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「勇者選定の儀? っていうのが近頃王都で行われるらしいね。キリハさん知ってる?」
「勇者選定……。ああ、もうそんな時期でしたか。早いものですね」
王都の本部に勤めていたころは毎年恒例で、ギルド職員も手伝っていたものだ。
「アリシアさんは勇者について知っていますか?」
「えっと、いろいろ特権が得られるってことは」
「そうです。勇者は選定により魔王を倒すべく、その実力を認められた者の称号です。魔王へと向かわせるのですから、多少優遇しましょうという話ですね」
「でも選定ってことは一人だけじゃないんでしょ? 複数いるのってどうなんだろ」
「一人では足りないほどに、魔王と魔王軍は強大だということです。先ほどの特権も全く釣り合っていませんが、本人がなりたくてなっているのでまた別の話でしょうね」
勇者選定とは謳っているものの、中身は強者トーナメントである。その中で勝ち進んだ者、力を認められた者が勇者となれる。
「そうして死地に赴くわけです。ちなみに初期の選定で勇者になった方で、現在生き残っているのはごく一部の精鋭のみです。数が必要なわけですね」
「うーん……。まあ勇者を選ぶのは良いけどそれはそれとして、実際魔王軍とか魔王ってどれくらい問題になってるの?」
「あんまりなってませんよ」
「ええ……」
「まったく害がないってこともありませんけど、あそこまでする必要はないってくらい問題になっていません」
「戦死した勇者が浮かばれない……」
そもそも魔王軍が全方位にやばいことしてたら、ただでさえ竜で手一杯なメイズはいの一番に潰れていただろう。まあ魔王軍の被害も馬鹿にならないだろうけど。
「そもそもメイズはドラゴンが湧くので、魔王軍も寄り付きませんしね。ここにいる限りは縁のない話です」
「平和だね」
「ドラゴンは平和に含まれませんよ」
ドラゴンと魔王、どっちがいいんでしょうね。




