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ある辺境のギルド職員について  作者: レスカ
ドラゴンとギルド職員
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43

「キリハさん、今どこまで進んでる?」


「ちょうど準決勝をしているところですね。ところで、その手に持っている物は……」


「いいでしょ、露天商で見つけたんだ」


「まさかとは思いますが……」


「キリハさんが悪い! 私は普段から、あんなのなんて比べ物にならないほど頑張ってるのに、キリハさんあっちの方がキラキラした目で見てた!」


 時間は午後を回り、会場に戻ってきたアリシアさん。ぷんすこ怒りながらも、その手には怪しげな仮面があった。

 言わずとも乱入するつもりなのは明白だろう。

 顔を隠していればいいというものでもないが、ないよりはマシか……。


「せっかくだから、なんとなくでしか私のことを知らないキリハさんに、どのくらい優良物件なのか伝えるチャンスだしね」


「せっかくのお出かけだというのに、通常装備で来た理由はこれですか……」


「なんとなくだけど、戦うことにはなる気がしてね。大丈夫、ちゃんと仮面と一緒にローブも買ってきたから!」


 決勝戦が終わり、大歓声の中実況役が優勝した戦士の男を湛える。

 その会場の片隅でいそいそとローブを被り、仮面をつけたアリシアさんが、観客席の柵を蹴ってバトル場に降り立つ。

 もちろん事前に運営に伝えてないため、決勝に負けた者が担架で運ばれる中、実況は困惑しつつも様子を見守っている。


「そこの優勝した新しい勇者さん? ちょっと私と戦ってくれない?」


「なんだ貴様は……」


 大仰に相手を指さし、大声で啖呵を切るアリシアさん。

 しかし、こういった場において、乱入などのイレギュラーは歓迎されているのか、会場の熱が冷めることもない。


「あ、わかった! 戦い抜いて疲れてるところだから不満なんでしょ? いやだなあ、もし私が魔族だったら、そんなこと気にせず襲い掛かっちゃうよ!」


「いや、そうでなくてだな……」


「でも私は魔族じゃないし優しいから! 回復薬をあげちゃう! 王都で買ってきたやつ未開封だから安心して飲んでどうぞ!」


「話を聞く気はないのか……」


 なるほど用意周到だ、仮面とローブに合わせてそんなものまで買ってきていたとは。

 相手はというと、投げられたポーションが未開封なのを確認してから、一気に飲み干して剣を構える。

 不満を漏らしつつも戦う気はあるらしい。


「さて、準備は終わったね。じゃあどっからでもかかっておいで!」


「後悔しても知らねえぞ」


 地を駆けた勇者が、一呼吸の間にアリシアさんに切りかかるが、アリシアさんもそれを剣で受け止め……。って、あれ普段使ってる剣じゃなくて、普通の王都で売ってる剣だ……。

 普段の物が対ドラゴンの剣ではあるが、人相手に使えないこともないだろうし、だとしたら理由は正体を隠すためだろうか。

 まあ普段の持ちだしたら、伸縮する剣の特徴から一瞬でバレることになるけど、そこまでするなら出なきゃいいじゃんとも思う。


「挑んでくるだけはあるらしいな、やるじゃねえか」


「うーん、勇者っていってもまあこんなもんか。フレイムエンハンス」


 アリシアさんが剣にバフをかけて、詰められた距離を戻すように、鍔迫り合いから勇者を一気に吹き飛ばす。

 結果としては最初の間合いより離れてしまっていたが。

 勇者は壁にぶつかることなく踏みとどまったが、既に肩で息をしており、だいぶ消耗している様子。


「くそっ、マジックミサイル!!」


「そうこなくっちゃね」


 勇者は接近戦じゃ分が悪いと判断して3つの誘導弾を放つが、時に細かく、時に大回りに動くアリシアさんを捉えることはことは叶わず、今度はアリシアさんから距離を縮め、赤く輝く剣を振るう。

 今度は強い一撃ではない、手数を多めに相手を削るように。

 そして狙い通り、全てを受け止めることはならず、徐々に相手の傷を増やしていく。


「この俺が押されるとは……。貴様何者だ!」


「さて、何者だろうね。名乗るほどの者ではない、とでも言っておこうかな?」


「舐めやがって!! スパイラルブリザード!!」


「いいね、スプレッドフレイム!」


 それでも諦めない勇者は自らの無事を省みず、強力な範囲氷魔法に巻き込んだ。結果としてはアリシアさんの魔法により相殺、それ以上に火傷を負わされ、息も絶え絶えな悲惨な状態になっていた。


「ここまでかな。別に勇者さん殺しに来たわけじゃないしね」


「待て、まだ勝負は……」


「ついてるよ。だって私、別に本気だしてないし。それに目的も達成したから、もう戦う理由もないしね」


 剣を地面に突き刺したアリシアさんは、言うだけ言って柵や塀を飛び移り、会場外へ飛び去ってしまった。

 さて、見るものは全て見たし、私も宿に戻るとしよう。優勝者がこの惨状で、どう締めるのかは少し気になるが、そこはどうにかするのだろう。


「どう? 見直した?」


「はい、それはもう。実際に見ると違いますね」


 宿に戻れば当たり前のような顔で、ローブと仮面を脱いでベッドに転がるアリシアさんの姿が。まあなんとなく、先回りされてる気はした。

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