33
「キリハさん、ドラゴンある?」
「おはようございます。今回はラード森林に毒竜が湧いてます、こちらをどうぞ」
「なるほど、ふむふむ。了解、晩御飯までには戻ってくるね~」
「私が用意するのは確定ですか……」
まあ普段頑張ってもらっているのだ。何か用意しておくとしよう。
ご飯を何にしようか考えていたところ、見慣れない人物がこちらへと向かってきた。冒険者かな?
「ここが冒険者ギルドメイズ支部、そしてあなたがキリハさんで合ってるかな?」
「はい。私がキリハですが、どちら様でしょうか」
「おっと失礼。俺は情報屋のドミノという者だ。ここにいる竜殺しの戦乙女の手綱を握るものが現れたと聞いてね、実際に情報を聞きに来たわけだ」
「と言いますと?」
「メイズ周辺で竜が発生して、それを竜殺しが狩り尽くしている。その上で竜殺しのために不自然にギルド職員が短期間に何度も入れ替えをされていること、メイズから戻ってきた職員が他のギルドでほとんど見当たらないことも把握していたが、それがあなたを最後にぴたっと止んでしまった。これについての真相を求めてきたのさ。メイズは危なくて基本的に直接足を運ぶことはないんだが、今回は来る必要があると思ってね。メイズのギルドは何をしていた?」
つまりアリシアさんから逃げずに居座っていたことで、入れ替えが止まってしまったことが疑問だったらしい。なにやら的外れな噂も流れてるとか。これも全てメイズが危なくてブラックボックス状態、アリシアさん頼りのせいである。
「ちなみにどんな原因で入れ替えが行われているか、これは把握していますか?」
「いいや、職員を守るためってことで秘密にされていてね。原因までは全く知らない」
「なるほど……。不都合があるわけでもないですし、お答えしましょう。その竜殺しの戦乙女さん、実は男なんです」
「なるほど、戦乙女が……今なんて?」
「戦乙女さんが実は男の子で、男性の職員を酔わせて襲おうとしてたんです。その度入れ替えがされてたんですよね」
「……」
ドミノさんも理解不能というように、これには絶句している。まあこれだけ言われてもわからないだろう。
「男性職員を置いとかないと、その戦乙女さんがどこかに行ってしまうかもしれないとか、ギルド側も考えてたんでしょうね。心に傷を負った職員をそのままにしておくわけにもいかず、入れ替えを繰り返していたみたいです」
「……」
「まあ双方の名誉のために、あんまり広めないでもらえると助かりますが」
「ま、まて。メイズから出てきた職員が見当たらないのは?」
「そのままギルド職員辞めちゃったんでしょうね……。まあ全員ではないみたいですけど、被害に遭った大半が辞めてました。生贄とか処分されてるとかではないのでご安心を」
「……」
「つまり貞操こそ奪われていませんが、メイズは性犯罪未遂の温床になっていたというのが真相です。しかし戦乙女さんがメイズの命綱でもあったため、下手に動けなかったんですよ」
「……ええと」
「信じ難いのも無理はないので、この際信じるかはお任せします。それともうひとつ、私が来てから入れ替えが止まったのは、私が戦乙女さんと良好な関係を築いているからです。襲われることもなく平和にやってますよ」
これを聞いて少し整理する時間が欲しいと、ドミノはすごすごと引き下がっていった。同時に何か欲しい情報はあるかとも聞かれたので、太祖の竜王について調べてほしいと頼んでおいた。
その日の夕飯はステーキにした。




