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「うーん、これは」
「うぐ……助けてくれ……」
朝からギルドへ向かっているところ、道端に瀕死の魔族が倒れていた。
メイズにいること自体珍しいが、恐らく魔王軍の手の物だろう。人間を頼るとはそれだけ限界なのか。
「まあ私としてもちょっとかわいそうですし、助けたい気も少しはあるんですけど、魔族に手を貸してよいものかと思案していまして。少し待っていただけますか」
「いや、こっちは現界なんだ……! 早くしてくれ!」
「そんなに強い言葉を使われると、今にでも頭から食われそうで気が引けてきますね。すみませんがこの出会いはなかったことに」
「まて、俺が悪かった! 申し訳ございませんでした!」
何度でも言うが、こちとら吹けば飛ぶ一般ギルド職員である。命の危機には少しばかり慎重にならざるを得ないのだ。
「そうだな……ただ助けてくれってのが厳しいんだな。なら助けてくれた後で、俺の所有する財宝を一部分けてやろう! だから早くお願いします!」
「それって人間にも価値があるものですか? 魔族の間だけで高価とかだったら、騙された気分になるんですけど」
「ある、あるから! 金や宝石なんかがふんだんに使われてるやつだから! 早く……」
「なるほど。その後で私を消してなかったことにしないですか?」
「しないから!」
ここまで必死なのだ。まあ少しくらい恩を売っておいたら、後々になって何かに使えるかもしれない。手札は多いに越したことはない。
ポケットから緊急用に持ち歩いてるポーションを取り出して、頭からバシャバシャとかけてやる。すると魔族はふらつきながらもゆっくりと起き上がる。
「ありがとう……。ふふふ、馬鹿な奴めこれでお前を消せば全てチャラだ。まだ本調子ではないが」
「アリシアさーん!! 助けてー!!」
「ほう? 助けを呼ぶか……。だが俺は魔族の中でもかなり強い。そう易々とは」
まずいと分かった瞬間に、恥も外聞も捨ててあらん限りの声を振り絞り叫ぶ。すると次の瞬間対峙していた魔族が血を噴きながら、バラバラの肉片と化して地面に散らばっていた。
そしてアリシアさんが服の裾を掴みながら、ぎゅっと詰め寄ってくる。
「キリハさん大丈夫!?」
「ありがとうございます、少しでも遅れていたら大丈夫じゃなかったことでしょう」
言いかけていたこと、あの肉片が強かったなら。瀕死じゃなかったなら、対峙しているのが冒険者だったらこうはいかなかっただろう。あれはこちらが一般人と侮っていて、本調子でもなかった、このおかげでアリシアさんが間に合ったと考えるべきだ。もう少し疑ってかかるべきなのだろう。




