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「キリハさん、おはよー」
「アリシアさん、おはようございます」
「ようやく戻ってきたと思ったら、なに読んでるの?」
「新聞です。アリシアさんのことが書かれてるので、少し追ってます」
所用でアリシアさんだけ先にメイズに返したものの、こっちに戻ってもその動向を追っていた。
勇者選定の儀ではアリシアさんが正体を隠して、優勝者を相手にボコボコにしてしまった。それは記憶に新しく、メイズに戻ってからも王都はしばらく、この話題で持ちきりであった。
「別にそんな、騒ぎ立てるほどのものじゃないと思うんだけど」
「そうでもないですよ。相手の優勝してた人も調べてみたところ、どうやら闘技場で生計を立てていて、ミスリル並みの強さがあるとかないとか。そんな有望株が正体不明の相手に惨敗したんですから、まあ大騒ぎですよ」
「えっと、ミスリルってあんな程度……?」
「言っておきますけど、そもそもドラゴンは1:1で勝てる相手じゃないですよ。精鋭が複数人で役割分担しつつ、作戦を立てて倒す相手なんです。それを考えればアリシアさんは、少なくともミスリル複数人分くらいの力はあるわけで。この結果は必然みたいなとこありますね」
まあアリシアさんからすれば、物足りないだろう。ここにいては見えてこなかった、アリシアさんと普通の戦士の差も少しは見えてきたし、興味本位で行ったものの学びはあったか。
「ふうん。ところでドラゴンある?」
「数日空けていましたからね、グラントドラゴンが来ています。今回もよろしくお願いしますね」
「おっけー。行ってくるねー」
「お気をつけてー」
まあだからと言って、露骨に態度を変えるのも違うだろう。しばらくはそのままってことで。




