゴンの足を躱し、残っている重力球を上向きに全て開放して、ドラゴンの眼前まで一気に飛び上がり、今度こそ瞼に阻まれることなく、右の眼球に剣を突き立てた。
「アークピアッシング!!」
魔法で貫通力の強化された剣は、ドラゴンの眼球を突き抜け、確実にダメージを負わせることには成功した。
しかし、同時にこの位置は、ドラゴンの反撃を食らう位置でもあるわけで。
『ウオオオオオオオーーー!!』
次の瞬間、咆哮と共に至近距離で浴びたブレスに吹き飛ばされ、私はところどころ焼けこげながら地面を転がされた。
ブレスだったからこそ、アークプロテクトのおかげで致命傷こそ免れたものの、次は耐えられないだろう。
加えて激しく消耗したせいで、副作用が一気に体を重くしており、血が沸騰するように熱く、最初の比ではないほどになっていた。
それでも起きて足を動かさねば、追撃で死ぬことになる。
「フリーズエンハンス!」
武器用の強化を体にねじ込み、無理やり冷却しながらなんとか攻撃を避けるものの、ブレスで腕もやられていたようで、反撃もできない状態であった。
こうなったら、撤退も視野に入れるべきか。
……いや、一体どこに逃げるというのか。
恐らくこれから逃げ切るのは、テレポートでも使えない限り不可能。
生憎私はそんなもの使えないし、こうして攻撃を避けれているのは、巨体を持つ相手に、細かく動き、相手の体を利用し、死角に入ることで可能にしているから。距離をとってしまえば、追うのは容易いだろう。
なんというか、あっけなかった。
対等とまでは言わないものの、もう少し長く戦えると思っていたが、蓋を開けてみればこの始末。
上には上がいるってことだね。
走り、空を蹴り、避け続けていたものの、とうとう体の冷却が追い付かないほどに熱を放ち、気づけば片膝をついてまともに動けなくなっていた。
「ごめんね、キリハさん。もうだめみたい、私は……」
動きを止めた私に迫る巨大な爪、この状態で一撃しのいだところでどうにもならない。
(使うならブレスに対してだったなあ)
でもせっかくだから使ってあげようと、キリハさんからもらった盾を展開して、その時を待つ。




